O型の人は蚊に刺されやすい?

 

こんな会話のやりとりを、聞いたことはありませんか?

「自分はO型だからよく蚊に刺されるんだよね」

腕のあちこちをパチパチ叩きながら、ある人が言いました。

「おまけに酒飲みだから、蚊にとってご馳走だはずよ」

 

蚊の好物がO型の血液というのは、本当でしょうか?

蚊はマラリアなどの伝染病の媒介となりますから、何に引き寄せられるのかというお話は、真面目な研究対象になります。

こんな文献があります。

 

Wood CS, Harrison GA, Doré C, Weiner JS. Selective feeding of Anopheles gambiae according to ABO blood group status. Nature. 1972 Sep 15;239(5368):165. doi: 10.1038/239165a0. PMID: 4561964.

 

Anopheles gambiaeという種類の蚊が、人間のABO血液型に応じて食事(人間の血)を選ぶことがあるのかという研究です。

同じ環境条件下で、ABO血液型の異なる人間が蚊に刺される頻度を調査したものです。

実験は、A. gambiaeが通常どおりに人を刺す条件、つまり自然界の状況を模倣して行われました。

42人のO型、41人のA型、14人のB型、5人のAB型の被験者が参加しました。

結果、O型の人が平均して5.045回、A型が3.276回、B型が4.250回、そしてAB型が3.280回蚊に刺されました。

数字からも明らかなように、O型の人は他の血液型よりも蚊に刺されやすい傾向がありました。

このデータは統計的にも有意で、蚊がO型の血を好むとされる根拠にされているようです。

研究者たちは、蚊がO型の血を好む理由についても分析を試みていますが、明確な答えは出ていません。

ただ、血液成分や体臭、皮膚の成分などが影響している可能性が指摘されています。

なにしろ1972年の古い文献です。

その後に発表された類似の研究などの結果と併せて考えると、やや矛盾も指摘されており、一概に結論づけるのも早計のようです。

しかも、A型やB型、AB型の人もそれなりに蚊に刺されていますから、O型が多少高い確率で狙われているというだけで、実際に血液型をターゲットにしていたのかというお話ですね。

血液型以外にも蚊が人を選ぶ要因が、いくつかありますから。

2022年にはヒトの皮膚由来のカルボン酸レベルに関連があるという文献が出ていますから、それは別の日にご紹介しましょう。