ミステリー小説「方舟」

 

 

ふとミステリーが読みたくなって、「2023年版このミステリーがすごい!」を参考に選んでみました。

国内編1位の「爆弾」はゆっくり味わいながら読むことにしているので、今回は積んでおきます。

2位「名探偵のいけにえ」と3位「捜査線上の夕映え」は、独立しているとはいえ、どちらもシリーズものなので、前作を読んでから…と思ったので後回し。(贅沢です。笑)

なので、4位「方舟」を読んでみました。

このミステリーは、いわゆるクローズド・サークルものです。それは「何らかの事情で外界との往来が断たれた状況、あるいはそうした状況下でおこる事件を扱った作品を指す」ものです。(Wikipediaから)

そのままWikipediaの分類を引用すると、「災害などによるクローズド・サークル」つまり、犯人にとっても予想外に形成されてしまったクローズド・サークルで起こった事件でした。

そんな深刻な状況下で「自分の命も危険なのに、なぜその犯行におよばなくてはいけなかったのか?」「そのままなら当然死ぬはずの人物をなぜあえて殺したのか」を問う作品というわけです。

その解を導き出すのに、この「方舟」は見事に成功していると思いました。

アマゾンではこんな作品紹介が掲載されています。

 

「大学時代の友達と従兄と一緒に山奥の地下建築を訪れた柊一は、偶然出会った三人家族とともに地下建築の中で夜を越すことになった。

翌日の明け方、地震が発生し、扉が岩でふさがれた。さらに地盤に異変が起き、水が流入しはじめた。いずれ地下建築は水没する。

そんな矢先に殺人が起こった。

だれか一人を犠牲にすれば脱出できる。生贄には、その犯人がなるべきだ。ーー犯人以外の全員が、そう思った。

タイムリミットまでおよそ1週間。それまでに、僕らは殺人犯を見つけなければならない。」

 

比較的展開が早いですが、探偵役の翔太郎が物語の随所で「まとめ」をしてくれるのでロジックで置いてけぼりを食らうこともありません。ストーリーテリングについては親切だと思います。

ネタバレになるのであまり言えませんが、この作者の主題は「エピローグ」の章に凝縮されていました。

「エピローグ」を読了したあとに、読者は「犯人さがし」で進行していったと思っていた全体のストーリーが、実はそうでなかったということに気づきます。

それが、先ほどの「自分の命も危険なのに、なぜ犯行におよんだのか?」「そのままなら当然死ぬはずの人物をなぜあえて殺したのか」の解でした。

この作者の挑戦に拍手を送りたいです。

この作品はきっと映像化されるでしょうから、その前に是非一読されることをおススメします。