24億年前、太陽光の力で水を分解する仕組みが現れると、地球の空気に酸素が含まれ始めました。
私たちが日々目にする緑は、その仕組みの現役の末裔です。
窓辺の観葉植物も、街路樹も、光を浴びて水と空気から糖を作り、生き物のほとんどはその糖に支えられています。
これだけ世界を変え、これだけ長く受け継がれてきた仕組みなら、少しずつ無駄を削られ、今の形に磨き上げられてきたのでしょう。
けれども、その詳しい成り立ちを、私たちはほとんど想像できません。
その「完成」をたどる道は、偶然まぎれ込んだ緑の点から開けました。
パナマからニューヨーク州イサカの研究室へ、ツノゴケの葉に乗って運ばれてきた微生物です。
葉から汚れを落とす作業の途中、顕微鏡の下に小さな緑の粒が残っていました。
捨てたはずの汚れの中に、見たことのない緑がひと粒だけ残っていたのです。
色も形も、見慣れたほかの仲間とどこか違いました。
DNAを調べると、その粒は20億年以上前に枝分かれした古い系統に属していました。
今回見つかった種は、そこからさらに14億年前に分かれています。
現代のなかまの多くは、たがいによく似た一群にまとまっていて、初期の姿をさかのぼる違いが乏しい。
そこに、この「はみだし者」の意味があります。
20億年前の姿がそのまま凍りついた化石ではありません。
進化を続けてきた現代の生き物でありながら、初期の光合成を考えるための古い手がかりを残している可能性があります。
この生き物は、現代の植物がもつ折りたたまれた膜をもたず、光を扱う部品を細胞の外側にある膜へ直接並べていました。
光を受け取る部分こそ、いちばん念入りに作り込まれているはずです。
実際に見えてきた形は、その予想から少しずれていました。
この生き物が光を集める部品は、現代型の広がった形ではなく、カヌーの櫂を思わせる細長い形でした。
2023年の実験では、この形のために光合成の速さがかなり落ちていました。
受け取る効率の点で不利な形が、そのまま残されていたのです。
外側がこれほど違うなら、光を化学エネルギーに変える奥の部分も、同じだけ違っていそうです。
研究チームは、その構造を凍らせて電子顕微鏡で写し取り、同じ系統のほかの仲間と比べました。
電子の受け渡しに関わる反応の核には、よく似た作りが残っていました。
差が大きかったのは、その周囲、光を受け取る部品のほうです。
光を集める側にはさまざまな形があり、反応の核は変わりにくい。
予想とは反対向きの差が、そこに見えてきます。
この傾向は、この一種だけにとどまりません。
光合成を行う生き物を広く見ると、光を扱う中心の作りは、何十億年ものあいだよく保たれてきました。
光を受け取る部品と色素には、生き物ごとに多彩な型があります。
変わりやすい場所と、変わりにくい場所がある。
2つの中心はどちらも1つの祖先にさかのぼりますが、どちらが先に生まれたかは、まだ決め手がありません。
葉の表側に近い緑には、光を受け取る仕組みの長い作り替えが重なっています。
効率の悪い形も、長く残っていました。
反応の核には、10億年を超える隔たりを越えても、よく似た作りがあります。
次に窓辺の緑を見たとき、その緑は、いちばん外側の、何度も作り直されてきた層に見えるかもしれません。
その奥に、ほとんど形を変えずに受け継がれてきた古い芯が隠れています。
参考文献:
Arnold C. An Early Step on the Long, Strange Road to Photosynthesis. Quanta Magazine. Published June 10, 2026. Accessed June 17, 2026. https://www.quantamagazine.org/an-early-step-on-the-long-strange-road-to-photosynthesis-20260610/

紹介した論文の音声概要を、NotebookLMでポッドキャスト化してみました。あわせてお楽しみください。
