ムーチービーサ

 

今日は1月7日。旧暦では12月8日です。

沖縄では、旧暦12月8日になると、各家庭で“ムーチー”が作られます。ムーチーは餅粉に砂糖や黒糖、紅芋などを混ぜて、月桃(サンニン)の葉で包み、蒸し上げた伝統的なお餅です。

近年の沖縄本島の1月平均気温は約17℃とされていますが、風が冷たく感じられる日も多く、この時期の寒さは“ムーチービーサ”と呼ばれています。ムーチーを食べることで寒さを乗り越え、健康と長寿を祈願する風習が昔から受け継がれてきました。

月桃の葉には抗菌作用があると言われています。実際に、月桃の抽出成分(ポリフェノール類など)が細菌や真菌類の増殖を抑制する可能性が示された研究報告もあります。蒸す過程で葉の独特な香りが餅に移り、ほんのりとした爽やかな風味が楽しめるのも特徴です。また、沖縄では月桃の香りを魔除けとして利用する文化的背景もあり、ムーチーには厄払いの意味も込められています。

子どもが生まれて初めて迎えるムーチーは“ハチムーチー”(初ムーチー)と呼ばれます。この日は親族や友人にムーチーを配って祝う習慣があります。さらに、子どもの年齢分のムーチーを紐でつなぎ、家の天井や壁から吊るす風景も見られます。風に揺れる月桃の葉は、子どもの健やかな成長を願う親の思いを象徴しているようです。

最近では、紅芋を混ぜた鮮やかな紫色のものや、黒糖の風味を活かしたものなど、ムーチーのバリエーションが増えています。紅芋にはビタミンCやポリフェノールが含まれていますし、黒糖にはミネラルが豊富に含まれています。現在では、スーパーやコンビニでも気軽に購入できますが、家で手作りする人も多く、その過程で家族や地域との絆が深まるようです。

私の母も毎年大量のムーチーを作っては、皆にふるまっています。ムーチーの香りが家の中に広がると、「ああ、今年もこの季節になったか」と思います。月桃の葉を一枚一枚広げ、餅粉をやさしく包み込む手作業は、沖縄の冬の風物詩として大切に繰り返されてきたものです。

厳しい寒さをしのぎ、健康を願うムーチーは、形を変えながらも、長年にわたり大切に受け継がれてきました。ムーチーは、単なる食文化にとどまらず、人々の祈りや願いが形となったもので、世代を超えて親しまれ続けているものですね。