優しいほめ言葉

 

 

若い頃、自己啓発本が大好物だった私でも、D・カーネギーの「人を動かす」だけはタイトルで食わず嫌いしていました。

「人を動かす」なんて、いかにも西洋的というか権謀術数的な感じがしましたし、読まずして、策を弄するための指南書みたいなものなんだろうと決めつけていたからです。

のちに実際に読んでみてわかったのは、相手の尊重の仕方を軸とした良好な人間関係を築くことを目的とした本でした。今日は詳しくは触れませんが、以下の原則について述べています。

・人を動かす3原則
・人に好かれる6原則
・人を説得する12原則
・人を変える9原則

例えば、「人を動かす3原則」の第2原則「重要感をもたせる」には、こんな一節があります。

 

我々は、子供や友人や使用人の肉体には栄養を与えるが、彼らの自己評価には、めったに栄養を与えない。牛肉やジャガイモを与えて体力をつけてはやるが、優しいほめ言葉を与えることは忘れている。優しいほめ言葉は、夜明けの星の奏でる音楽のように、いつまでも記憶に残り、心の糧になるものなのだ。

 

私はこれを読んだ時、ハッとしました。

カーネギーは、心に対する優しいほめ言葉を、体の栄養と同じ(あるいはそれ以上の)価値として認めているのです。

例えば、子どもに食事を与えなかったらどうでしょう。もちろんそれは虐待ですし、犯罪です。

けれども、食事と同じくらい人々が求めている誠実な褒め言葉を、何年も(しかも数えるほどしか)与えていない例はいくらでもありそうです。

自戒の念を込めて、家族に対して、あるいは同僚に対して、自分はどうだったかと振り返ると、「今さら言わなくてもわかってもらえている」と誤魔化してきたのに気づきます。

心の糧としてもらうには、優しいほめ言葉を実際にかけ続けていくことが必要です。