アイスクリームの溶けにくさを決める、見えない骨格

アイスクリームの溶けにくさを決める、見えない骨格

 

夏の午後、冷凍庫から出したばかりのカップアイスは、しばらく待たないとスプーンが入りません。

少し置いてから戻ると、今度は縁のほうが縁のかたちを失っていて、すくうとゆるくスプーンに乗ってきます。

硬いあいだと、崩れはじめるまでの時間。

私はどちらも、そのアイスがどれだけ濃厚に作られているかの違いだと見ていました。

 

脂肪を減らす、あるいは別のもので置き換える。

アイスクリームの研究はその方向に積み上がってきました。

ただ、減らせば構造が変わるのは当然で、そこから脂肪という素材そのものの役割を取り出すことはできません。

サンパウロ大学の薬学部の研究チームは、量を据え置いたまま出どころだけを替えるという、ほとんど残っていない比較に取りかかりました。

 

揃えたのは、脂肪12.0%、無脂乳固形分8.5%、糖と総固形分。

この数字を4つの試作で動かさないまま、脂肪の出どころだけを低トランス植物性脂肪、バター、UHTクリーム、生クリームの4種に替えています。

測ったのは、凍らせながら攪拌したときに入る空気の量、−5 ℃で棒を押し込むのに要る力、そして金網に載せて25 ℃で45分置いたときに下へ落ちた重さでした。

食べたときのおいしさの評価は行われていません。

 

空気の入り方は、植物性脂肪の試作が33.7%で最も多く、バターの試作が23.9%で最も少なくなりました。

UHTクリームは27.7%、生クリームは27.2%です。

押し込みに要った力はこれと逆向きで、バターが2.75 N、植物性脂肪が1.88 N、残る2つは中間にあって互いに差がありません。

金網の上では、誰も触れないまま45分が過ぎます。

落ちたのは、植物性脂肪の試作でおよそ6割、UHTクリームの試作では1割ほどでした。

バターは50.6%と、ちょうど真ん中です。

いずれも3回ずつの測定です。

 

最も硬かったバターは、崩れにくさでは真ん中に落ち着きました。

最も溶けなかったUHTクリームは、硬さでは中位です。

押し込みの力は、入った空気の量とほぼ裏返しに並んでいます。

泡が少ないほど中身が詰まっており、棒はそのぶん押し返されたようです。

落下量はその並びに乗りません。

こちらは、脂肪の粒とタンパク質がつながって溶けた水を抱え込む網が、どこまで途切れずに続いているかに沿っているように見えます。

同じ脂肪12.0%から、二つの性質が別々に並びました。

ただしこれは実験室で組んだ3 kgの試作であって、店頭の商品の話ではありません。

 

UHTクリームの試作が崩れにくかったのは、高温殺菌でホエイタンパク質が変わり、脂肪と結びついたためだろう、と著者らは書いています。

その変化そのものは、この研究では測られていません。

UHTクリームには製品として安定剤があらかじめ入っており、タンパク質の量も他より多くなっています。

網を強めたのが加熱による変化なのか、最初から素材に入っていたものなのかは、この4つの比較からは切り分けられません。

 

冷凍庫から出したカップアイスを、テーブルに置いて待ちます。

待つほどスプーンは入りやすくなり、待つほど縁は崩れていきます。

同じ待ち時間のなかで、二つのことが逆向きに進んでいます。

 

参考文献:

Santos PHDS, Suzuki CK, Lannes SCDS. Structural Properties Before and After Ripening of Ice Cream Made with Different Dairy Fat Bases. Foods. 2025;14(18):3276. Published 2025 Sep 22. doi:10.3390/foods14183276

 

 

紹介した論文の音声概要を、NotebookLMでポッドキャスト化してみました。あわせてお楽しみください。