午後のひととき、ソファに腰を下ろしてうたた寝をする。
これは、多くの高齢者にとってごく自然な習慣です。
短めの昼寝なら、疲れが少し抜け、頭も働きやすくなるように感じます。
加えて、年を重ねると夜の眠りは浅くなり、途中で目を覚ます人も増えます。
夜に足りない分を昼に補えばよい。
そんな考えも、昼寝を後押ししてきました。
だから、昼寝が長くなったり回数が増えたりしても、本人の好みや生活リズムの問題として片づけられがちです。
けれど、同じ昼寝と呼んでいる時間の中に、少し様子の違う眠りが紛れているかもしれません。
昼食後に短く目を閉じる時間と、朝から何度も眠気に引き込まれる時間は、同じ休息として見てよいのでしょうか。
疲れをほどく昼寝の隣で、体のどこかの変化が表に出ている。
研究チームはその可能性を、手首の活動量計で調べました。
米国北イリノイ州で暮らす56歳以上の高齢者1338人が、この研究に参加しました。
参加者は手首に活動量計をつけ、平均9.58日間、日中の眠りを記録されました。
午前9時から午後7時までの睡眠を昼寝とし、その後、最長19年にわたって死亡との関連が追跡されました。
自己申告ではなく、手首の動きから昼寝を推定したところに、この研究の強みがあります。
昼寝が1時間長いごとに死亡リスクは1.13倍、1日の昼寝回数が1回多いごとに1.07倍でした。
早い午後を中心に眠る人と比べると、午前中に眠る人では1.30倍でした。
ふだんは「昼寝」と一括りにしている時間でも、死亡リスクとの関連は、長さ、回数、時間帯によって異なっていました。
この分析では、昼寝だけが切り出されたわけではありません。
夜の睡眠時間、睡眠の途切れ、生活リズム、持病、薬、抑うつ症状、身体活動、日常生活の障害なども考慮されています。
それでも、長い昼寝、回数の多い昼寝、午前中の昼寝と死亡リスクの結びつきは、消えませんでした。
反対に、日によって昼寝時間がばらつくことは、調整後には死亡と明確に結びつきませんでした。
昼寝なら何でも危ない。そこまでは言えません。
手首の活動量計にも、苦手なことがあります。
じっと休んでいる時間と、本当に眠っている時間を完全には区別できません。
対象者は白人が多く、退職後の高齢者が中心です。
昼食後の休息が文化として根づいている地域や、仕事の時間帯が異なる人々に、そのまま重ねることもできません。
この研究で扱えるのは、昼寝そのものの善悪ではなく、昼の眠り方に体調の変化が表れる可能性までです。
昼寝は、これからも休息であり続けます。
ソファで目を閉じる時間が、すぐに不吉なものへ変わるわけではありません。
ただ、午前中から眠くなる日が増える。
昼寝が長くなる。
回数が多くなる。
年のせい、生活リズム、好み。
そう呼んでいたものの端に、体調の変化という小さな可能性も残ります。
窓辺の椅子でまぶたが重くなる午後、その眠りを眺める目が、ほんの少し変わるかもしれません。
参考文献:
Gao C, Cai R, Zheng X, et al. Objectively Measured Daytime Napping Patterns and All-Cause Mortality in Older Adults. JAMA Netw Open. 2026;9(4):e267938. Published 2026 Apr 1. doi:10.1001/jamanetworkopen.2026.7938

紹介した論文の音声概要を、NotebookLMでポッドキャスト化してみました。あわせてお楽しみください。
