朝、目覚ましのアラームを止めたあと、体が重い日があります。
前の晩にとくべつ遅くまで起きていたわけでもないし、週末に休みを取ったばかりなのに、頭がぼんやりしている。
そういうとき、多くの人はまず自分の生活を疑います。
寝不足だろう、働きすぎだろう、自己管理が甘いのだろう、と。
疲労の原因は自分の生活のどこかにあるに違いない、と思っています。
ところが2022年の米国の全国調査では、成人の13.5%が3か月間にわたり、ほぼ毎日「非常に疲れている」または「消耗している」と答えました。
18歳から44歳の女性では、その割合が20%を超えます。
7人に1人という割合を見ると、疲れを個人の「だらしなさ」だけで片づけるのは無理があります。
なぜ疲れるのかという視点を変えて、何が足りないと体の複数のはたらきが鈍るのかを調べました。
そこに浮上したのが、ビタミンD、ビタミンB12、オメガ3脂肪酸です。
これは、特定の集団に栄養素を投与して追跡した介入試験から出たものではありません。
全国調査で浮かんだ疲労の頻度に、各栄養素の欠乏がどれほど広がっているか、そしてその欠乏が筋肉、血液、脳のはたらきとどう結びつくかという、これまでの報告を重ねて読み解いていきました。
そこへ日光、運動、睡眠、ストレス、飲酒も並べることで、疲労の入口が一つではないことが見えてきます。
三つの栄養素は、同じ場所で働いているわけではありません。
ビタミンDは骨や筋肉に加え、気分や認知機能にも関わります。
B12は赤血球づくりと細胞のエネルギー産生を支えます。
オメガ3脂肪酸は脳の神経細胞の膜をつくる脂質で、不足すると不安や気分の落ち込みが強まり、認知機能の低下とも重なります。
入口は別々なのに、重だるさ、集中の鈍り、気分の沈みというかたちで、同じ方向へ集まってくる。
その合流点に、疲労感があります。
米国の成人ではビタミンD不足が4割を超え、B12が不十分な人は約2割にのぼります。
オメガ3脂肪酸はさらに多く、40歳から59歳では87%が推奨量に届いていません。
ここにアルコールが加わると事情はもう一段複雑になります。
体はアルコールの処理を優先するため、炭水化物や脂質からのエネルギー利用が後回しになり、B群ビタミンの吸収も落ちます。
夜の一杯のあとに翌朝の立ち上がりが鈍くなる理由は、寝不足だけでは説明しきれません。
見落としやすいのは、こうした不足が一つの症状では現れないことです。
やる気の低下は気分の問題、体の重さは運動不足、集中しにくさは睡眠の質―別々に分類しているうちに、複数の欠乏が同じ疲労感に合流している可能性は視界から退いていきます。
ただし、これで疲れの原因を一本に絞れるわけではありません。
日光、運動、睡眠、ストレス管理も、栄養と並ぶ要素です。
疲れは栄養不足だけの話ではなく、回復と消耗の全体像のなかにあります。
それでも、休んでも抜けにくい疲れのなかには、何かが足りていないことから来るものが確かに混じっています。
眠り方や働き方だけでは説明のつかないだるさを前にしたとき、翻訳を間違えているのは、体ではないほうかもしれません。
参考文献:
Begdache L. Vitamin deficiency may be why you’re so tired a nutritional neuroscientist explains how to kickstart your energy by getting essential nutrients in a well-rounded diet, along with more sleep and exercise. The Conversation. Published January 7, 2025. Accessed April 10, 2026. doi:10.64628/AAl.n43rwsdcd

紹介した論文の音声概要を、NotebookLMでポッドキャスト化してみました。あわせてお楽しみください。
