並べ替えて引く — その手は、2をかけていた

並べ替えて引く — その手は、2をかけていた

 

紙に4桁の数を一つ書いてみます。

たとえば2808。この4つの数字を大きい順に並べた8820から、小さい順に並べた0288を引くと、8532が出ます。

その8532で同じことをすると6174になり、6174で繰り返すと7641から1467を引いて、また6174です。

十進法では、同じ数字だけでできた数を除けば、どんな4桁の数から始めても、何度かのうちにこの6174へ行き着いて、そこから先は動かなくなります。

 

この6174は、カプレカー定数と呼ばれて名の通った数です。

並べ替えて引くだけで、最後はここへ落ちる。

桁を入れ替えて引くだけなのに、行き先はいつも同じです。

手品のタネを知らずに見ていると、引き算の先に特別な数が一つだけ待っているように思えます。

十進法に住む、選ばれた一つの数。

多くの人はそこで話を終えます。

 

ところが、引き算の手品にしては、行き先が一つきりというのは出来すぎています。

十進法だけのまぐれなのか、それとも別の数え方にも似た行き先があるのか。

そこで4人の数学者は、土俵を十進法から動かしてみました。

指を折って数える基が10でなければ、6174という並びは意味を持ちません。

7を基にした世界、11を基にした世界では、並べ替えて引く手はどこへ向かうのか。

 

調べてみると、4桁の場合、次に出てくる数を決めているのは外側の差と内側の差の2つだけでした。

一番大きい桁と一番小さい桁の差、それと内側の2つの桁の差です。

真ん中の桁の値は、引き算でちょうど打ち消し合います。

そこで2つの差そのものを追うのをやめ、その半分の和と半分の差に目盛りを取り替えます。

引き算だったはずの手つきが、ここから別の動きに見えはじめます。

 

座標を取り替えた世界では、並べ替えて引くという動きが、ただ2倍することと同じになっていました。

符号は無視して、2をかける。

それだけです。

7を基にした世界で3100から始めると、5430、5520、5322とたどって5430へ戻ります。

3100の外側の差は3、内側の差は1。

この3と1から始まった輪が、3歩で閉じています。

11を基にすれば、同じ種類の輪が5歩に伸びます。

並べ替えて引く手は変わらないのに、基によって輪の大きさが変わるわけです。

 

大きな輪の長さは、2を何度かければ、符号を無視して1に戻るかという性質で決まっていました。

歩数が上限いっぱいまで伸びるには、基が素数である必要があります。

それでも、素数なら必ず長くなるわけではありません。

基17では、8まで伸びる余地があるのに4で止まります。

基9のような合成数では、途中に近道ができて、輪は短く閉じます。

この論文のきれいな分類が利くのは、4桁、奇数の基、3より大きい範囲に限られます。

十進法の6174はその外側にありますが、同じ場所に戻り続ける長さ1の輪として眺めることはできます。

 

並べ替えて引く。紙の上で動かしていた手は、引き算をしているつもりでした。

けれど座標を一つずらすと、その同じ手は2をかけていたことになります。

6174という行き先の名前の下で、並べ替えて引いていたその手が、別の場所では2をかけているように見えてきます。

 

参考文献:

Chen E, Ono K, Schwartz RE, Thakur DS. Four-digit Kaprekar dynamics in odd bases. arXiv. Preprint posted online June 18, 2026.

 

 

紹介した論文の音声概要を、NotebookLMでポッドキャスト化してみました。あわせてお楽しみください。