私はポッドキャストが好きで、車のオーディオにつないだり、ジョギングをしながら聴いたりしています。
毎週の更新を楽しみにしている番組の一つが、上田玲さんの「ランニングチャンネル」です。
毎回一つのテーマを決め、リスナーから届いた投稿を紹介していきます。
5月下旬のテーマは「溺愛シューズ」でした。
ところが、一回では収まりきらず、4週にわたって続きました。
紹介された投稿には、「練習用」と「レース用」を履き分ける話が何度も登場しました。
自己ベストを狙うランナーにとって、溺愛は必ずしも一途を意味しません。
一番好きな靴があっても、すべての走行距離をその一足へ集めるとは限らないのです。
シューズと故障の研究では、「どの一足を選ぶか」と「一足へ走行距離をどれほど集中させるか」が、それぞれ別の方法で調べられています。
研究をまとめたレビューは、故障を、練習で加わる負荷に身体がどこまで耐え、回復できるかという釣り合いの問題として捉えています。
靴は、その釣り合いに関わる一要素です。
「どの一足を選ぶか」については、米軍新兵7203人を対象とする3つの無作為化試験があります。
土踏まずの形に応じて靴を割り当てる群と、足型にかかわらず安定性を重視した靴を割り当てる群を比べました。
3試験をまとめても、足型処方群の傷害発生率は男女とも比較群の0.97倍でした。
推定の幅は、少し減る場合と少し増える場合の両方を含み、足型処方で傷害が減ったとは確認できませんでした。
ただし、対象は定められた訓練を行う軍人です。
趣味のランナーや、靴のあらゆる特徴にまで広げられる結果ではありません。
一方、成人の趣味ランナー264人を22週間追った観察研究では、一足への走行距離の集中が調べられました。
ランニング中に生じた、またはランニングに起因した下肢・腰部の症状のうち、予定したランニングを1日以上妨げたものを故障とし、87人が少なくとも1件を経験しました。
研究を紹介した資料によると、116人の群は走行距離の91%を主な一足で走り、使った靴は平均1.3足でした。
148人の群では主な一足への集中が58%で、平均3.6足でした。
2群を分けた正確な基準までは確認できませんが、報告された使用実態は単純な一足対二足以上ではありません。
追跡中に故障が起こる度合いは、複数の靴を使った群で、一足に集中した群の0.61倍と推定されました。
その幅は0.39倍から0.97倍で、低い方向ではあるものの、差がかなり大きい場合から、ごく小さい場合まで含みます。
これは故障した人数が39%減った、あるいは靴の使い分けが故障を39%防いだという意味ではありません。
群別の故障人数と、比較の際にどの背景条件を統計上そろえたかは、紹介資料に示されていません。
研究者は、異なる靴によって走り方や下肢に加わる力が変わり、同じ組織への反復負荷を避けられた可能性を挙げています。
しかし、この研究は靴の使い方を無作為に割り当てたものではありません。
靴以外の違いが関係した可能性も残り、何足を、どの頻度で、どれほど特徴の違う組み合わせで使えばよいかも未確定です。
番組で聴いた「練習用」と「レース用」の履き分けが、そのまま故障予防の答えになったわけではありません。
それでも、研究の視線は、一足の性能から、走行距離の配分へ広がっています。
溺愛する一足があっても、すべての距離をその靴で走るとは限りません。
故障との関係で測られたのは、靴への愛情ではなく、その靴に集まった距離でした。
参考文献:
Malisoux L, Theisen D. Can the “Appropriate” Footwear Prevent Injury in Leisure-Time Running? Evidence Versus Beliefs. J Athl Train. 2020;55(12):1215-1223. doi:10.4085/1062-6050-523-19

紹介した論文の音声概要を、NotebookLMでポッドキャスト化してみました。あわせてお楽しみください。
