冷水浴がもたらす健康効果―認知力アップと快眠の秘密

冷水浴がもたらす健康効果―認知力アップと快眠の秘密

 

冷たい水に浸かるなんて想像するだけで身震いしそうですが、実はこれが私たちの心身に思いがけない恩恵をもたらすことが分かってきました。英国の研究チームが行った調査では、週に3回、冷水に浸かることで、認知力の向上や睡眠の質の改善が期待できると報告されています。

 

若者たちを対象とした冷水浴プログラム

この研究では、平均年齢20.85歳の健康な男女13人が、4週間にわたる冷水浴プログラムに参加しました。参加者たちは、10°C前後の冷水に胸の高さまで浸かり、1回10分間、週に3回、冷水に浸かりました。期間中、参加者たちの認知力、心の健康状態、睡眠の質などが細かくチェックされました。

 

冷水浴と認知機能

冷水に浸かることで、認知機能にどのような影響があるのでしょうか。研究結果によると、ある種の認知能力が向上する可能性が示唆されています。

参加者たちは、「Trail Making Test(TMT)」と呼ばれる認知力テストを受けました。これは、数字やアルファベットを順番に線で結んでいくテストで、処理速度や注意力を測ることができます。

驚くべきことに、冷水に浸かった後は、タスクを完了するまでの時間が大幅に短縮されました。例えば、TMT-Aという簡単な課題では、初回の平均15.17秒が、4週目には11.06秒まで短縮しました。TMT-Bという、より複雑な課題でも、初回の39.68秒が26.18秒に改善しました。

これは、冷水が私たちの脳の「実行機能」、つまり、計画を立てたり、問題を解決したり、目標を達成したりするために必要な能力を活性化させる可能性を示唆しています。

一方で、「Stroopテスト」と呼ばれる、色と文字の干渉効果を測るテストでは、目立った変化は見られませんでした。しかし、冷水が少なくとも一部の認知機能をサポートすることは、考えられます。

 

冷水浴と不安感

さらに、冷水に浸かった後、参加者たちの不安スコア(PSWQ)が大幅に低下していたことも注目すべき点です。初めて冷水に浸かった直後から、不安感は目に見えて減少し、2週間目以降もその効果が持続しました。

これは、冷水による刺激が、自律神経のバランスを整え、リラックス効果をもたらすためと考えられます。

ただし、幸福感や全体的な精神的健康を示すスコア(WEMWBSやSHS)には、大きな変化は見られませんでした。

 

冷水浴と睡眠の質

そして、この研究で最も注目すべき成果は、睡眠の質の改善です。初回時点での睡眠スコア(PSQI)は7.85と、やや不眠の傾向が見られました。しかし、2週目から4週目にかけて、スコアは6.38、さらに5.75まで改善しました。

これは、冷水による刺激が、自律神経のバランスを整え、質の高い睡眠を促進する効果があることを示唆しています。

 

冷水浴の可能性

この研究の結果は、冷水浴が私たちの心身に多面的な効果をもたらす可能性を示しています。

ただし、研究では、冷水浴を「短時間かつ適度な頻度」で行うことを前提としています。長時間の冷水への曝露は、逆にストレスとなる可能性もあるため、無理は禁物です。まずは10分間の冷水浴から始めてみてはいかがでしょうか。

冷たい水に挑むことで、私たちの身体はどのように変わるのか、そして、どんな新しい自分に出会えるのか…。次回のお風呂で、少し冷たい水に浸かることを試してみるのも良いかもしれませんね。あくまでも無理をしない程度に。

 

参考文献:

Knill-Jones J, Shadwell G, Hurst HT, Mawhinney C, Sinclair JK, Allan R. Influence of acute and chronic therapeutic cooling on cognitive performance and well-being. Physiol Behav. 2025;289:114728. doi:10.1016/j.physbeh.2024.114728