最近、何気なく手にした本が「ゲゲゲのゲーテ」でした。
ゲゲゲのゲーテ 水木しげる著
本の表紙にもあるように、水木しげるさんはゲーテをこよなく愛し、それこそ生きるための処方箋として、ゲーテの言葉を常に座右に置いていたそうです。
「水木サンの人生は80%がゲーテです。」
第二次世界大戦が勃発した1940年。水木さんは18歳で、あらゆる哲学書、宗教書をむさぼるように読みました。
それは、いつか自分も招集されて戦場で死ぬかもしれないという恐怖を克服するためだったといいます。
先が読めなくなった人生、自分の意志や都合に関係なく、生命のあり方さえも否応なく決定される戦時下にあって、自分自身の人生について深く洞察するために、水木しげるさんは多くの書物と向き合って、その果てにゲーテにたどり着いたのでした。
その傾倒ぶりや、岩波文庫の「ゲーテとの対話」上中下3冊を戦地ラバウルでも雑嚢にしのばせて持ち歩いていたほどだったそうです。
戦地から帰ってきても、水木さんはゲーテの言葉に従って生きてこられました。
「水木サン(水木しげるさんは自分のことをこう呼びます)の80%はゲーテ的な生き方です。」
そこまで影響を受け、ゲーテの言葉から力を得て、人生を救われた方がいるのだったら…と、「ゲーテとの対話」を改めて読んでみたくなりました。
ゲーテ自身の作品「ファウスト」や「若きウエルテルの悩み」は心に残っているのですが、ゲーテの弟子エッカーマンが著した「ゲーテとの対話」は若い頃にさらっと目を通しただけで終わっていたからです。
水木さんが言うには「ゲーテは人間として大きい。普通の人よりひとまわり大きい。」
だから、ゲーテを読んでいると自然に自分も大きくなった気がするのだと言っていました。
もしかしたら、若い頃の自分にはわからなくて、今の年齢になって初めてわかる人間の大きさなのかも知れません。