「迷ったり悩んだりするのは、悪いことではない。むしろ、パターンに落とし込んで思考を停止させる方がよくない。」ということを聞きます。
思春期の頃ずっとニヒリズムに浸っていた自分の経験からすると、それは自信があり、ある程度の結果を残してきた人が発する言葉であって、明日のことを考えるのも欝々な人間には時として残酷な言葉となります。
どんよりとした思考の中にいる人間は、これ以上迷いたくないですし、悩みたくないです。
そんなエネルギーがあったら、もっと別の生き方をしているはずだと、思っています。
それは、ひたすらに身と心を潜ませる、巣籠りの時期です。
私は、巣籠りの時期をネガティブだととらえません。
全てが停止してしまった時期(少なくともそう思える時期)も、人には大事だと思っています。
巣籠りの時期というのは、「今、ここ」しかありません。
「今、ここ」というのは、将来の不安を今、ここに持ち込まないことです。
「今、ここ」に座っている人がいる。会話しなくとも、そこにいる。それだけで全てが満ち足りている。
「それでいいじゃない?」
ミヒャエル・エンデの「モモ」は浮浪児でした。将来のことや今の生活のことを心配すれば、彼女は悲劇の中にいるタダの小さな貧しい少女です。
けれども、時間どろぼうに打ち勝つことができたのは、「今、ここ」を生きていたモモただ一人だけでした。