風邪をひいたり、喉が腫れたりするたびに、扁桃を取る手術を勧められることがあります。
扁桃とアデノイドは、口や鼻の奥にあるリンパ組織で、細菌やウイルスから体を守る免疫の役割を果たしています。
扁桃やアデノイドの摘出手術は、呼吸が楽になったり、感染症を防いだりする効果が期待できるため、子どもを中心によく行われる手術です。
しかし、最近の研究で「この手術が心の健康にも関わるかもしれない」ということがわかってきました。
スウェーデンにおける大規模調査
スウェーデンで行われた大規模な調査では、手術を受けた子どもや若者と、受けなかった人を比較して、ストレス関連の病気がどれくらい起きやすいかが調べられました。
手術とストレス関連障害の関係
この研究は約105万人を対象に行われ、手術を受けた人たちのリスクがデータで示されました。
- 手術を受けた人:10,000人あたり33.3人がストレス関連障害を発症
- 手術を受けなかった人:10,000人あたり22.7人が発症
この数字は、手術を受けた人が1.43倍もストレス関連障害になりやすいことを示しています。
特に「PTSD(心的外傷後ストレス障害)」は、手術を受けた人で1.55倍のリスクがありました。
この傾向は兄弟同士で比較しても変わらなかったため、遺伝や家庭の影響だけが原因とは言えないようです。
手術が心に影響する可能性:考えられる要因
「扁桃を取る手術がなぜ心に影響するの?」と疑問に思うかもしれません。
もちろん、相関関係は因果関係ではありません。1 つの可能性、おそらく最も可能性が高い可能性は、扁桃摘出が他の何らかの問題の兆候であるということです。
研究者たちは次のような理由を考えています。
- 慢性の炎症が関係している可能性: 手術が必要になるほどの炎症や呼吸の問題が、免疫システムや体にストレスを与え、心にも影響することが考えられます。
- 手術や入院のストレス: 手術を受ける経験や、麻酔、術後の痛み、病院で過ごす時間は、特に子どもにとって大きな心理的負担になることがあります。
- 免疫機能の変化: 扁桃やアデノイドは、体を守る免疫の役割を果たしています。それを取ることで、体の反応や健康に変化が出る可能性があります。
こうした理由が組み合わさり、手術後に心の不調を経験しやすくなるのかもしれません。
心の健康もケアする必要がある
手術にはもちろん大きなメリットがあります。風邪をひきにくくなったり、睡眠の質が上がったりすることで、日常生活が快適になる人も多いです。しかし、心の健康についても意識しておくと、より安心です。
- 手術後のサポート: 手術を受けた後、不安やストレスがないか、周りの大人や友達が気にかけてあげる必要があります。
- 健康的な生活習慣: しっかり睡眠を取ったり、バランスの取れた食事をすることが、体と心の健康を支えます。
- 早めに相談: ストレスや不安を感じたら、学校の先生やカウンセラー、医療の専門家に早めに相談することが大切です。
この研究が教えてくれたのは、手術後の「心の健康」にも気をつけることが大事だということです。体と心はつながっています。どちらの状態にも耳を傾けていたいですね。
参考文献:
Xiao X, Yang F, Yin L, et al. Stress-Related Disorders Among Young Individuals With Surgical Removal of Tonsils or Adenoids. JAMA Netw Open. 2024;7(12):e2449807. doi:10.1001/jamanetworkopen.2024.49807