「ビア・ゴーグル現象」の検証

 

アルコールにまつわる「失敗エピソード」がいくつもあるように、アルコールが私たちの心と体に及ぼす影響は多岐にわたります。

その一つが、いわゆる「ビア・ゴーグル現象」―酔った状態だと、普段なら目もくれない人を魅力的に感じてしまうこと―です。

しかし、長年信じられてきたこの「常識」に一石を投じる研究があります。

「Journal of Psychopharmacology」に掲載された研究によると、アルコールを摂取した人々は確かに大胆な性的行動を取りやすくなるものの、それが直接的に「ビア・ゴーグル効果」につながっているわけではないことが示されました。

研究者たちは、参加者にアルコールを摂取させた後、顔の写真を見せ、その魅力を評価させました。

すると、酔っているにも関わらず、参加者たちは酔っていないときと同じように顔の魅力を評価していることがわかったのです。

一方で、顔の対称性を認識する能力は、アルコールを摂取することで低下していました。

これは、アルコールが特定の認知機能には影響を与えるものの、必ずしも「ビア・ゴーグル現象」を引き起こすわけではないことを示唆しています。

アルコールが性的行動に及ぼす影響については、長い間、様々な説が提唱されてきました。

アルコールによる抑制の解放、性的動機の増加、快楽の期待の高まりなど、複数の要因が組み合わさっていると考えられています。

この研究は、アルコールが私たちの性的魅力の認識に直接影響を与えるわけではなく、もっと複雑な心理的、社会的メカニズムが作用していることを示しています。

この研究の結果は、私たちがアルコールと魅力の認識について持っていた既存の考え方を再考させます。

つまり、「酔うと誰でも魅力的に見えてしまう」は、違うかも知れないということですね。

最後に、アルコールによる影響は個人差が大きく、その影響を一概に語ることはできません。

当然のことですが、アルコールを楽しむ際にはその影響を理解し、責任を持って行動することが大切ですね。

 

元論文:

Harvey AJ, White C, Madelin K, Morrison E. Impaired face symmetry detection under alcohol, but no ‘beer goggles’ effect. J Psychopharmacol. Published online December 8, 2023. doi:10.1177/02698811231215592