体脂肪率を推定する新しい方法

体脂肪率を推定する新しい方法

 

慢性腎臓病(CKD)の患者さんは、過度な体脂肪が腎機能の低下や病状の進行に影響すると報告されています。今回の研究では、スペインのコルドバ大学病院でステージIIIまたはIVのCKD患者さんを対象に、新しい推定式を用いて体脂肪率を評価しました。その結果、ウエスト周囲径と身長、さらに性別を組み合わせることで、体脂肪率を精度よく見積もれる可能性が示されています。体重だけでなく、体脂肪の分布や総量を把握することの大切さを改めて示す興味深い報告です。

 

【方法】 

2023年2月から5月にかけて、CKDステージIIIまたはIVと診断され、透析導入前の外来受診をしている106人(女性30.5%)を対象とした横断研究が行われました。平均BMI(体格指数)は30.31でした。研究では、生体インピーダンス装置を用いて参加者の体脂肪率や筋肉量を測定し、同時に年齢、性別、ウエスト周囲径、ヒップ周囲径などの身体計測を行いました。立位が困難な方は測定が難しいため除外されています。

 

【結果】 

女性の平均体脂肪率は37.82%、男性は27.86%でした(P<0.001)。性別による体脂肪率の違いだけでなく、ウエスト周囲径やウエストヒップ比にも明確な差がみられました。統計解析の結果、ウエスト周囲径と身長、性別を組み合わせた推定式による体脂肪率の測定値は、生体インピーダンス測定値と良好に一致しました。具体的には、クラス内相関係数(ICC)が0.71(95%信頼区間0.59~0.79)と報告されています。BMIは体重と身長のみを基に算出しますが、この新しいモデルでは腹部脂肪の蓄積程度と身長、性別の要素が加味されているため、CKD患者さんにとってより有用な可能性があります。

 

【考察と意義】 

CKDの患者さんには血圧管理や食事療法だけでなく、長期的な栄養評価が求められます。しかし、病院やクリニックで生体インピーダンス装置を常時使えるとは限りません。今回示された推定式は、身近な身体計測の結果と性別から体脂肪率を推定できるので、時間や費用の面でメリットがあります。研究チームはBMIだけに頼るのではなく、腹部脂肪などの分布に注目した総合的な評価が重要だと指摘しています。これは医療者がCKD患者さんの生活習慣や栄養状態を早期に把握し、最適なケアプランを考えるうえで役立ちそうです。

 

【限界と今後の課題】 

対象者にはスペイン国内の特定地域の方が多く、さまざまな経済状況や人種、民族背景を含む集団の代表といえるかは限定的です。また、今回の研究は横断的なデザインのため、長期的に体脂肪率がどのように変化し、腎機能と相互に影響し合うかについては追跡研究が必要になります。今後は多様な人々を含む追跡調査を通じて、この推定式の精度や有用性がより詳しく検証されることが望まれます。

 

今回の報告は、CKD治療の現場で栄養管理を見直すきっかけになりそうです。ウエスト周囲径、身長、性別というシンプルな測定で体脂肪率の推定が可能なら、医療者や患者さんにとって手軽で助けになる方法といえます。CKDの進行を食い止めるには、適切な栄養と運動、そして検査データに基づく管理が重要です。研究者たちはさらに長期的な視点で検証を続け、CKDの人々の健康維持に役立つ情報を広げていくと考えられます。これまでBMIだけで十分と思われていた枠組みが一歩前進することで、CKD対策がさらにきめ細かくなることが期待されています。

 

参考文献:

Jiménez-Mérida MDR, Alcaide-Leyva JM, Lopez-Lucena M, Portero de la Cruz S, Molina-Luque R, Martínez-Angulo P. Preventing Progression of Renal Disease: A New Method for Monitoring Body Fat Percentage in Predialysis Chronic Kidney Disease Patients. Nutrition. 2025;130:112605. doi:10.1016/j.nut.2024.112605