足がむくんで心配だと言って外来にみえる方が、ときどきいらっしゃいます。
まず脛の前を指で押します。
跡がへこんだまま残るか、何秒で戻るか。
それから両手でふくらはぎを包んで、硬さと張りを確かめます。
長く診ていると、触れば脚の具合はだいたい見当がつくようになります。
立っているあいだ、脚の血液は重力で下へ引かれます。
静脈の内側には逆戻りを止める弁が並んでいて、これが傷むと血液は下へ落ちてきます。
太い静脈が詰まっても、同じように滞ります。
この2つは以前から検査で調べられてきました。
血液を上へ押し上げているのはふくらはぎの筋肉で、歩くたびに静脈を圧迫して送り出しています。
この押し出す力の弱さが病気の重さとどうつながるかは、大きな規模で確かめられていません。
ふくらはぎ全体を長いカフで覆い、血流を止めない程度に軽く空気を入れて密着させます。
脚がどれだけ膨らみ、どれだけ縮んだかを、中の空気の動きで追います。
まず立ったまま、血液がたまりきるのを待ちます。
次に足首を繰り返し上げ下げしてもらい、そのあいだに送り出せた量が、たまっていた量のどれだけにあたるかが駆出率です。
米国のある検査室が、2015年から2023年9月までの記録を集めました。
数えたのは人ではなく脚で、同じ人の左右を別々に扱っています。
3733人、7760脚ぶんです。
歩いているときの静脈の圧も、足首がどれだけ動くかも、この検査は測っていません。
駆出率の低い脚ほど、皮膚の色が変わったり潰瘍まで進んだりした割合が高くなりました。
45%を下回る脚は7760脚のうち3692脚で、半分近くを占めます。
潰瘍が今ある脚と治った跡のある脚を合わせると、駆出率の低い群で11.5%、高い群で4.6%でした。
ただし、ここに集まったのは検査に紹介されてきた人たちです。
体重が136kgを超える方は装置に乗れず、外れています。
年齢も性別も、弁の傷み具合も、詰まりの有無もそろえて比べます。
それでも駆出率の低い群では、潰瘍を持つ見込みがおよそ1.8倍高いままでした。
1.8倍というのは、潰瘍のある脚がその分だけ増えるという意味ではありません。条件をそろえたうえで、なお開いていた差の大きさです。
1.5倍から2.2倍という幅がついていて、この集まりから言えるのはそこまでです。
駆出率が50%以上の脚を基準にすると、30から39%でおよそ1.5倍、20から29%で2.2倍、10から19%と0から9%ではいずれも2.4倍と、低いほど差は開きました。
ただし、40から49%の区分だけは1.3倍にとどまり、幅が1倍をまたいだので、高いとは言い切れませんでした。
それに、駆出率も潰瘍も同じ日に記録しています。
どちらが先だったかは分かりません。
潰瘍ができて痛み、足首を大きく動かせなくなり、その結果として駆出率が下がった脚でも、同じ数字は出ます。
論文が引く古い報告にも、足首の動く範囲が狭いことと潰瘍が結びつくという指摘があります。
潰瘍を抱えた方がこの記録の中にいるのは確かですが、その一人ひとりについて、押し出す力の弱さが先だったとまでは言えません。
診察室で足を診る時間は限られています。
へこみの深さ、皮膚の色、傷の有無、そしてふくらはぎの硬さ。
手のひらはそこまでを覚えます。
足首を一度動かしたときにどれだけ送り出せたかは、わかりません。
参考文献:
Ghorbanzadeh A, Liedl D, Elbenawi H, et al. Relationship between calf muscle pump function and severity of chronic venous disease. Vasc Med. 2025;30(4):473-479. doi:10.1177/1358863X241311254

紹介した論文の音声概要を、NotebookLMでポッドキャスト化してみました。あわせてお楽しみください。
