グルメ番組を見ていると、本当に美味しそうに食事するタレントさんがいますね。
食レポで情報を詰め込むよりも、よっぽどその表情が料理の美味しさを物語ってくれます。
反対に、苦手な料理を前にした時の人間の表情というのは、かなり正直です。
嫌いな食べ物を不味そうに食べるのは、そばで見ているこちらも不味く感じるものです。
今回紹介する研究テーマがまさしくそれです。
「人が食べている時の表情が、見ている人の好みに影響を与えるか?」
特に、生のブロッコリーを食べる人の表情が、観察者が同じ野菜を手に取る意欲をどのように変化させるかを探求した研究です。
よくそんなテーマを思いついたなと感心しますが、研究者はいたってマジメです。
人間は「観察する生き物」です。
食べ物の選択においても例外ではありません。
この研究では、200人以上の若い女性に、生のブロッコリーを食べる大人の映像を視聴してもらいました。
その映像は、食べる時に、肯定的(笑顔)、中立的、否定的(嫌そうに)の表情をしてもらったものです。
研究者たちは、食行動のモデリングにおける性別差が存在する可能性があるため、女性の反応のみを調査しました。
研究結果は、大方の予想通りといえるものでした。
他人が生のブロッコリーを食べる時にイヤそうな表情を見せると、観察者もそれにひきずられて「好まない」になりました。
ところが、食べる時に笑っていた場合は、そこまでひきずられず、好き嫌いに影響しませんでした。
この現象の一つの説明は、一般的に好まれるかどうかにかかわらず、嫌悪感を示す食べ物を避けることが、不味いものや有害なものを食べるリスクから自分自身を守るためである可能性があります。
動物としての本能のようなものでしょうね。
また、食べ物を食べながら笑うことは、「食べている人が特定の食べ物を好んでいるだけ」というような典型的でない場合を想定しているのかも知れません。
意外に冷静な反応と言えますね。
この研究は、私たちが他人の食べ物に対する反応をどのように観察し、それが私たち自身の食べ物に対する好みや選択にどのように影響を与えるかについて、興味深い洞察を提供しています。
好き嫌いのない子どもに育てるには、少なくとも食べる時にはイヤな表情は避けるべきのようです。
元論文:
Edwards KL, Thomas JM, Higgs S, Blissett J. Exposure to models’ negative facial expressions whilst eating a vegetable decreases women’s liking of the modelled vegetable, but not their desire to eat. Front Psychol. 2024;14:1252369. Published 2024 Jan 11. doi:10.3389/fpsyg.2023.1252369