Juan Tamariz: マジックの巨星

私の好きなマジシャンを紹介する「勝手にマジシャン・シリーズ」です。(多分4人目)

今回は、ホアン・タマリッツ(Juan Tamariz-Martel Negrón、1942年10月18日生まれ)。

タマリッツはスペイン・セビリア県エシハ出身のプロマジシャンで、世界中の手品師から尊敬されています。

彼は1973年にFISM(マジックの世界大会)のカード・マジック部門で第1位に輝きました。

1988年、1990年、1992年には日本を訪れています。

彼のマジックスタイルは非常ににぎやかで、奇抜な衣装(ジーンズにシルクハット)を身につけ、観客を楽しませてくれます。

外見は派手ですが、彼のマジックは細かく計算されていて、熟練の手品師でさえ騙されるほどです。

彼の代表作は「タマリッツ・シルク」というトリックで、観客Aが持っていた無地のシルクに、別の観客Bの選んだカードが印刷されているという驚きの現象を見せるものです。

タマリッツはクロースアップ・カードマジックの分野で先駆者とされ、アメリカのステージマジシャン、リッキー・ジェイやデビッド・ブレインによって「生きている中で最も偉大で影響力のあるカードマジシャン」と評されています。

彼はスペインと南アメリカでテレビやステージで活躍し、英語に翻訳された6冊の本を執筆しました。

有名な本に「The Five Points in Magic」、「The Magic Way」、「The Magic Rainbow」などがあります。

ホアン・タマリッツのマジックスタイルは、観客との深いつながり、革新的なパフォーマンス、プレゼンテーション技術が特徴です。

彼は心理学、演劇、物語を組み合わせて、感情的に共鳴するマジックショーを創造しました。

彼の「Mnemonica」システムと呼ばれる革新的なカードスタックや、観客の注意を巧みにコントロールするミスディレクションの能力は、特に注目に値します。

彼のマジックに対するアプローチは、視覚的なスペクタクルだけでなく心を動かし心を捉えることに重点を置いており、多くの人々に影響を与え、マジックの定義を再定義しました。

彼の人柄を示すエピソードの一つとして、ある晩の食事中にマジシャンのグループと一緒にいた際、タマリッツが一人のグループメンバーにカードにサインをさせた話があります。

食事が終わった後、彼はグループに「左か右か?」と尋ね、ランダムに選ばれた方向に向かって歩きました。

最終的に、彼らが止まった場所にあった物(おそらく自転車)にサインされたカードが挟まれていたのです。

これには、プロのマジシャンさえも驚き、タマリッツの巧妙さを証明するものでした。

 

YouTubeで拾ってきた動画は、ホアン・タマリッツ本人が「タマリッツ・シルク」を演じているものです。

日本語字幕はついていませんが、「見てびっくり!」のマジックなので、最後のクライマックスまでぜひご覧ください。

 

ガンテネルマブのアルツハイマー病研究への寄与

アルツハイマー病がなぜ起こるのかという疑問に対し、現在のところ、アミロイドβ仮説、アセチルコリン仮説、オリゴマー仮説などがあります。

アミロイドβ仮説は、アルツハイマー病の病理をアミロイドβの蓄積から始まると考え、それが神経細胞の損傷や死につながるというものです。

一方、アセチルコリン仮説は、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬開発の元となった説であり、アセチルコリンの減少が認知症の原因であるというものです。

また、オリゴマー仮説は、アミロイドβの蓄積によって生じるオリゴマーが神経細胞の機能障害を誘発し、細胞死に至るという説です。

これらの説は、それぞれの視点からアルツハイマー病の病因を考えるものであり、それぞれが研究や治療の方針に影響を与えています。

その最新の試みが「ガンテネルマブ」というモノクローナル抗体です。

ガンテネルマブは、アルツハイマー病の早期段階における認知機能の衰退を遅らせることを目指し開発されました。

この抗体は、アミロイドβを標的とします。

この抗体が有効であるかを探る臨床試験、すなわちGRADUATE IおよびII試験でどのような結果が得られるのかは、医学界における大きな関心事でした。

 

元論文はこちら→

Bateman RJ, Smith J, Donohue MC, et al. Two Phase 3 Trials of Gantenerumab in Early Alzheimer’s Disease. N Engl J Med. 2023;389(20):1862-1876. doi:10.1056/NEJMoa2304430

 

試験は、軽度の認知障害または軽度の認知症を抱える50歳から90歳の間の人々を対象に、2週間ごとにガンテネルマブまたはプラセボを投与する形で進められました。

この試験の成果は複雑です。

ガンテネルマブはアミロイドプラークの量を減少させる効果を示しました。

しかし、残念ながら、臨床的な衰退の遅延にはつながりませんでした。

つまり、この薬はアルツハイマー病の進行を遅らせるという主要な目標には達しなかったのです。

これは、アルツハイマー病の治療においては、まだ解決すべき課題が多いことを示しています。

安全性に関しては、ガンテネルマブは一般的に良好でしたが、アミロイド関連画像異常(ARIA)や注射部位の反応などの副作用が観察されました。

結局のところ、ガンテネルマブは、アルツハイマー病という巨大な謎に対する一つの試みに過ぎませんでした。

この病気の謎は未だ完全には解き明かされておらず、研究者たちはさらなる知見を求めてその探求を続けています。

アルツハイマー病に対する治療法の発見には、まだ道のりがありますが、ガンテネルマブの試験は、その過程で得られた重要な知見となったようです。

 

同時接種の可能性:COVID-19とインフルエンザワクチン

冬が訪れると、私たちの健康に対する脅威が増します。

この季節、インフルエンザとCOVID-19のウイルスが活発化するため、予防策が重要になります。

最近の研究により、これらのウイルスへの対抗策として、新たな可能性が示されました。

 

元論文はこちら→

McGrath LJ, Malhotra D, Miles AC, et al. Estimated Effectiveness of Coadministration of the BNT162b2 BA.4/5 COVID-19 Vaccine With Influenza Vaccine. JAMA Netw Open. 2023;6(11):e2342151. doi:10.1001/jamanetworkopen.2023.42151

 

米国での研究では、COVID-19ワクチンと季節性インフルエンザワクチンを同日に接種(同時接種)することの有効性が明らかにされています。

この研究は、2022年8月から2023年1月にかけて、それぞれのワクチンを単独で、または同日に接種した340万人以上の成人を対象に行われました。

この研究の結果は注目に値します。

65歳以上のグループでは、ワクチンの同時接種はCOVID-19に関連する入院の発生率に大きな差はみられませんでしたが、インフルエンザ関連の結果においては、単独接種と比較して若干低い発生率を示しました。

18歳から64歳のグループでは、COVID-19関連の結果がやや高い発生率を示しましたが、全体的にはワクチンの同時接種が類似の有効性を持つことが示されました。

これは、ワクチン接種の効率化という点においても有用な情報となります。

特に、秋や冬のワクチン接種キャンペーンにおいて、この情報を含めることで、より多くの人々がワクチンを受ける機会を得るかも知れません。

日本の場合、厚生労働省のホームページでは「新型コロナワクチンとインフルエンザワクチンとの同時接種は可能です。また、それぞれのワクチンを別の日に接種する場合の接種間隔についても制限はありません。」と告知されています。

SARS-CoV-2は一年中流行していますが、他のウイルス性呼吸器感染症(例えばインフルエンザ)と同様に、主に冬にピークを迎える季節的なパターンに従うことになるでしょう。

今後も、COVID-19ワクチンは毎年秋や冬に季節性インフルエンザワクチンとともに接種される可能性が高いと思われますから、その時の接種方法の参考になるかも知れませんね。

 

 

 

CKD患者におけるCOVID-19と免疫応答

慢性腎臓病(CKD)患者にとって新型コロナウイルス(COVID-19)の脅威は、私たちにとって重要な関心事です。

一般的に、COVID-19に対する免疫応答は健康な人々においても多様ですが、CKD患者におけるその反応はさらに複雑です。

最近の研究で、これらの患者がSARS-CoV-2の変異株に対してどのような免疫反応を示すのかの報告がありました。

 

元論文はこちら→

Yap, D.YH., Fong, C.HY., Zhang, X. et al. Humoral and cellular immunity against different SARS-CoV-2 variants in patients with chronic kidney disease. Sci Rep 13, 19932 (2023). https://doi.org/10.1038/s41598-023-47130-8

 

この研究の中心は、CKD患者の体液性免疫および細胞性免疫の詳細な分析です。

具体的には、香港のクイーン・メリー病院の外来患者や透析センターの患者88人を対象に、オミクロンの4つのサブタイプに対する中和抗体反応とT細胞応答を調査しました。

その結果、これらの患者の95.5%が過去の感染経験があるか、ワクチンを接種しているにもかかわらず、検出可能な中和抗体を持っていたのは77.3%のみでした。

さらに、T細胞応答を示していたのは59.1%でした。

特に注目すべきは、腎移植を受けた患者(KTR)のケースです。

彼らはワクチンの追加接種率が高かったにも関わらず、多くの場合で中和抗体やT細胞応答がないことが判明しました。

これは、免疫抑制療法を受けていることが影響していると考えられます。

そして、中和抗体とT細胞応答の低下は、その後の感染と有意に関連していました。

これらは、CKD患者のCOVID-19に対する免疫応答に関する私たちの理解を深めるものです。

現行のワクチン接種計画や治療戦略が、CKD患者にとって十分ではない可能性があります。

特に、腎移植を受けた患者は、標準的な予防接種や治療法だけではなく、個別化されたアプローチが必要かもしれません。

この研究は、CKD患者におけるCOVID-19の影響とその管理についての新たな洞察を提供します。

一方で、さらなる研究が必要であることも明らかです。

患者の安全と健康を守るためには、常に進化するウイルスと戦うための新しい戦略が求められています。

 

“すみません”の心理学:あやまってばかりの人が得るもの

 

「すみません」という言葉、一日に何回使いますか?

もし「すみません」が口癖であれば、あなたの意図しないところで、人に好印象を与えているかも知れません。

 

元論文はこちら→

Schumann, K., Ritchie, E. G., & Forest, A. (2023). The Social Consequences of Frequent Versus Infrequent Apologizing. Personality and Social Psychology Bulletin, 49(3), 331-343. https://doi.org/10.1177/01461672211065286

 

ピッツバーグ大学の研究者たちは、384人の参加者に短い物語を読ませ、その中のキャラクターに対する印象を評価してもらいました。

その結果、頻繁に謝罪するキャラクターは、誠実さや温かさなどの「共同体的な資質」で高く評価されていました。

つまり、謝罪が多いと、人はあなたを「いい人」と見なすわけです。

 

さらに、300人の恋愛関係にある人々も研究の対象とされました。

「恋人が自分のことを、自分の知らないところでバカにする」という仮想のシナリオを演じてもらったのです。

その後、参加者は恋人から謝罪してもらい、その反応を評価しました。

結果は、頻繁に謝罪する人の謝罪は、頻繁でない人の謝罪と比較して、特に低く評価されるわけではありませんでした。

つまり、謝罪は多すぎると薄っぺらになるということはないのです。

謝罪の連弾は、あなたを許してくれる可能性を高くしてくれるかも知れません。

そう、あなたの「すみません」は、恋愛の神様も味方につける魔法の言葉になるのです。

 

ただし、その謝罪が「高品質」であることが重要です。

具体的な行動を伴う謝罪が、より肯定的な反応を引き出す可能性が高いのは当然です。

だから、次回「すみません」と言ったときは、その後に「次からは気をつけます」とつけ加えて、本当に気をつけるようにしなければなりません。

そうすれば、あなたは「謝罪の達人」へと進化することができるでしょう(笑)。

 

 

時間制限食のダイエット効果

 

ダイエット法は、いくつも流行がありますね。

例えば「時間制限食」は、毎日特定の時間帯だけ食事を取り、その他の時間帯は水などで過ごす「断続的断食(ファスティング)」のひとつとされています。

「断食」と名前はついていますが、哲学的なお話ではなく、今までにも「時間制限食」vs「カロリー制限食」の図式で、検証されてきました。

その研究のひとつです。

 

元論文はこちら→

Pavlou V, Cienfuegos S, Lin S, et al. Effect of Time-Restricted Eating on Weight Loss in Adults With Type 2 Diabetes: A Randomized Clinical Trial. JAMA Netw Open. 2023;6(10):e2339337. Published 2023 Oct 2. doi:10.1001/jamanetworkopen.2023.39337

 

この研究によれば、特に2型糖尿病の成人にとって、「時間制限食」が体重減少に影響を与える可能性が高いことが明らかになっています。

この研究に参加したのは、平均年齢55歳、平均BMI(体格指数)が39、HbA1c(長期血糖値)が8.1%という75人。

彼らは6ヶ月間、時間制限食(TRE)と日常的なカロリー制限(CR)のどちらが効果的かを試してもらいました。

結果は、TREを実践したグループは体重が平均で3.56%減少しました。(CRグループは、有意な体重減少なし(1.78%の減少))

ここで疑問が湧くかもしれません。

この研究の時間制限食(TRE)とは、いったいどんな方法をとったのか?

簡単に言えば、一日の食事を8時間以内にすべて摂るという方法です。

残りの16時間は何も食べずに「断食」をします。

この食事のスタイルが、体内時計に合わせて食事を摂ることで、代謝を効率的にするとされています。

それに対して、日常的なカロリー制限(CR)は、単に一日の食事のカロリーを制限するだけでした。

この方法も体重減少には一定の効果がありますが、今回の研究ではTREの方がより効果的であったというわけです。

なぜTREが効果的だったのか。研究によれば、TREグループは週平均で6.1日、食事の時間をしっかりと守っていました。

その結果、一日当たりの平均エネルギー摂取が313kcal減少。

一方、CRグループは197kcal、対照群はわずか16kcalしか減少していませんでした。6ヶ月間のカロリー目標を守っていたのは、68%だったということです。

実施と遵守状況の差が、そのまま結果の差となっているのかも知れません。

 

これからの食事について考える際、もちろん「何を」、「どれだけ」食べるかは重要です。

でも、それと同時に「いつ」食べるかも大切な要素になるということですね。

 

 

揚げ物が心に与える影響:不安とうつの要因?

 

揚げ物は食べすぎると、健康に良くない感じがします。

神様はなぜヒトを、美味しいものの過食に耐えられない身体に作ってしまったのでしょう?

しかも、今度は身体だけでなく、心の健康にまで及ぶお話です。

 

元論文はこちら→

Wang A, Wan X, Zhuang P, et al. High fried food consumption impacts anxiety and depression due to lipid metabolism disturbance and neuroinflammation. Proc Natl Acad Sci U S A. 2023;120(18):e2221097120. doi:10.1073/pnas.2221097120

 

イギリスのバイオバンクという大規模なデータベースを用いたこの研究では、揚げ物を頻繁に摂ることが、不安を12%、うつ症状を7%も高める可能性があると指摘されています。

特に「揚げたじゃがいも」がこのリスクを高める要因とされています。

この研究は140,728人ものデータを分析し、その上でゼブラフィッシュを用いた実験も行われました。

この小さな魚がアクリルアミドという化学物質にさらされたとき、不安やうつのような行動を示したのです。

アクリルアミドは、じゃがいもなどの炭水化物が豊富な食品を揚げる過程で生成される化学物質で、神経に毒性を持つことが知られています。

揚げ物が好きな人にとって、この研究結果はちょっとしたショックかもしれません。

心の健康も考慮に入れたバランスの良い食生活が大切です。

揚げ物を食べること自体は悪くありませんが、その頻度と量には注意が必要だということですね。

食事は、私たちの心にも影響を与える重要な要素だということです。

何を食べるかが、身体だけでなく、どれだけ心に影響を与えるか、考える価値があります。

 

 

いい加減な情報に対する盲目性

 

自己評価というのは難しいですね。

低すぎると自信のなさにつながりますし、高すぎると何でもできる気がしますが、実力に見合っていないので、結局は自分も周りも困ることになります。

心理学者たちはそんな自己評価の高い人々が、実は「いい加減な情報」に対して驚くほど無防備であることを発見しました。

 

元論文はこちら→

Shane Littrell & Jonathan A. Fugelsang (2023) Bullshit blind spots: the roles of miscalibration and information processing in bullshit detection, Thinking & Reasoning, DOI: 10.1080/13546783.2023.2189163

 

この現象は「いい加減な情報に対する盲目性」と名付けられ、412人の参加者を対象に行われた研究で明らかにされました。

この研究では、参加者に20の文章を評価してもらいました。

そのうち10個は有名人の言葉で、残りの10個は意味のない、いい加減な文でした。

結果として、自己評価が高い人は、いい加減な情報に対する警戒が低く、逆に自己評価が低い人はそのような情報をしっかりと見抜く能力が高かったのです。

自己評価が高いと、自分がアインシュタイン級の天才だと思い込んでいるけれど、実際は「地球は平らだ」と信じているようなレベル。そんな感じです。

さて、この「いい加減な情報に対する盲目性」は、ダニング=クルーガー効果とも関連があります。

ダニング=クルーガー効果とは、能力が低い人が自分の能力を過大評価し、逆に能力が高い人が自分の能力を過小評価するという現象です。

簡単に言うと、素人はちょっとかじっただけで「それ」を分かったつもりになり、専門家は「それ」に対してあくまで謙虚であるということ。

だから「分かった、分かった」という人ほど、何も分かっていない。

シェイクスピアも同じようなことを言っています。

「愚者は自分を賢明だと考え、賢者は自分を愚かであると知っている。」

これらの現象が示すのは、自己評価と実際の能力、または認知とのギャップが存在するということ。

だからこそ、知的な謙虚さが求められます。

次に何か信じられない情報に出会ったとき、一度立ち止まって考えてみる必要があります。

それが、自分自身を守る最初の一歩かもしれません。

 

 

走るための理想の体:体型とパフォーマンス

 

研究とは、時には「当たり前」を「確かなもの」に変える手段となります。

例えば、「短距離のトップランナーは筋肉質、長距離ランナーはスリム」いうのは、誰もが持っているイメージですね。

100mのウサイン・ボルト選手やマラソンのキプチョゲ選手が、それの代表格です。

人々が「当然」と思うかもしれないそのような情報も、科学的な裏付けがなければ確証にはなりません。この研究は、その「確証」を提供しています。

今回の論文は、その一例です。

 

元論文はこちら→

Stachoń, A., Pietraszewska, J. & Burdukiewicz, A. Anthropometric profiles and body composition of male runners at different distances. Sci Rep 13, 18222 (2023). https://doi.org/10.1038/s41598-023-45064-9

 

この研究は、大学の運動選手68人(短距離走者26人、中距離走者22人、長距離走者20人)の体型と体組成について詳細に調査しました。

結果として、それぞれの距離で活躍する選手たちの体は、異なる特性を持っていることが明らかになりました。

短距離走者は、一般的に体格が大きく、筋肉が発達しています。(私たちのイメージ通りですね)

下肢は短く、その代わりに肩幅は広く、腰は狭い。これが短い距離で爆発的なスピードを出すための最適な体型なのです。

一方で、長距離走者は全く逆。体はスリムで、下肢は長く、皮下脂肪や細胞外質が多い。これにより、長い距離を効率よく走り続けられるのです。

面白いのは、中距離走者たちの体型です。

彼らは「最もスリム」であり、体幹が細く、皮下脂肪が少なかったのでした。

なぜなら、中距離は短距離と長距離の中間であり、スピードと持久力のバランスが求められるからです。

彼らの体型は、そのような要求に最適に応える形に自然と進化していたのでした。

この研究では、主成分分析という手法を用いて、これらの体型の違いがどれだけパフォーマンスに影響を与えるのかも詳しく調査されました。

その結果、体の全体的なサイズや四肢の筋肉量、さらには下肢の長さといった要素が、走る速度や持久力に大きな影響を与えることが確認されました。

つまり、走ることは単なる「足を前に出す」行為ではなく、私たちの体が持つ多くの「形状」によって、そのパフォーマンスが大きく変わってくるということです。

これは、コーチやトレーナーが選手を選ぶ際の重要な指標となるのでしょうね。

そして、私たち一般人も、あるいは自分の体型に合った「最適な距離」があるのかも知れません。

 

 

記憶の迷路を解く鍵はストロベリー?

 

私も普段からフルーツには目がないほうです。

特に、赤くて鮮やかなストロベリーは、スイーツとしてなくてはならない存在ですね。

この小さな果物が、実は認知機能に良い影響を与える可能性があるかも知れません。

そんな報告がありました。

 

元論文はこちら→

Krikorian, R.; Shidler, M.D.; Summer, S.S. Early Intervention in Cognitive Aging with Strawberry Supplementation. Nutrients 2023, 15, 4431. https://doi.org/10.3390/nu15204431

 

では、一体どのような影響があるのでしょうか。

研究者たちは、インスリン抵抗性と主観的な認知機能の低下を持つ中年の男女を対象に、12週間にわたるストロベリーサプリメントの摂取実験を行いました。

具体的には、果実100%のストロベリーパウダーを毎日投与。

その結果、ストロベリーを摂取したグループでは、記憶の干渉が減少し、抑うつ症状も減少したのです。

「記憶の干渉」とは何かというと、新しい情報が古い情報と混ざってしまい、正確な記憶が困難になる現象です。

この干渉は主に二つのタイプに分類されます。

前向き干渉(Proactive Interference): これは、以前に学習した情報が新しい情報の学習や記憶に影響を与える現象です。例えば、古い住所や電話番号が、新しいものを覚える際に邪魔をすることがあります。

後向き干渉(Retroactive Interference): これは新しく学習した情報が、以前に学習した情報の記憶に影響を与える現象です。例えば、新しいパスワードを設定した後、古いパスワードを思い出せなくなることがあります。

このような記憶の干渉が起きると、情報の整理や取り出しが難しくなり、認知の効率が低下します。

特に高齢者や認知機能に問題を抱える人々にとっては、この現象は非常に重要な問題となり得ます。

この現象が減少したということは、要するにストロベリーが「思考の整理係」をしてくれたとも言えます。

一方で、この研究にはいくつかの制限もありました。

例えば、代謝に関する指標には大きな変化が見られませんでした。

これはサンプルサイズや介入期間、または使用されたアントシアニン(色素成分)の量が影響している可能性があります。

さて、この研究が示唆するのは、もしかしたらストロベリーが認知機能の「サポート役」になるかもしれない、ということ。

ただし、研究はまだ初期段階ですので、ストロベリー摂取で賢くなれるわけではありませんよ。

でも、次にストロベリーを手に取るときは、少しだけその可能性を思いながら味わうのも楽しみになるかもしれませんね。