当然のことですが、私たち医療者が向き合う患者さんは一人ひとりに差があり、病気に対する反応もさまざまです。
同じウイルスに感染したとしても、症状が出る人、出ない人がいます。発症したとしても、その症状の程度も違います。
「今度はチューアタイ(強く当たる)してるよ。先生」
そう言ってくる高齢の患者さんの表現は、的を射ていると言えます。
同じ人でも、時期が違って体の状態が変われば、症状も違ってきます。
このあたりは臨床を活動の場としている私たちを大いに悩ますところです。
例えば、インフルエンザを診断するウイルス抗原迅速検査があります。
気をつけなければならないのは、この検査が100%の感度ではないということです。
つまり、本当はインフルエンザなのに「陰性」の結果が出ることがあります。(つまり検査上はインフルエンザではないということ)偽(にせ)の陰性、偽陰性といいます。
例え話をしましょう。
家族4人が仲良く一つ屋根の下で暮らしていて、1歳と3歳の子ども2人がインフルエンザA型にかかったとします。2日後にお母さんが発熱で受診。
職場に報告しなければならないから、どうしてもウイルス抗原検査が必要なのだと申し出がありました。
これで陰性が出たとして、インフルエンザではありませんとは断言できるわけがありません。
仮にその時点の結果が真の陰性だったとしても、インフルエンザにかかっている家族に濃厚接触していた、あるいは接触し続けなければならないわけですから、リスクの高い人ということになります。翌日は真の陽性になっているかも知れません。
ウイルスに対する、人の反応はさまざまです。検査の結果も100%の確率ではありません。
私たち人間は不確かな生き物なのだということを、改めて認識させられてしまう例です。
特に流行期では、極端にパターン化して考えるのは間違いのもとになります。