鉛筆を削ると、芯がとがる一方で軸は短くなります。
残った長さには、使ってきた経過が表れます。
細胞にも、分裂を重ねると短くなる部分があります。
遺伝情報を収めた染色体の端を保護する、テロメアです。
伸ばす酵素が働かない体細胞では、1回の分裂でおよそ50~200塩基対ずつ短くなり、短くなりすぎると分裂をやめます。
その長さは、細胞が分裂を重ねてきた経過を知る手掛かりになります。
ところが同じ人の血液から採った白血球でも、長さは末端ごとに違います。
今回の研究で調べたある家族の娘では、2つの末端の間に約4,000塩基対、DNAの片側の配列で4,000文字分の差がありました。
同じ人のなかで、末端ごとの長さを左右するものは何なのでしょうか。
研究チームは末端のDNA配列を読みました。
テロメアでは「TTAGGG」という6文字の並びが繰り返されますが、その途中に別の配列が混ざり、位置や量が末端ごとに違います。
この通常とは異なる部分が「変異配列」です。
6家系19人で親子の対応する末端を比べると、多くで変異配列の分布がよく似ていました。
祖父母から母、娘へたどれた例もあります。
一部に変化はあっても、配列の特徴は世代を越えて受け継がれていました。
そして変異配列が多い末端ほど、テロメアは長い傾向がありました。
この関係は、白血球よりも、テロメアを伸ばす酵素が働く一部の培養がん細胞で強く表れていました。
そこでチームは、培養がん細胞の1系統を使い、特定の末端から変異配列を削りました。
この細胞の酵素は、削ったあとにも通常の配列を付け足せます。
細胞を1個ずつ別々に増やし、細胞数が2倍になる増殖を50回以上重ねて、長さが落ち着くのを待ちました。
培養後、削った部分には通常の繰り返し配列が新たにできていました。
増やした集団は、テロメア全体の平均も異なります。
そこで平均値の違いを差し引き、標的の末端を元の細胞集団と比べました。
公開データから計算すると、大きく削った4つの集団では約870~1,200塩基対短く、変異配列があまり減らない削り方では変化は約50塩基対でした。
追加測定でも4集団は短くなる方向でそろいましたが、約370塩基対にとどまる例もありました。
通常の配列を作り足したあと、長さの行き着く先が変わっていたのです。
通常の並びには、伸ばす酵素の働きを抑えるタンパク質が結合します。
調べた培養細胞では、末端の長さが違っても、結合できる配列の数は比較的そろっていました。
同じ数の結合場所でも、間に挟まる配列の量によって全体の長さは変わります。
研究チームは、こうした結合の条件が長さの調節に関わると考えています。
実際の結合量を測ることは、今後の課題です。人の老化速度や寿命との関係も、今回の測定範囲に含まれていません。
鉛筆の残りは、使ってきた経過を語ります。
テロメアの残りには、受け継いだ「長さの保たれ方」も重なっていました。
長いか短いかという数字を、そのまま若さや暮らしぶりの評価に置き換えることもできません。
娘の血液で比べた長い端と短い端には、それぞれ父と母から受け継いだ配列がありました。
参考文献:
Chai, X., Poon, L., Liu, H. et al. Telomere variant sequences encode the genetic blueprint for allele-specific telomere length. Nat Commun (2026). https://doi.org/10.1038/s41467-026-77310-9

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