うちのクリニックのスタッフは猫派が圧倒的に多いです。
ですから、猫の習性を訊ねようと思ったら、実体験に基づいた、適切で的確な答えがすぐに返ってきます。
例えば、今回のテーマ「猫が名前を覚えられるかどうか」
猫好きの人たちには、当然わかっていて簡単すぎるテーマなのでしょうが、そこにちゃんと光を当てていくのが研究というものですね。
この研究では、猫がほかの猫や人間の家族の名前と顔をどれだけ日常生活で関連づけているのかを調査しています。
元論文はこちら→
Takagi, S., Saito, A., Arahori, M. et al. Cats learn the names of their friend cats in their daily lives. Sci Rep 12, 6155 (2022). https://doi.org/10.1038/s41598-022-10261-5
最初の実験では、猫が知っているほかの猫の名前と顔を一致させられるかどうかを調査しました。
家庭で飼われている猫26匹に、ラップトップの画面で、知っている猫の顔を見せました。
その前に、その猫の名前または別の猫の名前を、猫の飼い主によって呼んでもらいます。
半分は名前と顔が一致(一致条件)、半分は名前と顔が一致しない(不一致条件)です。
結果として、名前と顔が一致しない時、猫は画面を平均で3秒以上も見つめていました。
これは「期待違反効果」と呼ばれ、猫が名前と顔を関連付けている証拠とされています。
「あれ?顔が違うんだけど?」とでも思っていたのかも知れません。
しかし、カフェで飼われている猫にはこの効果は見られませんでした。
続いて、猫が人間の家族の名前と顔をどれだけ関連付けられるかも調査されました。
ここでは、家族が多いほど、または猫が長くその家族と生活しているほど、この傾向が強くなることがわかりました。
ただし、猫の年齢が影響している可能性も考慮されています。
この研究から明らかになったのは、猫が特定の名前と顔を確実に関連付ける能力があるという事実です。
猫も日常生活で他者との関係性を認識し、それを維持する「知恵」を持っていると言えそうです。
そして何より、この研究が飼い主と猫との関係に与える影響は大きいです。
猫が名前を覚える能力を持っているとすれば、それは単なるペット以上の存在として、更なる信頼関係が築かれるものとなりそうですね。