コーピング・レパートリー

洗足ストレスコーピング・サポートオフィス主催のワークショップに参加した時に

講師の伊藤絵美先生の言葉で印象的だったのは

「コーピング」というのは、「ストレスに対する意図的な対処である」ということでした。

 

「意図的」であるかどうかが非常に大切なポイントだとのことです。

言い換えれば、無意識な行動はコーピングにはならないということです。

 

例えば、ため息。

「ふうっ」と無意識に出てしまうため息は、ただのため息。

意図的に深呼吸の続きみたいに、「ふうっ」とするなら(それがストレスへの対処であるならば)

立派なコーピングになるらしいです。

 

コーピングの対象になるのが

「頭の中にある考えやイメージ」(認知)と

「動作や振る舞い」(行動)で

自分の力で直接コントロールできない「環境」や

「気分・感情」「身体反応」は

コーピングの対象にはならないということです。

 

「怖い」「嫌い」「悲しい」「さびしい」などの「気分・感情」は自分ではどうにもならないですものね。

 

ストレスに対応するコーピングをたくさん持っている人は、健康度が高いということです。

コーピングのリストをとにかくたくさん作っておいて、調子の悪いときにせっせと使うことが大切です。

 

ひとつのコーピングが効果ないなと思ったら、ほかのコーピングを試すのがコツらしいです。

 

例えば、以前に効果的だった「ビールを1杯飲むこと」のコーピングが、今回は効かなかったら

「ビールを飲むこと」を何杯繰り返しても効かないのは当然。

人は効果がなければ、「まだ足りない」と思ってしまいがちですが

ほかのコーピングを試すのが健康的なんですね。

(でないと立派なアルコール依存になってしまいます。)

 

だから、コーピングのリストをたくさん持っている人が良いのです。

 

佐久田のコーピングは、本を読んだり、facebookで「いいね」を押したり

たき火を見つめることだったり(焼肉屋の炭火でも代用可)、瞑想だったり

ちょっと贅沢なコーヒーを飲むことだったりしてましたが

 

最近はまっているコーピングがあります。

 

実は万年筆で、ゆっくりと字を書くことです。

まど・みちおさんの詩などを書写するとなお良いです。

pen

不思議ですが、ゆっくり書けば書くほど、気持ちが落ち着きます。

 

 

 

「安全対策の落とし穴」 講演会より

 

2013年2月9日には第8回沖縄県透析医会学術講演会がありました。

 

電気通信大学 大学院情報システム学研究科教授の田中健次先生をお招きして

「安全対策の落とし穴~思い込み『~のはず』に潜む罠~」

という特別講演でした。

 

現場では、安全対策としてダブルチェック、あるいはトリプルチェックまでおこなっている医療機関もあると聞きます。

田中先生の疑問の出発点はシンプルで非常に大切な視点から出発していました。

 

「多重チェックは大丈夫か」

 

実験のきっかけは患者誤認の事故だったということですが

「二重、三重の防護の穴をすり抜けた理由」についての考察は非常に興味深いものでした。

 

講演は以下の4点についての「思い込み」を覆す形で進行していきました。

 

(1)    多重チェックでは多重度が増すほどエラー検出率は上がる

(2)    チェックリストで作業は確実になる

(3)    安全・警報装置の設置で安全性は向上する

(4)    高信頼度のモノを組み合わせれば高い信頼性が得られる

 

特に(1)の多重チェックについてのグラフが衝撃的でした。

いろいろ学んだことは多かったのですが、今回は(1)についてご紹介します。

 

 

掲載するには著作権などの問題があるでしょうから、グラフのあるサイトを紹介しておきますね。

『 医療安全推進者ネットワーク スペシャリストに聞く』

 

封筒の宛名書きの間違いを探す確認作業の実験です。

間仕切りのある机に横一列に並び、封筒に印刷された宛名などを順に確認する作業です。

封筒には事前に印刷ミスのあるものを混ぜておいたそうです。

確認作業は、あらかじめ配布されている住所録と照らし合わせて、正しいかどうかをチェックするものでした。

 

それぞれ、1人での作業、2人の作業、3人、4人、5人の作業で、間違いを見つけた率を調べたものです。

 

『住所』の項目の間違いの検出率は

1人で確認すると65%

2人で確認すると80%

3人で確認すると65%

4人で確認すると55%

5人で確認すると60%

 

数字が大きければ大きいほど、間違いを見つけられたということなのですが

 

これを見てわかるように、3人以上になると、1人の場合の検出力よりも落ちてしまっていました。

かえって逆効果になっているのです。

 

田中先生は

「多重にチェックしたのに、誤りに気づかない」ではなく、むしろ

「多重にチェックしたからこそ、誤りに気づかない」と言い換えた方が真実なのではないかとおっしゃっていました。

 

人はどうも人数が多くなると、あるいは頼る相手がいると、どうしても「手抜き」をしてしまう性質をもっているようです。

 

別の実験では、逆方向でのチェックを実験していました。

リストから薬品を確認する作業と、逆に薬品からリストを確認するという作業です。

逆方向のチェックを行うことで、時間はかかりますが、検出率は向上していました。

 

同じチェックを重ねて、回数を増やすよりも、違う方法で視点を増やすことの方がより効果的だったわけです。

質の異なる多重化をはかるべきだということでした。

 

 

最後に

「見た目で判断『~のはず』は危ない=『私は大丈夫!』はもっと危ない」

とまとめていただきました。

 lecture

安全対策の「思い込み」に新たな視点をもらった素晴らしい講演だったと思います。

 

これをどうやって実際に自分たちの現場で活用するかということが重要ですね。

 

 

 

 

数字の遊び

 

ネットを見ていたら、面白いお話がありました。

 

数字の好きな方にはたまらないお話かも知れません。

 

東工大のネタとしてあがっていました。

教授    「それでは2013年最初の講義を行います」

東工大生 「(素数じゃねえのか…)」

教授    「さて今年は1987年以来となる『4桁全部がバラバラ』の年としてですね…」

東工大生 「うおおぉぉぉぉ!!!」

教授       「しかも2019年まで続きます」

2013年

 

野暮を承知で説明を重ねると、つまり、こういうことです。

1987年

1988年  8が2つ

1989年  9が2つ

1990年代 9が2つ以上

2000年代 0が2つ以上

2010年  0が2つ

2011年  1が2つ

2012年  2が2つ

2013年

そして、これが2019年まで続いています。

 

2013年は「0123」の数がそろう年としてスタートの年として良いかも知れませんね。

単なる数字の遊びと言えばそうです。

「うおおぉぉぉぉ!!!」とまではいきませんが、私も心が動く方です。

 

そう言えば、つい先日、史上最大の素数がアメリカの学者によって発見されたというニュースもありました。

 

アンパンマンの絵

診察室の壁に「アンパンマン」の絵が飾ってあります。

 anpanmanfar

これは大学の先輩、まちだ小児科の町田孝先生から開院祝いの時にいただいたものです。

「小児科でないのにどうかと思ったんだけど…。」

という町田先生のお心づかいもうれしく、これは絶対に日ごろの診療の場に飾らせていただきたいと思いました。

 

私は原作者のやなせ・たかし先生の大ファンで

青春時代、月刊誌の「詩とメルヘン」は許す限り手元においていました。

 

「詩とメルヘン」は「オーディション・システム・マガジン」と銘打たれて、特集のページのほかに、詩やイラストの投稿作品を載せていました。

それに憧れて私も真似ごとの詩を書いてみたり、イラストを描いてみたり。

白状すれば、少しだけ投稿するつもりもあったのですが、すぐに無謀だと思って断念しました。

 

「詩とメルヘン」ゆかりのイラストレーターを、ざっと思いつくだけ並べても

宇野亜喜良

葉祥明

小谷智子

味戸ケイコ

東逸子

おおた 慶文

etc…。

 

この顔ぶれを見るだけでも、やなせ編集長の偉業がわかります。

そうです。もちろん、やなせ・たかし先生ご自身もそうです。

 

そういえばもう過ぎてしまいましたが、2月6日はやなせ先生の誕生日でした。

今年で94歳になられたのでしょうか。

素晴らしいことです。

おめでとうございます。

 

やなせ・たかし先生の言葉が胸に響きます。

 

「自分はまったく傷つかないままで、正義を行うことは非常に難しい」

 

これはよく耳にする言葉です。

アンパンマンが自分の顔の一部をちぎって困っている人に与えるという行為について話す機会が多いからでしょうか。

そして、こう続きます。

 

「アンパンマンは“世界最弱”のヒーロー。
ちょっと汚れたり、雨にぬれただけでも、ジャムおじさんに助けを求める。
でも、いざというときには、自分の顔をちぎって食べてもらう。
そして戦います。
それは私たちも同じ。みんな弱いけれど、そうせずにはいられないときもあるのです。」

 

そして、

「なんのために生まれて何をして生きるのか。
これはアンパンマンのテーマソングであり、ぼくの人生のテーマソングです。」

 anpanmanup

「アンパンマンマーチ」を口ずさんでいると、不覚にも、ふいに涙が流れることがあります。

まさしく、人生の応援歌ですよね。

メロディがなくても、詩を読むだけで励まされます。

 

 

 

 

 

「赤ひげ」

恥ずかしい限りですが、黒澤明監督の「赤ひげ」を初めて観たのは3年前の2010年のことでした。

 

それまで観たことがなく、もちろん知識だけはありましたから

山本周五郎の「赤ひげ診療譚」を原作にしているとか

小石川養生所を舞台にしているのだとか

ブラックジャックと同じように(あるいはスーパードクターKと同じように?)

赤ひげに憧れて医者を志すようになった人が多かったとか

そういう情報だけが私の頭の中で一人歩きしていました。

 

2010年のある日、本屋でDVD Bookを見つけて購入したのが、初めて触れるきっかけでした。

観ているうちに、今まで経験した診療のこと、さまざまな出会いの数々が頭に浮かび

感動しながら「医師の姿」を再確認していました。

これを知らずして医師を続けていたことが、申し訳ないような思いがしました。

 

赤ひげは見習いの青年医師、保本に言います。

「この子は体も病んでいるが、心はもっとやられている。

 保本、この子はお前の最初の患者だ。ちゃんと治してみろ」

最下層の生活で病いを持った人々と、それに対峙する医師。

支えあい励ましあいながら、立ち上がってともに歩み続ける人々の姿。

 

ラストシーンが本当にさわやかです。

内祝言の席で幕府への出仕を断り「小石川養生所に残る」意思を表明した保本と

養生所へと続く坂を歩くシーンです。

 

赤ひげ 「お前はわしを怒鳴らせたいのか」

保本  「怒鳴ってもかまいません。力づくでも私は養生所に残ります。」

赤ひげ 「誰が許した。」

保本  「先生です。先生は私に医者はどうあるべきかを教えてくださいました。

     だから私はその道を行きます。」

赤ひげ 「ふん。わしをそんなにかいかぶるなんて。

     お前は少しどうかしておる。
 
     お前はもう忘れたのか。北町奉行のこと。松平壱岐のこと。それから和泉屋のことを。

     わしはああいう下劣なことをする奴だぞ。」

保本  「私は先生のああいうところが好きです。」

赤ひげ 「お前は馬鹿だ。」

保本  「先生のおかげです。」

赤ひげ 「若気でそういうことを言っているが、後悔するぞ。」

保本  「お許しが出たんですね。」

赤ひげ 「もう一度言う。お前は後悔するぞ。」

保本  「試してみましょう。 ありがとうございました。」

赤ひげ 「ふんっ。」

 

もちろん簡単な道ではないけれども、そこにはやりがいのある道がある。

赤ひげについていく保本の歩く後姿は、とても喜びに溢れているものでした。

 

 

 

「自立」と「多くの人に頼ること」

短い言葉ですが、インパクトのある言葉を紹介します。

 

「自立とは、依存のことであり、より多くの人に依存することである。」

 

と言ってのけた方がいます。(「生きる技法」安冨歩著)

 

言葉のもつ意味を理解できずに素通りさせてしまう人、あるいは自分の思い込みが打ち砕かれた人

受け止め方はさまざまでしょうね。

 

自立と依存。

「依存」はどうしても「自立」とはかけはなれた言葉ですし

人の力に頼らないことが「自立」で

言い換えれば

一人で生きていくことができるということが「自立」というイメージがあります。

 

また医療者にとっては「依存」というのは「アルコール依存症」や「ギャンブル依存症」

「精神依存」や「身体依存」、また「共依存」など

精神的・身体的に深い問題を抱えているような状態を指しますから

「自立は依存すること」と言われても、納得することはできません。

 

私は「患者学のすすめ」加藤眞三さんのヒントで、少し合点がいきました。

前の文の「依存」の言葉を「他人に頼ること」に替えてみるのです。

 

「自立とは、他人に頼ることであり、より多くの人に頼ることにより得られる。」

 

この場合「より多くの人」という言葉が重要です。

 

そうすると、このときの「自立」という言葉の意味あいが少し違ってくるように思います。

 

より「自分に向き合う」ことに重きを置くことになります。

自分に向き合えば、自分が足りないこと、自分が援助して欲しいことがはっきりと認識されます。

そのときに素直に「これが欲しいのです。」「こうしてもらえませんか」と言える人は

きっと生きる力がある人でしょう。

恐らく社会で生きていくというのはそういうことのような気がします。

幅広く、多くの人に言える人ほど、生きる力が豊かであると思いませんか?

その生きる力こそが「自立」だと思います。

 

何でも一人でやってやろう、一人で生きようと自立を目指しながら

結果的に小さな社会(人間関係)に従属してしまえば

その小さな社会が全てになってしまって、典型的には一対一の依存関係に陥ってしまいます。

それでは、当事者である双方お互いが不幸な状況です。

 

実は、この関係は医療者が時に経験することなのです。

自立した患者さんというのは、一人で生きていこうとするような孤高な方ではありません。

家族をはじめ、友人、同僚、社会に囲まれて援助者をたくさん持っていらっしゃる方です。

 

私たち医療者は、患者さんがより多くの人に頼ることができるように導く

そう意識する姿勢が大切になってくると思います。

 

「自立とは、より多くの人に頼ることにより得られる。」

 

多くの人が支えあって、その人の自立を助ける。

決して特定の人と一対一にさせない。

少し考えてみたいテーマです。

 

 

肥満にまつわる7つの神話と6つの俗説

興味深い報告で、すでにいくつかのサイトで報告されているので目にしている方も多いかも知れません。

それらのサイトに誘導するだけでも良いのかも知れませんが

自分なりの反省もありますので、紹介したいと思います。

 

タイトルは「肥満に関する神話と俗説、事実」です。

Myths, Presumptions, and Facts about Obesity
Krista Casazza, et. al
N 、Engl J Med 2013; 368:446-454January 31, 2013DOI: 10.1056/NEJMsa1208051

 

肥満に関して信じられていることの多くは、科学的な証拠がない「俗説」として広まっています。

なかにはどう考えても矛盾する証拠を突きつけられても「神話」として信じられています。

根拠がないことへの信念は、政策決定や公衆衛生に関する勧告、研究資源が誤る原因となって、結果的に社会に悪い影響をもたらすことになります。

本来の正しい情報が浸透しない可能性があるのです。

メディアに流れている情報と、科学的な文献を検索して、肥満に関する神話と俗説を調査しました。

また、十分な証拠があり、確定されている「事実」についても、実用的に意義があるものを中心に検討しました。

 

 

肥満に関する「神話」は以下の7つの通りです。
01

勘違いされないでくださいね。太字に書いてあるのは信憑性が薄いということですよ。

  × 1. エネルギー摂取と消費することの小さい変化を続ければ、長期的には大きな体重変化を達成できる

    日々のライフスタイルの細切れをまとめても、その効果はあいまいであるということです。
    (1日に0.2Kg痩せれば、10日で2Kgですよ!というのは違うということ。)
    1日1.6kmのWalkingの減量効果は、計算上では5年間で22.7kgになるのですが
実際に得られる効果は4.5kgであるそうです。

  × 2. 肥満治療に際しては現実的な目標設定が重要

    現実的な目標よりも、より高い目標が良い結果に結びつくといういくつかの報告があるそうです。

  × 3. 急速な大きな減量は、ゆっくりとした少しずつの減量と比べて長期的な効果がない

    長期の減量試験で分かったことですが、より早い減量がより大きい減量効果をもたらしていました。
    あえてゆっくり減量しましょうという勧めは、減量の妨げになることもありうるということです。

  × 4. 体重が変化する時期に評価することやダイエットの準備は、患者を治療に前向きにするのに役立つ

    ダイエットの準備が減量に取り組む姿勢の改善や減量そのものの効果には結びつかないようです。
    変化の評価についても減量を持続させる証拠はありませんでした。

  × 5. 小児の肥満を予防して減少させるために、現在の体育の授業は重要な役目を果たす

    これは、なかなか難しいお話ですが、証拠があるかどうかの世界からすれば
    一般的な体育の授業で小児の肥満が減ったという証拠はないそうです。

  × 6. 母乳で育てると、その子供は肥満になりにくい

    世界保健機関(WHO)が
「母乳育児の子供は、後に肥満になりにくいようだ」
と報告したことが始まりらしいです。

    しかし、現在のところ,母乳で育てることに効果があるという証拠はありません。

  × 7. 性行為による消費エネルギーは100~300kcal

    どうしたものでしょうか?
    30歳代前半男性が性行為で消費するカロリーは21kcal程度とのことです。
    テレビ鑑賞のデータと比較していますが、テレビ鑑賞だけでその3分の1は消費されるそうで
たいしたカロリー消費ではありません。

 

 

また、「俗説」は以下の6つの通りです。

02

どれもちょっと見ると「事実」と思いがちなのですが、どれも証拠がない「俗説」ということです。

  × 1. 朝食をきちんと取ると体重は減少する

  × 2. 子供の頃の運動や食事の習慣が、一生の体重に影響する

  × 3. 野菜と果物の摂取は、何もしなくても体重が減少する。あるいは体重の増加が小さくなる

  × 4. 体重が増えたり減ったりすることの繰り返しは寿命を縮める

    ( yo-yo dieting;ヨーヨーダイエットというらしいですね。)

  × 5. 間食は体重増加や肥満となる

  × 6. 建物などの環境が肥満に影響を与える

繰り返しますが、これらはどれも証拠がないらしいです。

 

 

最後に、しっかりとした証拠がある「事実」については以下の9つの通りです。

いわゆる「正しい」とされていることなので字に色をつけてみました。

    1.肥満に遺伝の要素は大きいが、環境の影響によって克服できないようなものではない

    2.体重のコントロールには食事摂取やカロリー摂取制限が重要である

    3.体重の減少にかかわらず,運動は健康増進に役立つ

    4.体重維持には十分な量の運動が必要である

  5.体重減少の状態を継続することが大切である

    6.体重増加の子供への減量プログラムを両親を参加させたりすることや、自宅でも行ったりすることが良い

    7.食事の内容、食事の置換法は減量の手助けとなる

    8.薬物を使用することは減量に有効である (日本にはまだない薬のことを言っています。)

    9.長期的な減量、糖尿病発症予防、合併症減少のために行う減量手術は有効である

 

 

確かに、「神話」「俗説」に関しては、目からウロコのお話も多いです。

特に

「リバウンドが来ないようにゆっくりとライフスタイルを変える気持ちで細かに減量していきましょう。」

と何度言ったことでしょう。

それは証拠のないお話だったんですね。

知らず知らずのうちに「誰かの体験談」の受け売りをお話していたのかも知れません。

反省しました。

この報告をした著者は最後にこう言っています。

「われわれは常に、現在の知識の情報をオープンかつ正直にすべきです。証明されていないことへの対策は厳しく評価すべきでしょう」

 

 

初心を忘れない

さくだ内科クリニックのスタッフが初めて集まったのは2012年10月1日でした。

 

2日前まで台風17号が猛威をふるっていて、その爪あとも生々しく、停電が続き

電気が復旧していない地区もまだあるような時期でした。

 

テレビ報道では那覇市の58号線で大型トラックが横転している映像も流れるような

記録的な被害が出た台風です。

 

9月30日にクリニックの建物の被害状況を見に行くと

どこからか大きな鉄板が飛んできていて、間一髪のところで窓ガラスが無事だったり

何とか無事に皆を迎えることができそうだとほっとしたのを覚えています。

 

10月1日は台風一過。晴れの日でした。

 

その時に集まってくれたのは、まだ前職の都合もあり全員ではありませんでしたが

11月5日の開業に向けて準備のために集まってくれたオープニング・スタッフです。

 

その最初の日。

 

その日は、佐久田がどんな医療を目指したいのかを共有する日にしたいと思っていました。

 

面接の時に、それぞれ個人に対してはお話していたのですが

一緒に集う場でぜひ共有したいと思いました。

 

アイスブレイクの後に 

自分達がこのクリニックで何をしたいか、どんなクリニックにしていきたいのかを

私から皆に、問いを投げかけさせてもらいました。

 

少しの戸惑いはあったようですが

それぞれの思いを付箋紙に書いてもらいました。

 

そして、それを大きな紙に貼り付けていきました。

 

 KJ

 

いわゆる「KJ法」と呼ばれるブレイン・ストーミングです。

 

この紙をいつでも見て振り返ることができるように、あれから院長室に掲げています。

 

私もそうですが、皆の初心を忘れないために

皆の志を大切に行動できているかどうかを振り返るためにです。

 

 

ベビーダッチ

「最近さすがに行けないよなあ」と思いながら

愛用のベビーダッチを取り出してみました。

 

ある程度予想はついていましたが、悲しいことが起きていました。

蓋の一部に赤サビがうっすらと見えていたのです。

babydutch

ベビーダッチというのは、LODGE 5 inch ダッチオーヴンのこと。

5 inch は12.7 cm。 小さなダッチオーヴンです。

ダッチオーヴンというのは鉄鍋のことです。

 

もともとヨーロッパの人達がアメリカにもたらしたもので

18世紀後半、新天地を求めた人々は馬車を走らせキャンプを張りながら移動しました。

その野営生活に活躍したのがダッチオーヴンだということです。

たき火に使いやすいように3本の足(フランジ)がついています。

iron uncle

キャンプに適した鉄鍋です。

沖縄のキャンプも、ダッチオーヴンの登場で料理の種類が格段に増え、楽しみも増えました。

今までバーベキュー一辺倒だったのが、煮る、焼く、炊く、揚げる、燻製もできるようになりました。

(バーベキューが主流なのは変わりませんが。)

 

oven1

(上の写真は以前のキャンプの写真から持ち出してきました。東村つつじエコパークにて)

ちなみに佐久田のお気に入りのダッチオーヴン料理は

 

水と野菜だけのスープ
(『40人の旨い!ダッチ・オーヴン―鉄なべおじさんと40人の仲間の料理』の122ページ)

ペッパード・ローストチキン
(『ひと味違う!ダッチオーブン入門―名シェフ直伝のアウトドア料理 (NHK趣味悠々)』80ページを元にしたオリジナル)

沖縄料理のラフテー
(『ダッチオーブンクックブック―海、山、キャンプで楽しもう! (タツミムック)』の20ページ)

そして、ご飯です。
(白飯を炊くと、それがまたおいしいのです。)

 

 

ダッチオーヴン料理の愛好家のことを、ダッチャーと呼びます。

実はこの5インチダッチオーヴン、通称ベビーダッチは実用性がないとのことで

LODGEカタログから消えてしまっていました。

そのため、当時から「幻のベビーダッチ」として、ダッチャーたちの憧れの的でした。

(最近は6インチキャンプダッチオーヴンが販売されています。)
 

昔、東京に「チキンズ飯倉」というダッチオーヴン料理のお店があったのですが

佐久田にとってそこは聖地に等しいところでした。

料理が絶品だったのはもちろんでしたが、そこにベビーダッチがあって、さらに話が盛り上がったものです。

 

実用的であろうとなかろうと、人気は高く、何とか復刻版をつくってもらおうと

ある関西の方が中心となって署名運動が始まりました。

 

2003年のことです。

佐久田ももちろん署名に参加しました。

目標の1000台分の署名が集まり、2006年11月に見事に限定で復刻されました。

 

そのうちのいくつかが我が家にあります。

全国のダッチャーの願いが結集した、あの時の興奮は今も忘れられません。

 

その大切なベビーダッチをさび付かせてしまった!

ごめんなさい。

akasabi

 

ポジティブ心理学に思うこと

「ポジティブ心理学」が脚光を浴びて久しくなります。

私もある時期とても関心があり、興味を持って本を読み、ことあるごとに触れていました。

 

従来の心理学や医学は、病気や人の弱いところに焦点をあてた学問です。

それとは違って、「ポジティブ心理学」の視点は、人の持つ強みに焦点をあてる心理学ということです。

 

「ポジティブ・サイコロジー」(クリストファー・ピーターソン著)では

ポジティブ心理学とはニコニコ笑顔の元気さだけを扱うものではない。

人生でよい方向に向かうことについて科学的に研究する学問である。

と説明しています。

 

手がかりとして、まずは自分の強みを探し発見することからはじまります。

自分の強みを知りたい人は、ピーターソン自身が開発した質問票によって知ることができます。

日本語でできますので、やってみてはいかがでしょうか。

(ただし全部で240もの質問があり、約30分ほどかかります。)

 

 

ポジティブ心理学というのは、佐久田なりの解釈で申し訳ありませんが

コップの水をまだ半分もあると考えるのか

もう半分しか残っていないと考えるのか

そういう違いを、「まだ~もある」というところから始めてみませんかという考え方だと思っています。

 

「ポジティブ心理学」は「引き寄せの~」などと同様に

落ち込む人々を前向きにさせる応援歌の働きをしてくれるのかも知れません。

 

もちろん、私たち医療者はそれだけではないということを知っています。

「ポジティブ心理学」を否定するものではありませんが

「ネガティブ」を脱せずにいる人の中にも

悪いことだけではないということを示してくれる人はたくさんいるということです。

 

病いを通して、不安や恐怖に直面しながら、人はその時に気づかされることがあります。

病いは決してありがたいものではなく、ポジティブにとらえることなどできないにしても

当事者として痛みを経験してやっと分かることがあります。

 

痛みや苦しみの中で沈んでいる人に、「ポジティブ」だけを求める必要などないということを

私たち医療者は経験的に知っています。

 

ポジティブ心理学に対して、一石を投じたバーバラ・エーレンライクという方の著書があります。

「ときに私たちは不安や否定的な感情と向き合い、外の世界に目を向けなくてはならない。

つらいことかもしれないが、そうしないことの代償は大きいのである。

この危険と機会に満ちた世の中を生き延びていくために、

まず私たちはものごとをありのままに見ることからはじめなくてはならない」

自ら乳がんを患いながら、医療の「ポジティブ心理学」的な精神論を突きつけられた経験が元になっています。

 

「どこまでも前向きな現代の文化」が「ポジティブ・シンキング」の強要であったとしたら

痛みを持つ人は、痛みを通して本当に呼びかけられていることが何かを気づくことができないかも知れないと思います。

 

ポジティブ心理学が、現実把握の先延ばし、現実逃避の言い訳に使われてしまうことのないようにと思います。