ダローは1955年8月13日にアメリカで生まれました。本名はダロー・マルティネスでしたが、後に血縁関係にある祖父の姓を名乗るため、ダロー・イーストンに改名したと伝えられています。幼少期の7歳の頃、トリック・デック(仕掛けのあるトランプ)の「スベンガリ・デック」に触れたことがきっかけで、地道に技術を磨きながらマジックの世界へ足を踏み入れました。ストリートマジックからナイトクラブまで、昼夜を問わず舞台を選ばずに演技を続けることで、高度な技術と魅力的な演出スタイルを身につけていったようです。
18歳のときにはカイザー・アルミナム社の展示会でマジックを披露し、高評価を得ました。この成功を機に同社の展示会に同行し、世界各地でパフォーマンスを行うチャンスをつかみました。また、アメリカ大統領の就任式典でもマジックを披露し、多くの観衆を驚かせたとの記録があります。これらの経験により、やがて「マジシャンの中のマジシャン」と称されるほどの名声を確立しました。
ダローはカードマジックにおける革新的な技術で知られ、ホットショットカット(ブーメランカットとも呼ばれる)やアルティメイト・アンビションといった作品で評価を高めました。特にアルティメイト・アンビションは、1982年のFISMスイス大会においてクロースアップ部門のゴールドメダルを受賞したことで有名です。デックをロープで縛ったまま、選ばれたカードがトップに現れるという不思議さが高いインパクトを生み、多くのマジシャンに影響を与えました。
レクチャラーとしての活動も盛んで、世界中で講演を行ったほか、個人やグループへの指導にも熱意を注いだとされています。L&L Publishingとの共同制作による「Encyclopedia of card sleights」は、カード技法を網羅した映像作品として多くのマジシャンが学習に活用していることで知られます。(実はこのDVDシリーズは私も持っています。)また、「Essentials in Magic」というDVDシリーズでは、初心者から上級者まで役立つトランプの専門的な使い方をわかりやすく解説しました。
彼は1978年から1992年にかけて数々の賞を受賞しています。マジックキャッスルの「ベストマジシャン・オブ・ザ・イヤー」や「レクチャラー・オブ・ザ・イヤー」をはじめ、ラスベガスのコンテストでも優勝を果たしています。こうした受賞歴からも、ダローがいかに幅広く評価されていたかがうかがえます。
2017年2月24日、ダローは61歳で亡くなりました。この訃報はマジック界に大きな衝撃を与え、多くのマジシャンやファンがその死を悼んだと伝えられています。卓越した技術や独創的なアイデア、そして情熱的なレクチャー活動は今もなお語り継がれ、世界中で大切に受け継がれています。ダローが築いた足跡は、カードマジックをはじめとする数多くのジャンルで、後進にとっての学びと刺激となり続けるでしょう。
