「三つ子の魂百まで」といいます。
60歳を過ぎて何十年ぶりかに同級生と会うと、最初は誰なのかわかりません。
ところが、共通の思い出をたどりながら話しているうちに、目の前の顔へ昔の面影が少しずつ重なってきます。
そして、この人は変わっていないな、と思います。
姿ではなく、性格のことです。体も暮らし向きも変わったのに、そこだけは変わらないと感じて、少しうれしくなります。
性格が生涯にわたって変わること自体は、長期の追跡研究で繰り返し確かめられてきました。
それでも、性格は早いうちに固まるという見方は根強く残っています。
2026年、チューリッヒ大学などの研究チームが確かめようとしたのは、性格が変わるかどうかではなく、収入や健康、暮らしの満足度などと比べて、どれくらい変わるかでした。
私たちは、これらのうち、何が人生のなかで大きく変わり、何が変わりにくいかを、自分なりに見積もっています。
米国の人口構成に合わせて集めた887人が、外向性や誠実性などの性格5因子を含む25項目について、15歳から90歳までに人口平均がどれくらい変わると思うかを答えました。
実際の変化は、米国、ドイツ、オーストラリア、オランダの8つの縦断調査、計16万6971人の繰り返し測定から、年齢ごとの平均水準を推定して比べました。
回答者の見積もりでは、性格5因子はそろって「変わりにくいもの」の側に置かれていました。
なかでも外向性は、ほかの項目と比べても、ほとんど変わらないものと見られていました。
ところが、追跡データを年齢に沿ってたどると、誠実性は、収入や健康などと並べても変化の大きい側に現れました。
性格以外の項目には、その累積変化を統計上はっきり上回るものが一つもありませんでした。
ただし、人々の予想と追跡データの変化量を、そのまま引き算することはできません。
一方は回答者がつけた評定のなかでの位置、もう一方は年齢別の集団平均が上下した道のりを積み上げた値だからです。
それでも、「性格は変わりにくい」という人々の見積もりと、追跡データから得られた結果が大きくずれていたことは確かです。
二つは、すべてが食い違っていたわけではありません。
健康上の問題や収入が大きく変わること、教会へ行く頻度があまり変わらないことを、回答者はおおむね言い当てていました。
ずれはほかの項目にもありましたが、性格5因子はすべて、変化を小さく見積もった側にそろいました。
解析法や使うデータを変えて確かめても、15歳と90歳の差では比較結果の9割、途中の変化を積み上げた場合にはすべてで、性格の変化が過小評価されていました。
自尊感情や人生満足度などでは、同じ判定は比較結果の1割台から3割台にとどまりました。
一方で、測り方の違いが性格の変化を相対的に大きく見せた可能性は残ります。
尺度の精度を補正できたのは、複数の質問で測った14変数だけで、1問で測った項目には同じ補正をかけられませんでした。
同じ14変数を補正せずに計算しても順位はほぼ変わりませんでしたが、1問で測った項目の精度は分からないままです。
8つの調査はすべて西側の民主主義国で行われ、調べたのも年齢ごとの集団平均です。
一人ひとりが実際にどう変わったのか、本人の意思で性格を変えられるのかは、ここでは測っていません。
久しぶりに誰かと向かい合い、「昔と同じだ」と思う瞬間があります。
姿かたちについては、間に流れた年数をそのまま数え、変わっていて当然だと構えています。
その年数は、性格の側にも同じだけ流れています。
そこだけ目盛りを持ち替えないまま、相手の顔を見ています。
参考文献:
Wright, A.J., Krämer, M.D., Haehner, P. et al. Personality traits are less stable than people think. Commun Psychol (2026). https://doi.org/10.1038/s44271-026-00515-7

紹介した論文の音声概要を、NotebookLMでポッドキャスト化してみました。あわせてお楽しみください。
