ポッドキャスト番組「Joe Rogan Experience」を頻繁に聴くと、UFOや地球外生命の存在を信じる傾向が強まるという興味深い研究結果が発表されました。一見すると突飛な話に思えるかもしれませんが、これは統計データによって裏付けられた有意な結果のようです。
Joe Rogan Experienceとは?
ジョー・ローガン氏は、アメリカのコメディアンであり、総合格闘技(UFC)の解説者としても知られています。彼がホストを務めるポッドキャスト「Joe Rogan Experience」は、2009年に配信を開始しました。長時間にわたる対談形式で、多様なテーマを深く掘り下げることが特徴です。例えば、俳優のロバート・ダウニー・Jr.や実業家のイーロン・マスク氏など、著名なゲストが多数出演しています。番組はSpotifyやYouTubeなどで配信されており、特に若年層の男性リスナーから高い支持を得ています。
研究内容と結果
この研究は、アメリカ在住の18歳以上の成人1,562人を対象に実施されました。参加者には、Joe Rogan Experienceを聴く頻度、地球外生命体やUFOに関する信念、さらに教育水準や政治的傾向について回答してもらい、回帰分析を用いて分析しました。この分析手法を用いることで、様々な要因が結果にどの程度影響を与えるかを明らかにすることができます。
分析の結果、Joe Rogan Experienceのリスナーは、そうでない人に比べて、UFOや地球外生命体の存在を信じる傾向が有意に高いことが示されました。興味深いことに、この傾向には、リスナーの属性によって差異が見られました。具体的には、教育水準が低い人ほど、また、政治的に中立または右寄りの立場を持つ人ほど、その傾向が強いことが分かりました。一方で、他のポッドキャストやメディアを消費している人々には、こうした影響はほとんど見られませんでした。
因果関係か相関関係か
しかし、ここで重要なのは、因果関係の方向性についてです。「Joe Rogan Experience」を聴くことで信念が強まるのか、それとももともとUFOや地球外生命を信じる傾向がある人々がこの番組に惹かれるのか—どちらの可能性も否定できません。この点について、研究者たちはさらなる調査が必要であると指摘しています。たとえば、UFOの存在をすでに信じている人々が、この番組のUFO関連のエピソードやテーマに共感し、自然と引き寄せられることも考えられます。この現象は「選択バイアス」の一例として説明される可能性があります。
この現象を「洗脳」と呼ぶべきかどうかも慎重に考える必要があります。Joe Rogan Experienceでは、UFOや地球外生命に関する議論が頻繁に取り上げられます。ゲストも多岐にわたり、独特な視点や議論を提供しており、リスナーに新たな視点を与えています。ただし、その影響力が信念の形成や強化につながる過程は、情報提供以上の何か—心理的影響—を含む可能性があります。
この研究から、メディアが個人の信念形成に果たす役割の大きさを改めて考えさせられるでしょう。私たちが日々接する情報は、意識せずとも考え方や価値観に影響を与える可能性があります。そのため、メディアを選ぶ際には提供される視点や情報源を批判的に見極めることが重要となります。
研究のポイント
* Joe Rogan Experienceのリスナーは、UFOや地球外生命を信じる傾向が顕著。
* 教育水準が低い人や政治的に中立・右寄りの人でその傾向が強い。
* 他のポッドキャストやメディアは信念形成にほとんど影響しない。
* メディアが個人の信念や価値観に与える影響を意識し、慎重に情報を選択する必要性あり。
日常生活で何気なく触れる情報が、私たちの考え方にどのような影響を与えているのか、改めて考えてみる必要がありますね。
参考文献:
Stise, R., Bingaman, J., Siddika, A., Dawson, W., Paintsil, A., & Brewer, P. R. (2023). Cultivating paranormal beliefs: how television viewing, social media use, and podcast listening predict belief in UFOs. Atlantic Journal of Communication, 32(4), 626–639. https://doi.org/10.1080/15456870.2023.2187803