午後、オランダの鳥類公園で、モモイロインコの禽舎の扉が開きます。
17羽は、外へ出ても、中に残ってもかまいません。
外では約20分、飛ぶことも、芝生にまかれた種子をついばむことも、木で休むこともできます。
中に残っても、外へ出た鳥と同じように、あとで餌をもらえます。
それでも15羽は、機会があるたびに扉を出ました。
残る2羽が中にとどまったのも、それぞれ1回だけです。
扉の前で数えられた選択は、ほとんど一方向でした。
17羽は、飛行を含む屋外の時間をほぼ必ず選びました。
人間は、目的地へ行くためではなく、スキーで斜面を滑り、パラグライダーで空を渡ること自体を楽しみます。
鳥にも、飛ぶことそのものを楽しむ感覚があるのでしょうか。
2026年に報告されたこの研究は、扉を出た回数だけでは終わりませんでした。
「外へ出たい」は選択に表れます。
しかし、「飛ぶのが楽しい」は、同じ回数からは決まりません。
研究チームは飛行後の気分を、曖昧な状況での判断、15種類の行動、糞に残るホルモン代謝物から調べました。
観察は2021年2月から6月に行われ、飛行機会のあった32日となかった39日のデータを、同じ鳥の中で比べました。
判断の課題を終えたのは11羽です。
鳥たちは、好みの餌が入るカップと、それほど好まない餌が入るカップを、異なる背景と結びつけて覚えました。
背景を両者の中間まで曖昧にしたとき、好みの餌の側を選べば「楽観的」な判断とみなします。
3段階のどれでも、飛行機会のあった日となかった日の差は確認できませんでした。
気分が同じだったという証明ではなく、1回の飛行後の差をこの課題では絞り込めなかったという結果です。
ただし、最も曖昧な背景では、飛べない日が続いた日数をマイナス、飛べる日が続いた日数をプラスとして並べると、数字が大きいほど好みの餌の側を選ぶ関係が見られました。
飛行後の検査が1回だけだった2羽を除いても、関係の向きは変わりませんでした。
これは、飛行の蓄積と非飛行の蓄積を別々に確かめた結果ではありません。
観察範囲は、飛べない日が3日続いたところから飛べる日が2日続いたところまでで、両端のデータは少なく、推定の幅も広いものでした。
日程も完全な無作為ではないため、連続した飛行が気分を明るくしたとは断定できません。
行動観察では、15種類のうち、冠羽を上げる、体を掻く、採食するという3項目が飛行後に増えました。
けれども、冠羽上げや掻く動作は喜びの専用標識ではありません。
興奮の強さを表すこともあれば、飛行で乱れた羽毛を整えた可能性もあります。
15項目を一度に比べると、偶然にも差が出る項目が生じやすくなりますが、その点を補正した解析は示されていません。
身体の反応として、14羽の糞から、ストレス反応に関わるホルモンの代謝物も測りました。
飛行の3~5時間後は平均16.19 ng/g、非飛行日は15.95 ng/gで、この測定ではどちらが高いかを決められませんでした。
飛べる日または飛べない日が続いた日数との関係も確認されていません。
選択には明瞭な偏りがありましたが、判断、行動、生理から得られた結果は、飛行後の楽しさを同じ強さで裏づけませんでした。
飛行日には、空を飛ぶことだけでなく、広い屋外、種子を探すこと、ほかの鳥との活動も含まれます。
実際に飛んだ時間や距離は測られておらず、飛行だけの効果は切り出せません。
対象も1施設の飛行デモに慣れた17羽です。
扉を出たという選択は数えられました。
その向こう側にあった気分までは、同じ回数からは数えられません。
参考文献:
Massen, J., Malone, K., de Vries, R., Beekmans, M., van Zeeland, Y., & Oei, C. (2026). Do birds enjoy flying? An analysis of affect after flight in galah (Eolophus roseicapilla). Behaviour (published online ahead of print 2026). https://doi.org/10.1163/1568539X-bja10370

紹介した論文の音声概要を、NotebookLMでポッドキャスト化してみました。あわせてお楽しみください。
