歩くことは心の処方箋:1日7000歩が目安

 

あなたは今日、どのくらい歩きましたか?

最近ではスマートウォッチやスマホで歩数を測るのが当たり前になり、「1日1万歩が健康に良い」と耳にしたことがある人も多いでしょう。

でも実は、歩数と心の健康の関係に光が当てられた興味深い研究があるのです。

 

歩数と心の健康――研究が教えてくれること

この研究は、1日の歩数が抑うつ症状にどのように影響するかを調べたものです。

データは世界中の96,000人以上の成人を対象とし、歩数を客観的に測定するデバイス(加速度計や歩数計)を使って調査されました。

その結果、歩数が増えるほど、抑うつ症状が少なくなることがわかったのです。

具体的なデータを見てみましょう。

  • 1日5,000歩:この歩数を超えると、抑うつ症状が軽減される傾向が見られました。
  • 1日7,000歩:この歩数を目安にすると、抑うつリスクが31%低下することが示されています。
  • 1,000歩増えるごと:なんと、抑うつリスクが9%低下するのです。

この結果を見ると「歩くことは心の処方箋」だと思いませんか?

 

なぜ歩くと心が軽くなるのか

歩くことが抑うつ症状に効果的な理由は、いくつか考えられます。例えば:

  • 生物学的効果:軽い運動で脳内の神経伝達物質が活性化され、気分を安定させる効果が期待されます。
  • 心理的効果:歩くことで達成感やリフレッシュ感を得ることができ、ストレスが軽減されます。
  • 社会的効果:外に出て歩くことで、人と交流するきっかけが生まれることもあります。

これらの効果が複合的に働き、心の健康に良い影響をもたらすと考えられているのです。

 

「7,000歩」を目指して気軽に歩こう

1日1万歩という数字は確かに健康に良いかもしれませんが、経験した人は共感してくれると思いますが、達成するのは意外と大変です。

しかし、この研究からわかるのは、「7,000歩」という現実的な目標が、心の健康には十分効果的だということです。

例えば、こんな工夫で歩数を増やしてみるのはどうでしょう?

  • 通勤や買い物で少し遠回りをする
  • エレベーターではなく階段を使う
  • 朝の散歩を習慣にする

こういった小さな積み重ねが、気がつけば1日7,000歩に近づく一歩となります。

 

心の健康というと、どうしても難しく考えてしまいがちですが、「歩く」というシンプルな行動が心を軽くしてくれるのなら、少し試しても良いかも知れませんね。

「今日は少し歩いてみようかな?」

そんなふうに、いつもの道を少しだけ遠回りしてみるのもいいかもしれません。

 

参考文献:

Bizzozero-Peroni B, Díaz-Goñi V, Jiménez-López E, et al. Daily Step Count and Depression in Adults: A Systematic Review and Meta-Analysis. JAMA Netw Open. 2024;7(12):e2451208. Published 2024 Dec 2. doi:10.1001/jamanetworkopen.2024.51208