加齢や生活習慣によって血圧の管理は大きく変わります。近年、座ったままの測定だけでなく、仰向けに寝た状態(仰臥位)での測定も心血管疾患のリスクと深く関係することがわかってきました。
米国の大規模研究「ARIC研究」では、心臓病や脳卒中の既往がない参加者11,369人(平均年齢53.9歳、女性55.7%、白人74.9%)を対象に、仰臥位と座位での血圧値を長期にわたって追跡しました(最長約28.3年)。その結果、仰臥位での高血圧は、座位での高血圧以上に心血管系リスクと関連していたのです。
仰臥位での高血圧は、収縮期血圧が130mmHgを超えるか拡張期血圧が80mmHgを超える状態と定義され、座位も同様の基準値(収縮期血圧130mmHg超/拡張期血圧80mmHg超)を用いました。追跡の結果、仰臥位の高血圧がある人は、心筋梗塞などの冠動脈疾患(狭心症や心筋梗塞など)を発症するリスクが約1.60倍(95%信頼区間1.45-1.76)、心臓病で亡くなるリスクが約2.18倍(1.84-2.59)、心不全発症が1.83倍(1.68-2.01)、脳卒中が1.86倍(1.63-2.13)、全死亡リスクは1.43倍(1.35-1.52)という結果でした。さらに、座位の血圧が正常範囲でも、仰臥位の高血圧があればリスクが上昇する点も注目されました。
座位と仰臥位の両方で高血圧を示す場合が最もリスクが高い一方、座位では正常でも仰臥位では高血圧の人は、多くの心血管イベントについて座位のみの高血圧と同等、もしくはそれ以上の危険度でした。
測定方法は通常の外来診療より長めの20分安静後に行ったため、実臨床での再現性には配慮が必要です。また、夜間血圧や長期間の経時変化が十分に考慮されていないなどの制限もあります。参加者の多くが65歳未満だった点も、高齢者への一般化には注意が求められます。
今回の研究は、仰臥位での血圧測定が見過ごされやすい高血圧を検出できる可能性を示しました。血圧を正確に把握するための手法は、さまざまな場面で検討が進められています。仰臥位での測定を含む多面的なアプローチが、心血管疾患の予防や早期発見につながるかもしれません。研究チームはその有用性を提起しており、今後の診療現場での取り入れ方に関心が集まっています。
参考文献:
Giao DM, Col H, Larbi Kwapong F, et al. Supine Blood Pressure and Risk of Cardiovascular Disease and Mortality. JAMA Cardiol. Published online January 22, 2025. doi:10.1001/jamacardio.2024.5213
