昼寝の科学:あえて分けて眠る

 

「今日は徹夜だぁ!徹夜しないと間に合わない!」

学生時代はもちろん、研修医時代もカンファレンスなどの前には「徹夜」というワードを何度も使っていたものです。

もともとの体質が朝型というのが分かっているので「朝早く起きてやろう」という悪魔のささやきに耳を貸してしまうと、だいたいが悲惨な結果を招いてしまっていました。

今回紹介する研究は「夜のパフォーマンスをあげるにはどんな昼寝の仕方が良いか?」を明らかにしようとするものです。

 

元論文はこちら→

Oriyama, S. Effects of 90- and 30-min naps or a 120-min nap on alertness and performance: reanalysis of an existing pilot study. Sci Rep 13, 9862 (2023).

https://www.nature.com/articles/s41598-023-37061-9

 

41名の女性が参加したこの研究は、16時間の模擬夜勤中に取る異なるタイプと長さの仮眠が、警戒性とパフォーマンスに与える影響を測定しました。

参加者は「No-nap」、「One-nap」、「Two-nap」の3つのグループに分けられ、ウチダ・クレペリンテスト、疲労感、眠気、体温、心拍数の変動性といった指標で評価されました。

興味深いことに、90分の仮眠を取った後の警戒性は、入眠までの時間が短いほど低下したというデータが出ています。

一方で、120分と30分の仮眠を取った場合、総睡眠時間が長いほど、目覚めた際の疲労感と眠気が増していました。

さて、夜中の4時から9時の間では、「No-nap」と「One-nap」グループの疲労感が、「Two-nap」グループよりも高かったです。

しかし、これが朝のパフォーマンスに良い影響を与えるわけではなく、どちらの仮眠グループも朝のパフォーマンスは改善されませんでした。

分割仮眠が長い夜勤中の疲労と眠気を改善する可能性があるという結果は、仮眠の科学に新たな光を投げかけています。

仮眠の「質」がどれだけ重要であるかが、この研究からも伺えます。

仮眠の科学は、一見単純でも多角的な要因が絡み合っています。

仮眠のタイミング、その長さ、そして質。

これらが複雑に影響を与え合い、私たちが目指す最適なパフォーマンスと警戒性につながっています。