動機づけ面接法(Motivational Interviewing:MI)という方法があります。
例えば、禁煙、断酒、ダイエットなど
健康に関わる「問題行動」の変化を促すもの
言い換えれば、「変わること」を支援するものです。
動機づけ面接法は
人は「変わりたい、でも変わりたくない」という
二つの相反する気持ちを抱くものだという理解からスタートしていきます。
なぜなら、医療者は「正しくない状態」を見ると、つい「正しくしたい」性質を持っているものだからです。
それは医療に従事する職業的な責任感や誠実さを根本にしているということにあります。
文献を読み、リスクを理解し、その果てにある悲劇を知っている医療者は
患者さんの無茶ぶりを見て、このままだと悪化することを予測して
いても立ってもいられなくなるのです。
しかし、患者さんはそうではありません。
抵抗しているように見えて、前に進まず、いつまでたっても改善しないのは
多くが、どちらの方向も選べない板ばさみの気持ちにあるからだといいます。
このままだと悪くなることも知っているのです。
でも、変わらないのは、一方で「変わりたくない」理由もちゃんと準備しているからです。
患者さんの内側にある、その矛盾を「正そう」とするのではなく
逆に、矛盾を拡大し深化させる。
相反した「変わりたいけど、変わりたくない」という矛盾が大きくなればなるほど
現状のままでいられなくなる。
逆に、あくまでも「正そう」とすると
その反論が患者さんの口から繰り返し語られ
その言葉がピン押しとなって、「自分の言葉で語られるそのことを、信じ込む」ことになります。
それがどんなに矛盾に満ちたものであろうともです。
「動機づけ面接法」の出発点は
「なぜ人は変わることができるのだろう?」
医療者の思いやりや愛情にあふれたまなざしから始まるのだと思います。