心配の続きを、あとに回す

心配の続きを、あとに回す

 

心配事が頭から離れないときがあります。

心ここにあらずで、目の前のことに集中できず、「これじゃいけない」「もう忘れよう」と、なんとか立て直そうとします。

けれども、数分後には、やっぱり同じ心配事が頭に戻ってきます。

 

ドイツ・ミュンスター大学の研究チームは、「心配は自分では制御できない」という捉え方が、心配を長引かせると考えました。

そこで、以前からある先送りの方法を、この捉え方を確かめる行動実験として使います。

延期を試す経験によって、心配の強さも変わるのか。

対象は、さまざまなことへの強い心配が続く全般性不安症の47人と、病気への心配が強い心気症の35人でした。

 

参加者を無作為に、介入を受ける群と待つ群に分けました。

介入群は心理カウンセラーとの面接を2回、計150分受け、その間の6日間、先送りを試しました。

まず、その日の後で心配をする時刻をあらかじめ決め、そこに最大30分の時間枠を設けます。

 

日中に心配が浮かんだら、その「心配の存在」を認め、続きを考えるのは決めた時刻に回します。

また浮かんでも、そのつど延期を試します。

練習を助けるため、自分にかける言葉もつくりました。

論文には、「また心配が浮かんだ。それを認め、いまは手放そう」という趣旨の例が紹介されていました。

頭から無理に追い払おうとせず、心配に関わり続ける時間を変える練習です。

 

介入を終えて1週間後、過去7日間の心配の強さを質問票で尋ねました。

16〜80点で、高いほど心配が強い尺度です。

全般性不安症では、介入群の平均は約63点から54点へ、待機群は約65点から62点へ下がり、介入後の群間差が確認されました。

「もう忘れよう」と追い払うよう求めなくても、面接と練習を受けた群で心配が軽くなっていました。

 

では、「自分では制御できない」という感覚も変わったのでしょうか。

研究の主な評価は、この感覚と「心配は危険だ」という捉え方でした。

両診断を合わせた前後の変化では、介入群の得点がより大きく下がりました。

ただし、複数の比較で偶然の差を拾う危険を考慮した判定では、介入後の群間差は明瞭ではありませんでした。

心配の軽減は見えても、捉え方の変化がそれを引き起こしたかまでは分かりません。

面接と練習を合わせた介入なので、延期の練習だけの効果も切り分けられません。

面接の方が効果的だったのかも知れないのです。

 

全般性不安症の事後評価は20人対22人と少なく、効果の推定には小さな差から大きな差まで幅があります。

介入群では抑うつ悪化で2人が離脱し、介入との関係は不明です。

同じ手順を試した心気症では、開始前の心配得点に偏りがあり、介入後の群間差は明瞭ではありませんでした。

 

日々の心配に費やす時間や回数については、児童や学生などを含む別の7試験、計999人をまとめた分析があります。

心配する時刻を決める従来の方法を調べたもので、記録だけの群に比べ、先送りした群で小さな改善が見られました。

面接付きの今回の試験とは対象も手順も測り方も異なりますが、心配が軽くなる傾向は重なります。

 

眠りへの効果を調べた14日間のオンライン試験では、心配で眠れないと答えた成人に、夕方の20〜30分へ心配を延期してもらいました。

通常法と実行計画を加えた方法の2群をまとめると、心配時間の短縮は、記録だけの群に比べて明瞭ではありませんでした。

毎朝の自己報告による寝つき、夜中に目覚める回数、睡眠の質にも、対照群を上回る改善は確認されませんでした。

不眠症と診断された人は対象外で、不眠症への治療効果を決める結果でもありません。

 

ミュンスターの試験では、2回目の面接で6日間の実践を心理職と振り返りました。

確かめようとしたのは、心配が浮かんだあとにどう応じたかでした。

「また心配が戻ってきた」という、あの瞬間も、この練習では、続きをあとに回すことを試す機会になっていました。

 

参考文献:

  1. McCarrick D, Prestwich A, Ferguson E, O’Connor DB. Effects of worry postponement on daily worry and sleep: a randomised controlled trial. Psychol Health. Published online December 5, 2025. doi:10.1080/08870446.2025.2590072
  1. Dippel A, Brosschot JF, Verkuil B. Effects of worry postponement on daily worry: a meta-analysis. Int J Cogn Ther. 2024;17(1):160-178. doi:10.1007/s41811-023-00193-x
  1. Krzikalla C, Buhlmann U, Schug J, et al. Worry postponement from the metacognitive perspective: a randomized waitlist-controlled trial. Clin Psychol Eur. 2024;6(2):e12741. doi:10.32872/cpe.12741

   

 

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