たき火をするとき、私たちは足元の枯れ葉を払い、燃えるものと火を離します。
火を近づけないことは、森を守る基本ともされてきました。
カリフォルニアのシエラネバダ山脈でも、1世紀以上、火を消す管理が続きました。
そこに群生するジャイアントセコイアは、厚い樹皮と高い枝をもち、3,000年以上生きることもあります。
ところが、2020~2021年の山火事は、この巨木を数千本の単位で枯らしました。
その間、地表には落ち葉や枯れ枝、倒木が積み上がりました。
そこで2つの国立公園では、火が広がりすぎない条件を選び、地表の燃料を先に焼く「計画的な火入れ」を1960年代から続けてきました。
一連の火災では、生息域の成木の推定13~19%が失われました。
過去数千年に例のない規模です。
2021年は、120年を超える記録の中で最も暑く乾燥した年でした。
先に入れた火が1本の生死をどれほど変えたかは、この規模の被害が起きるまで数字で確かめられていませんでした。
研究チームは、19の林にある高さ20メートル超の26,403本を調べました。
火災前後の3メートル解像度の衛星画像に、火災前の航空レーザー測量を組み合わせ、1年後に樹冠の生きた葉を90%超失った木を枯死としました。
判別は、現地で生死を確認した1,566本で補正しました。
10年以内に火入れされた木とそれ以外を比べ、木の高さ、地形、日射、火の進み方、林ごとの差をベイズモデルで調整しました。
火を割り付けず、すでに起きた火災を分析した観察研究です。
枯死したと推定されたのは7,974本、全体の30.2%でした。
10年以内に火入れされた区域では、枯死と生存の比である死亡オッズが77%低く、95%信用区間は69~83%でした。
ただし、その区域の木は5,945本、19林中3林に限られ、推定は主にレッドウッド・マウンテン内の比較に支えられています。
航空レーザーで測った樹冠密度、高さのばらつき、中ほどの枝葉には、枯死との明確な関係がありませんでした。
地表の燃料量や炎の強さは直接測られていませんが、研究チームは、地表付近の燃料が根元で燃え続ける時間や樹冠まで届く熱を左右した可能性を挙げています。
別の計算では、火入れがすべてなければ枯死が約1,900本増え、すべての木に火入れしていれば、さらに約3,900本が生き残ったと推定されました。
どちらも観察数ではなく、火災時の気象と地形を固定した値です。
計算は焼けた範囲だけが対象で、火入れによる延焼範囲の変化は含みません。
同じ数値は、別の樹種や地域、通常の火災には当てはめられません。
今回測った森の形と枯死に明確な関係がなくても、間伐などが不要とはいえません。
中ほどの枝葉の指標は、一定範囲内で返ったレーザーの密度です。
火が下から上へ登るときには、密度だけでなく、燃えるものが途切れずにつながっているかどうかも関わる可能性があります。
森の形が関係しないのか、測り方では捉えきれなかったのか。
今回の結果では区別できません。
レッドウッド・マウンテンの航空写真では、長く火の入らなかった斜面に枯れたセコイアが目立ち、その奥の2012年に火入れされた区域には、生き残った木が多く見えます。
私たちは火を遠ざけるために、たき火の足元から枯れ葉を払います。
3,000年を生きうる木の足元では、その枯れ葉のほうを、9年前に少しだけ燃やしてありました。
参考文献:
Dixon, D.J., Das, A.J., Dong, X. et al. Previous prescribed burns saved thousands of ancient sequoias during historically unprecedented wildfires. Nat Commun (2026). https://doi.org/10.1038/s41467-026-75418-6

紹介した論文の音声概要を、NotebookLMでポッドキャスト化してみました。あわせてお楽しみください。
