「ロングゲーム」

時の速さを川の流れによく例えたものだと思います。

一瞬一瞬が過ぎ去り、そこに留めておくこともできず、気づけば大切なものを見失ってしまう。

忙しさに追われ、目の前の快や成果に目を奪われがちですが、実はそれが私たちを本当の幸せから遠ざけているのかもしれません。

今、手にしている快や成功は、一年後、五年後、あるいは十年後も同じ価値を持つでしょうか。

目先の成果に満足している場合、長期的な視点が欠けていると、成長の機会を見逃してしまう恐れがあります。

忙しさの中でも、立ち止まり、じっくりと考える時間を作ることが、長期的な幸せに繋がる第一歩です。

そこで大切なのが、自分が本当に興味を持ち、心から望むことに焦点を合わせること。

自分の心が本当に求めるものを見つけ出すことが、長期的な満足に繋がります。

また、成果を最大化するためには、一点集中の力が不可欠です。

多くの目標に手を出すよりも、最も大切な目標に全力を尽くすことで、見違えるような成果を上げることができます。

失敗は誰にでも訪れます。

その失敗から学び、計画を見直し、別の方法を試すことで、目標に向かって進むことができます。

大切なのは「なぜこれをやるのか」という動機を明確にすること。

自分の内側から湧き上がる、純粋な動機こそが、途中で心が折れそうになった時、私たちを支えてくれる力になります。

 

誰もが考えすぎてしまうことがある

 

「あれこれと悩みすぎてしまう」―これは現代人のあるあるかもしれませんね。

私たちの脳は、昔から生存のために脅威を探し続けるようにできています。

しかし、その「生存本能」が今日では、日常のささいなことから未来の不確実性に至るまで、あらゆることを過剰に考える原因となっているのかもしれません。

まず、反芻と過剰な思考は似ているようでいて、微妙に違います。

反芻は、頭の中で同じ考えがグルグルと回ること。

それが過剰な分析につながり、結局、解決策を見つけることなく問題を深堀りしてしまうのです。

この現象をレコードの同じ部分が何度も繰り返し再生される様子に例えることができますが、レコードの場合は傷が原因であるのに対し、私たちの思考ループの背景にはもっと複雑なメカニズムがあります。

私たちの脳は脅威を察知して、それに対処する計画を立てることで、私たちを守ろうとします。

これらの認識された脅威は、過去の経験や将来起こりうる「もしも」のシナリオから来ることが多いです。

特に、「もしも」は通常、否定的な結果を想定してしまいがちです。

これは多くの感情を呼び起こし、そのために私たちはこれらの考えに固執し続けるのです。

過剰に思考することは誰にでも起こりますが、特に過去に大きな失敗やトラウマを経験した人、深く考えてしまう人、不安や気分が落ち込む傾向がある人、感情的になりやすい人は、より反芻しやすい傾向にあります。

そして、私たちがストレスを感じると、感情は大きく揺り動かされ、思考はいつもより不正確になりがちです。

体調が優れないときも、同様に思考は扱いにくくなります。

ストレスが溜まり、疲れた脳は過剰に思考しやすくなりますが、健康的な食生活、良質の睡眠、適度な運動、楽しい活動への参加、大切な人との交流を通じてストレスレベルを管理すること。

私たちがこれまでに直面した挑戦を乗り越えてきたように、未来の挑戦にも対処できる力が私たちにはあります。

そして、必要のない心配から手を放すことです。

 

 

道しるべとなる感染症専門医

 

初期研修医の頃には、感染症グループの先生に怒られまいと、発熱した患者さんの詳細な病歴、身体所見、喀痰や尿などの検体の塗抹検査、培養を準備してプレゼンをし、抗生剤を決めてもらったものでした。

根拠ない抗生剤の選択ほど、怒られたことはなかったのです。(実際、今でも当時を思い出すとトラウマ級です。)

そうやって、感染症と戦うための「武器」をどのように、いつ、どれだけ使えば良いのかを学んだのでした。

感染症専門医の存在は、正しい抗菌薬の選択を行うための、重要な指導者であり監視者でした。

最近の研究により、抗菌薬管理(Antimicrobial Stewardship、以下AS)教育が、まさにそのような状況での感染症専門医の役割を浮き彫りにしています。

この研究は、日本全国の研修医を対象に、感染症専門医の教育が彼らの抗菌薬に関する知識や態度にどのような影響を与えるかを調べたものです。

調査結果は興味深いものでした。

教育を受けた研修医は、抗菌薬の潜在的な害を理解し、無症候性細菌尿症に対して抗菌薬をいつ使用すべきか、クロストリジウム・ディフィシル感染症をいつ疑うべきか、また、ASとは何かを説明する能力が、教育を受けていない研修医に比べて有意に高かったのです。

さらに、感染症専門医による教育が、特に患者ケアを通じて行われた場合、研修医の抗菌薬に対する認識と態度を改善することが示されました。

これは、感染症専門医が、同僚医師の抗菌薬処方行動に、間接的にも直接的にも肯定的な影響を与えることを示しています。

この研究の背景には、抗菌薬の使用に関する知識や準備不足がある研修医が多いという現状があります。

感染症専門医は、これらの研修医に対する教育を行う重要な役割を持っていますが、その貢献に関するデータはこれまで限られていました。

今回の研究は、そのギャップを埋めるものです。

この研究から得られた教訓は、感染症専門医が教育者として持つ価値の重要性を強調しています。

彼らは、知識と技術の橋渡しをするだけでなく、研修医たちが適切な判断を下すための道しるべとなり、医療の質を高めるために不可欠な役割を果たしています。

今回の研究は、抗菌薬の適切な使用についての教育という、感染症専門医の貢献を明らかにしました。

医療の現場では、このような教育が今後も続けられることが望まれるものです。

この研究が、徳田安春先生からの発信であることも納得です。

 

元論文:

Miwa T, Okamoto K, Nishizaki Y, Tokuda Y. Infectious Disease Physician Availability and Postgraduate Antimicrobial Stewardship Education in Japan. JAMA Netw Open. 2024;7(3):e244781. Published 2024 Mar 4. doi:10.1001/jamanetworkopen.2024.4781

 

 

節酒したら健康を取り戻せるのか

 

先人たちの「酒は飲むもの飲まるるな」とのありがたい言葉が示すように、いくつになってもお酒の適量というものが難しい。

多くの人々が、日々の多忙をねぎらうために、リラックスする手段としてアルコールを口にします。

一杯のビールなどは、一日の終わりに心地よい安らぎを与えてくれるかもしれません。

しかし、アルコール消費の習慣には、心と体に対する長期的な影響が伴います。

特に、「適量でない」飲酒習慣は、心血管疾患などの深刻なリスクを高めることが知られています。

毎年、健診のたびに、保健師さんから「節酒しましょう。休肝日をつくりましょう。」と耳が痛くなるほど諭されている方も多いと思います。

今回、紹介する研究は、「お酒を控えろというけれど、今さら減らして良いことあるの?」という疑問に答えるものです。

つまり、心を入れ替えてお酒を減らした人は、果たして健康を取り戻せるのか?というテーマです。

この研究は、アルコール大量消費の習慣をもつ21,011人を追跡し、アルコール量を減らした後に、主要な心血管イベント(MACE)に対してどう影響するかを調査しました。

ここで言う主要な心血管イベントとは、心筋梗塞や狭心症、入院を伴う脳卒中、そしてあらゆる死亡を指します。

研究者たちは、2005年から2008年の間に最初の健康診断を受け、その後2009年から2012年にかけて2度目の健康診断を受けた人々のデータを用いました。

そして、2回目の健康診断期間中のアルコール消費量の変化に基づいて、参加者を継続的に重度の飲酒を続けるグループと、飲酒量を減らしたグループに分けました。

結果は、飲酒量を減らしたグループでは、継続して重度の飲酒を続けるグループに比べて、主要な心血管イベントの発生率が有意に低いことが示されました。

この発見は、様々なサブグループの参加者においても一貫して観察され、アルコール摂取量を減らすことの心血管疾患予防における可能性を示されました。

この研究の重要性は、医療関係者だけに限ったものではありません。

しかし、研究には限界もあります。

アルコール摂取量は参加者自身の報告に基づいていて、個々人のアルコール代謝の違いや死因の詳細など、不足している情報もあります。

しかし、それでも、はっきりしているのは、保健指導の時に言われたのは、やっぱり正しかったということですね。

この研究から得られる教訓は、健康的なライフスタイルを追求する上で、アルコール摂取は慎重に管理する必要があるということです。

そして、多くの場合と同じように「取り組みが今からでも、遅いということはない」ということですね。

 

元論文:

Kang DO, Lee DI, Roh SY, et al. Reduced Alcohol Consumption and Major Adverse Cardiovascular Events Among Individuals With Previously High Alcohol Consumption. JAMA Netw Open. 2024;7(3):e244013. Published 2024 Mar 4. doi:10.1001/jamanetworkopen.2024.4013

 

 

筋トレは落ち込んだ心にも効く

 

「人生の99.9%の問題は、筋トレで解決できる!」と言ってのけるTestosteroneさんのような方は、今回紹介する論文などについては「わが意を得たり!」と膝を叩くところでしょうね。

 

私たちの心と体は、予想以上に密接に繋がっているものです。

そして、この連携は、健康を維持するため、特に精神的な健康にとって重要な役割を果たします。

運動が心の健康に良い影響を与えることは以前から知られていましたが、この研究は、「筋トレが抗うつ効果を持つ」という事実を明らかにしました。

研究者は、複数のオンラインデータベースを通じて広範囲にわたる検索を行いました。

最終的には38の研究が選ばれ、これらの研究には2439人の参加者が含まれていました。

筋トレに取り組んだ参加者は、非活動的な対照群に比べて、うつ症状の有意な改善を示しました。

ここで注目すべきは、トレーニングの具体的な方法です。

当然といえば当然なのですが、筋トレを行う際には、「どのように」行うかが非常に重要ということです。

例えば、週に3回以上の筋トレを行うこと、3セット以上のエクササイズを行うことが、1回や2回、あるいは1セットや2セットのトレーニングよりも、より強い抗うつ効果を生み出しました。

また、この研究では筋トレ単独と他の運動形態、例えば有酸素運動との組み合わせによる抗うつ効果の違いも探求されました。

筋トレ単独でも有意な効果が見られましたが、他の運動と組み合わせた場合、結果に有意な差は見られませんでした。

心身の健康を支えるためのアプローチはさまざまですし、筋トレはその中の一つとして、特にうつ病の補完的治療法としての可能性を秘めています。

身体を動かすことの精神的なポジティブな影響は、私たちが日々の生活の中で実践しやすく、そして効果的な方法の一つといえますね。

この研究が示す通り、筋トレにはただ筋肉を鍛える以上の価値があるようです。

日常生活において、心と体の健康を同時にケアすることの重要性を、再認識させてくれる話題とも言えます。

ちょっとスクワットしてみたくなりました(笑)。

 

元論文:

Rossi FE, Dos Santos GG, Rossi PAQ, Stubbs B, Barreto Schuch F, Neves LM. Strength training has antidepressant effects in people with depression or depressive symptoms but no other severe diseases: A systematic review with meta-analysis. Psychiatry Res. 2024;334:115805. doi:10.1016/j.psychres.2024.115805

 

 

3時間以上のゲームは身体をいためる?

 

今回は長時間のビデオゲームが「身体」に悪影響を及ぼす可能性についての論文です。

この研究によると、1度のプレイ時間が「3時間」を超えると、身体にダメージを与えるのだそうです。

これまでのビデオゲームに関する研究は、「身体面」ではなく、依存症などの「心理面」や「精神面」の問題をとりあげるものがほとんどでした。

WHOが「ゲーム障害」を、国際疾病分類(ICD-11)に含めたことが、最も象徴的ですね。

しかし、この「ゲームしすぎ!」への「身体的」影響は、ほとんど見過ごされてきました。

2022年の国際ゲーミング研究の一環として実施されたこの多施設横断研究は、オーストラリア、カナダ、アメリカ、英国の4か国から955人の参加者を対象としました。

参加者の性別も偏りなく、18歳から94歳までの幅広い年齢層をカバーしました。(94歳!)

参加者からゲーム習慣と、身体的症状を報告してもらいました。

まず、研究者は、心理面としてゲーム障害の程度を、インターネットゲーミング障害テスト-10(IGDT-10)というツールで評価しました。

さらに、プロ・ゲーマー志願者を抽出して、ゲームへの取り組みの真剣度と身体的な影響の相関についても調べました。

参加者の大部分(80%)は毎日ゲームをプレイしており、かなりの割合が週に1回または毎日長時間のゲームに没頭していました。

特に、週に1回3時間以上のプレイヤーは27.5%いて、全プレイヤーの16.2%は毎日3時間以上ゲームしていました。

それを上回る週に1回6時間以上のプレイヤーは19.2%、毎日やっている猛者連は9%いました。

さらに、過去1年間でインターネットゲーミング障害と診断された参加者は17.9%、プロ・ゲーマーを志願している参加者は21.7%でした。

そこで、参加者のほとんどが、ゲームに直接起因するとされる身体的問題を報告していました。

目の疲れ46.1%、手や手首の痛み45.4%、背中や首の痛みは52.1%でした。

これらの問題は、特定の年齢層や性別に限定されていませんでした。

そして、長時間のゲームの頻度と身体的症状との間には、相関関係がありました。

具体的には、ゲームを3時間以上続けると、身体的な問題が表出してきました。

プロ・ゲーマー志願者の身体的問題は、高い傾向を示していましたが、これは統計的に有意な閾値に達しませんでした。

しかし、「ゲーム障害」の基準を満たす人々については、身体的問題を多く抱えていることがわかりました。

しかし、研究には限界があり、定期的にゲームをする人々にのみ焦点を当てたため、よりカジュアルなプレイヤーに適用されるかどうかはわかりません。

また、仕事上、長時間コンピュータを使用する人々など、他の活動がビデオゲームプレイと身体的害との関係にどのように影響するかもわかっていません。

私も、ティアキンなどをしますが、ビデオゲームは、ほとんどの人にとって楽しく、豊かな体験です。

ビデオゲームのポジティブな側面とネガティブな側面を理解することは、「正しく楽しむ」ために必要なことなのだと思います。

 

元論文:

Pehlivanturk Kizilkan M, Akgul S, Kanbur N, Gungoren O, Derman O. Problematic video gaming is negatively associated with bone mineral density in adolescents. Eur J Pediatr. 2024 Mar;183(3):1455-1467. doi: 10.1007/s00431-023-05399-x. Epub 2024 Jan 2. PMID: 38165466.

 

 

フィトケミカルと偏頭痛

 

「フィトケミカル」という言葉を、実は初めて知りました。

Google先生によれば、フィトケミカルというのは、植物が紫外線や昆虫などから身を守るために作り出した色素や香り、辛味、ネバネバなどの成分を指すのだそうです。

人にとっては栄養素というわけではないのですが、健康に影響を与えることがわかってきたのだそうです。

実は、第7の栄養素や植物栄養素とも言われています。

フィトケミカルというとなんだか目新しい感じがしますが、具体的にその名前を並べてみると、耳慣れたものばかりなので、「へえ」という感じです。

例えば、お茶の渋味成分であり、抗酸化作用がある「カテキン」

トマトの赤い色素成分で、これまた抗酸化作用があるとされる「リコピン」

ブルーベリーなどの青い色素成分の「アントシアニン」

唐辛子の「カプサイシン」

わざわざ「フィトケミカル」などと言わずに、最初からそう言えば伝わるのに、と思ってしまいました。

さて、今回紹介する論文は、食事に含まれるフィトケミカルが偏頭痛とどう関わるのかというテーマです。

それに答えるために、イランの研究チームが非肥満成人の偏頭痛患者を対象に調査を行いました。

彼らは、参加者の食事からフィトケミカル指数(DPI)を算出し、偏頭痛の臨床的特性や心理的状態との関連性を調べました。

DPIとは、フィトケミカルを豊富に含む食品から得られるエネルギーの割合を表す数値です。

結果は、DPIが高い、つまりフィトケミカルを多く含む食事をしている患者は、偏頭痛の頻度が低く、偏頭痛による障害も少ないことが判明しました。

これは食生活が直接的に偏頭痛の頻度や重症度に影響を及ぼす可能性を示しています。

しかし、DPIと心理的状態(抑うつ、不安、ストレス)との間には関連性が見られませんでした。

これは、フィトケミカルが直接的に心理的な健康に作用するわけではなく、その効果は偏頭痛の物理的な側面に限定される可能性を示しています。

研究は262名の参加者を対象に行われ、そのうちの大部分が女性でした。

この性差は偏頭痛が女性により一般的であることを反映しているかもしれません。

参加者たちは食生活に関する詳細な質問に答え、偏頭痛の頻度や重症度、心理的状態を評価するための質問票を提出しました。

フィトケミカルが豊富な食事が偏頭痛に与える影響についての知見は、まさに「食事が薬になる」という古い言葉を現代の科学で証明しているかのようです。

ただし、この研究はあくまで観察研究であり、因果関係を確立するものではありません。

つまり、フィトケミカルが豊富な食事が直接的に偏頭痛を減少させると断言するには、さらなる研究が必要であるということです。

フィトケミカルを多く含む食品とは、主に果物、野菜、全粒穀物、ナッツ、種子など、自然が提供する栄養豊富な食品群を指します。

これらの食品を日々の食事に取り入れることは、偏頭痛の予防や管理だけでなく、全体的な健康維持にも良い影響をもたらすでしょう。

食事と健康の関係については、以前から多くの研究が行われていますが、フィトケミカルと偏頭痛との関係を明らかにしたこの研究は、特に注目に値します。

食生活を見直すことで、私たちはより健康的な生活を送ることができるかもしれません。

 

元論文:

Amani Tirani, S., Balali, A., Kazemi, M. et al. The predictive role of the dietary phytochemical index in relation to the clinical and psychological traits of migraine headaches. Sci Rep 14, 6886 (2024). https://doi.org/10.1038/s41598-024-57536-7

 

 

「LISTEN ― 知性豊かで創造力がある人になれる」

「人の話を聞くこと」は、現代ではより軽視されてきているように思います。

スマートフォンやSNSの普及により、私たちはいつでもどこでも情報にアクセスできるようになりました。

しかし、この進歩がもたらす副作用の一つに、対面での会話の機会が減少しているという事実があります。

私たちは知らず知らずのうちに、大切な人間関係を築くための基礎、すなわち「人の話を聞く」という行為から遠ざかっているのかもしれません。

過去100年で、私たちが他人の話を聞く時間はほぼ半減しているという研究結果が出ています。

これは少し考えてみれば、驚くべきことではありません。

たとえば、食事中や待ち合わせの際に、手元のスマホをチェックすることは珍しくありません。

目の前に人がいても、画面に映る情報に夢中になり、その人の話を聞くことをおろそかにしてしまいます。

しかし、こうした習慣が人との繋がりを希薄にし、孤独感を増大させていることに、私たちは十分に気づいているでしょうか。

人間関係の破壊原因の一つとして、「相手の話を聞かないこと」が挙げられます。

誰しもが経験があるかもしれませんが、話をしている最中に相手がスマホをいじり始めたり、会話を遮ったりすると、自分が価値のない存在であるかのように感じ、深く傷つくものです。

こうした行為は、無言のうちに「あなたの話は興味がない」というメッセージを相手に送ってしまいます。

人は誰しもが認められ、理解されたいという願望を持っています。

だからこそ、相手の話を真剣に聞くことは、信頼関係を築く上で非常に重要なのです。

また、他人の話を聞くことには、自分の視野を広げるという大きなメリットもあります。

異なるバックグラウンドを持つ人々の話を聞くことで、自分だけでは決して見出せないアイデアに触れたり、新たな価値観に出会うことができます。

例えば、Googleが行った調査では、メンバー間で活発に意見が交わされるチームの方が生産性が高いことが明らかにされました。

これは、多様な視点がプロジェクトに対する深い洞察や革新的なアイデアをもたらすからです。

では、どのようにして人の話を上手に聞けるようになるでしょうか。

最初の一歩は、対話の時にはスマホを置くことです。

話をしている相手に対して、完全に集中することが大切です。

そして、相手の言葉に耳を傾ける際は、自分の経験や予測を一旦脇に置き、フラットな姿勢で臨むことが重要です。

相手の話を、事前の偏見や先入観なしに聞くことで、新たな発見や理解が深まることがあります。

人はそれぞれ異なる背景や経験を持っているため、自分とは違う視点や考え方を持っていることを受け入れ、それに対する好奇心を持つことが、有意義な対話へとつながります。

また、相手の話を聞く際には、アドバイスを急ぐことなく、まずはその人の感情や言いたいことを理解しようとする姿勢が大切です。

多くの場合、人は解決策を求めているのではなく、単に自分の話を聞いてもらい、理解されたいと願っています。

そのため、相手が完全に話し終えるまで待ち、必要であれば質問をして深く理解しようと努めることが、良いリスナーになるための鍵です。

しかし、すべての人の話を聞くことがいつも良いとは限りません。

時には、自分の気分を害したり、不快にさせる話もあります。

このような場合、無理に耳を傾け続ける必要はありません。

大切なのは、自分自身の精神的な健康を守りつつ、建設的な対話を選ぶことです。

つまり、自分にとって有益であり、ポジティブな影響を与える会話を選ぶことが重要です。

人の話を聞くことは、相互理解と信頼関係を築くための基本であり、自分自身の成長にもつながる行為です。

他人の話を聞くことで得られる洞察や新たな視点は、私たち自身をより豊かにし、より広い世界へと導いてくれます。

だからこそ、日々の生活の中で、人の話を心から聞く時間を大切にしたいと思うのです。

 

「ポンコツなわたしで、生きていく。」

 

 

「ポンコツなわたしで生きていく」=「コンプレックスのトリセツ」と言っていいかも知れません。

自分の「ポンコツ」な部分に悩まされ、不得意に直面し、心を重く感じた経験は誰にでもあるものです。

そのような自分を受け入れ、ゆったりとした気持ちで生きる方法についてのヒントが提示されています。

まず、出発点は、自分のポンコツな部分を直視し、それを受け入れることから。

朝が苦手、人との会話が緊張する、細かい作業が続かないなど、これらはすべて自分を構成する一部です。

これらを短所と捉えるのではなく、自分の特性として受け止めることが重要です。

そして、自分が活躍できる環境を見つけること。

例えば、朝が苦手なら夜型の仕事を探し、人と話すことが苦手なら、メールやチャットが主なコミュニケーション手段の職場を選んでみる。

自分の特性に合った環境であれば、ポンコツであっても充実した日々を送ることができます。

また、自分を取り巻く「人・時間・場所」の三要素を見直すことも重要です。

周りが自分に合わない人ばかりではないでしょうか。

そう感じたら、新しいコミュニティに足を踏み入れてみるのも一つの方法です。

自分に合った人々との交流は、ポジティブな影響をもたらします。

ポンコツであることを受け入れた上で、どうしてもできないことがあれば、助けを求める勇気も必要です。

自分一人で全てを抱え込むのではなく、得意な人に協力を仰ぐことで、仕事もプライベートもよりスムーズに進むでしょう。

そして、続けることの大切さ。

完璧を求めずに、まずは続けることに集中すること。

完璧主義を捨て、60点の出来でも良いので、日々の取り組みを継続することが、自分自身を成長させることになります。

この社会には、多種多様な人がいます。

ポンコツだと感じている自分も、その一員です。

自分の特性を活かし、自分に合った環境で生きることが、実は一番の幸せかもしれません。

さて、自分のポンコツを活かす生き方を模索する過程で、もう一つ重要なのが、新しいことにチャレンジする勇気です。

自分に合った環境や仕事を見つけるためには、まずは多くのことに触れ、知ることから始めます。

新しい情報を得ることで、自分の中に眠っていた可能性が目覚めるかもしれません。

自分の強みを見つけるためには、苦手なこと、嫌いなことから逃げるだけでなく、それらを避けながらも、自分にとって何が「楽しい」か、「心地良い」かを模索することが大切です。

これは、自分自身を深く知る旅でもあります。

この過程で、自分だけの価値観や、生きがいを見つけることができれば、日々の生活がより豊かなものになります。

そして、何よりも大切なのは、自分を責めないことです。

ポンコツであることは、決して悪いことではありません。

それは単に、自分という存在が独特である証拠なのです。

自分の特性を受け入れ、それを活かすことで、誰もが自分らしい幸せを見つけ出すことができます。

自分のポンコツを愛おしむことができるようになること。

それが、ポンコツな私たちが見つけた、生きる上での真実といえます。

 

 

弾よりも速く!高いビルもひとっ飛び!

エリートスポーツの世界では、ごくわずかな差が勝利と敗北を分けます。

選手はもちろんですが、コーチやトレーナーも、厳しい競争の世界で、有効なコーチングとは何かということを毎日探求しているのだと思います。

その結果、トレーニング方法も日々進歩していきます。

今日紹介する論文は、一周回って元に戻ってきたような感じもしないではないのですが(笑)。

それは「言葉の力」です。

最近、トッテナム・ホットスパーのアカデミーで行われた実験では、選手たちが自分自身を「ジェット機が離陸するかのように」あるいは「フェラーリのように加速する」と想像するだけで、スプリントの速度が平均3%向上することが明らかにされました。

この現象を探求したエセックス大学の研究者たちは、「アスリートに対して言葉を使うことは、彼らのパフォーマンスに即座にかつ明確に影響を与える」と述べています。

つまり、選手の注意を自身の体から外の環境へと向けることで、動作の流れをスムーズにし、パフォーマンスを向上させることができるというのです。

この実験には、トッテナム・ホットスパーのアカデミーに所属する14歳から15歳の若手選手20人が参加しました。

最も効果的だったのは、「空に向かって離陸するジェット機のようにスプリントする」という動機づけでした。

特に、技術的な言語を把握するのが難しい若いアスリートにとっては、彼らの注意力を高め、技術の理解を助ける貴重な手段となります。

この方法の魅力は、エリートスポーツに限定されるものではありません。

学校の体育授業や土曜日の朝のスポーツクラブなど、あらゆるレベルでのスポーツ活動に応用することが可能です。

教師や親が子供たちにスポーツを教える際にも、彼らの想像力を刺激することで、より高い成果を期待することができるでしょう。

これからは、選手たちに対して「もっと速く!」と言う代わりに、「あなたはバイクのように加速する!」と伝える方が効果的だということです。

もしかしたら、かつてのヒーローのキャッチコピーだった「弾よりも速く、力は機関車よりも強く、高いビルをひとっ飛び!」が、当時の若いアスリートたちのレベルを、知らない間にあげていたかも知れませんね。

 

元論文:

Moran J, Allen M, Butson J, et al. How effective are external cues and analogies in enhancing sprint and jump performance in academy soccer players?. J Sports Sci. Published online February 1, 2024. doi:10.1080/02640414.2024.2309814