丸い金魚鉢の外と内 ― 魚のいる場所から見た窓枠

丸い金魚鉢の外と内 ― 魚のいる場所から見た窓枠

 

水を張った丸いガラスの器を、一歩離れて覗いてみます。

向こう側の窓枠や本棚の線が、ふちに近いほど太く曲がって見えます。

丸い壁がこれほど像を崩せば、その内側もまた、曲がった線に囲まれているように見えます。

けれど、その線を曲げた光は、窓枠から出て水槽を通り、外にいるこちらの目へ届いたものです。

 

球形水槽の屈折は外界の像を崩し、魚を落ち着かなくさせるという見方があります。

ところが、研究グループが文献を調べても、球形と立方体で魚の行動を比べた報告は見つかりませんでした。

2026年、ブダペストの研究グループは、球形水槽と立方体水槽を内側から外を見る条件で比べました。

魚は1匹も使わず、水中の観察点から外界へ光路を逆にたどり、壁で生じる像のずれを計算しました。

 

球の直径と立方体の一辺を同じにした二次元モデルで、水中の観察点を中心から壁の近くまで6か所に置きました。

水の屈折率は1.333です。薄いガラス壁の屈折と、球形水槽上部の小さな水面は計算に含めません。

計算で扱えるのは光の角度までで、魚の行動や感じ方は含まれていません。

 

球形水槽の中心では、光線がどの向きでも壁へ垂直に当たり、壁による屈折の歪みは全方向で0でした。

中心を外れると、球形のほうが大きく歪む向きも、立方体のほうが大きく歪む向きも現れます。

どちらの歪みが小さいかは、水槽の形だけで決まらず、観察点と視線の向きで入れ替わりました。

ただ、中心を外した5か所のどこでも、球形の歪みが小さくなる視線角の範囲は、立方体の歪みが小さくなる範囲の1.8~8.7倍ありました。

この倍率は歪みの強さではなく、球形のほうが小さく歪む視線方向の広さを表します。

標本推定ではなく、設定した幾何条件から得た計算値です。

全反射で外界を見通せない方向も、立方体では中心に近い位置から現れ、幅の合計が1.6~42度へ広がり、球形では壁に最も近い1か所で40度だけでした。

この計算は二次元の6位置と、1つの寸法比に限られています。

 

屈折の大きさは、光線が壁へ当たる角度で変わります。

平らな壁では、壁に垂直な線の向きがどこでも同じなので、視線を傾けるほど光は斜めに当たりやすくなります。

丸い壁では、光が当たる場所とともに壁に垂直な線も傾き、斜め具合の増加が一部打ち消されます。

曲面だから必ず強く曲げるわけではありません。

防水カメラを使った実演では、外から球形水槽越しに見た格子は大きく湾曲しました。

同じ格子を球形水槽の内側から壁へ垂直に向けて撮ると、画面中央近くの線はほとんど曲がらず、周辺ほど湾曲しました。

直方体水槽の内側から角を向くと、格子像は4~6つの部分に分かれ、全反射による重なった像も現れました。

実演用の水槽は計算上の立方体とは形も寸法も異なり、カメラ固有の歪みも補正されていません。

写真は計算値の再現ではなく、定性的な提示にとどまります。

 

魚に適した水槽かどうかは、壁で起こる屈折だけでは決まりません。

著者らは、市販される球形水槽が立方体水槽より小型に限られることも、別の問題になりうると述べています。

ただし、この研究は市販品の大きさや飼育環境を調べたものではありません。

魚の知覚も行動も測っていないため、球形のほうが魚に優しいとも、立方体が有害だとも言えません。

 

金魚鉢の向こうで窓枠が波打って見えても、その波をそのまま器の内側へ折り返すことはできません。

 

参考文献:

Gábor Horváth, Alexandra Simonová, Loránd Horváth, György Kriska; Viewing the aerial world from water-filled spherical and cubic aquaria: there are not optical reasons to ban fish keeping in spherical aquaria. Proc. R. Soc. A 1 July 2026; 482 (2342): 20260024. https://doi.org/10.1098/rspa.2026.0024

 

 

紹介した論文の音声概要を、NotebookLMでポッドキャスト化してみました。あわせてお楽しみください。