「赤ひげ」

恥ずかしい限りですが、黒澤明監督の「赤ひげ」を初めて観たのは3年前の2010年のことでした。

 

それまで観たことがなく、もちろん知識だけはありましたから

山本周五郎の「赤ひげ診療譚」を原作にしているとか

小石川養生所を舞台にしているのだとか

ブラックジャックと同じように(あるいはスーパードクターKと同じように?)

赤ひげに憧れて医者を志すようになった人が多かったとか

そういう情報だけが私の頭の中で一人歩きしていました。

 

2010年のある日、本屋でDVD Bookを見つけて購入したのが、初めて触れるきっかけでした。

観ているうちに、今まで経験した診療のこと、さまざまな出会いの数々が頭に浮かび

感動しながら「医師の姿」を再確認していました。

これを知らずして医師を続けていたことが、申し訳ないような思いがしました。

 

赤ひげは見習いの青年医師、保本に言います。

「この子は体も病んでいるが、心はもっとやられている。

 保本、この子はお前の最初の患者だ。ちゃんと治してみろ」

最下層の生活で病いを持った人々と、それに対峙する医師。

支えあい励ましあいながら、立ち上がってともに歩み続ける人々の姿。

 

ラストシーンが本当にさわやかです。

内祝言の席で幕府への出仕を断り「小石川養生所に残る」意思を表明した保本と

養生所へと続く坂を歩くシーンです。

 

赤ひげ 「お前はわしを怒鳴らせたいのか」

保本  「怒鳴ってもかまいません。力づくでも私は養生所に残ります。」

赤ひげ 「誰が許した。」

保本  「先生です。先生は私に医者はどうあるべきかを教えてくださいました。

     だから私はその道を行きます。」

赤ひげ 「ふん。わしをそんなにかいかぶるなんて。

     お前は少しどうかしておる。
 
     お前はもう忘れたのか。北町奉行のこと。松平壱岐のこと。それから和泉屋のことを。

     わしはああいう下劣なことをする奴だぞ。」

保本  「私は先生のああいうところが好きです。」

赤ひげ 「お前は馬鹿だ。」

保本  「先生のおかげです。」

赤ひげ 「若気でそういうことを言っているが、後悔するぞ。」

保本  「お許しが出たんですね。」

赤ひげ 「もう一度言う。お前は後悔するぞ。」

保本  「試してみましょう。 ありがとうございました。」

赤ひげ 「ふんっ。」

 

もちろん簡単な道ではないけれども、そこにはやりがいのある道がある。

赤ひげについていく保本の歩く後姿は、とても喜びに溢れているものでした。

 

 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA