「早起きは三文の徳」とよく言いますが、マラソン大会ではどうやら本当のようです。
朝型か夜型かという私たちの“体内時計”、つまり概日リズムが、レースの結果に影響していることが最新の研究で明らかになったのです。
夜型ランナーはタイムが遅い?
2016年のロンドンマラソンに参加したランナーのうち、調査に同意した943人を対象に、概日リズム(朝型か夜型か)と睡眠慣性(起床後に眠気が残る状態)が完走タイムにどう影響するのか調べた研究が発表されました。
この研究によると、夜型のランナーほどマラソンのタイムが遅いことが示されています。
参加者を自己申告で「朝型」から「夜型」まで4つのタイプに分類した結果、以下のような傾向が見られました:
- 朝型タイプ(Definitely morning)の平均完走時間:244分(4時間04分)
- 夜型タイプ(Definitely evening)の平均完走時間:257分(4時間17分)
つまり、朝型のランナーは夜型に比べて13分ほど速くゴールしていたのでした。
けれども、平均完走時間が4時間04分とか4時間17分って、ロンドンマラソン、さすがとしか言いようがありません。
なぜ朝型が有利なのか?
マラソンはほとんどの場合、朝早くスタートします。
午前中にピークのパフォーマンスを発揮する「朝型ランナー」にとって、朝のレースは体内時計に自然と合っているのです。
一方、夜型のランナーはまだ体が“目覚めていない”状態でスタートするため、本来の力を発揮しづらいと考えられます。
さらに興味深いのは、夜型の人ほど「夜に電子機器を使う」「アルコールの摂取が多い」といった傾向も見られたことです。
こうした生活習慣が睡眠の質に影響し、結果的にレースパフォーマンスにも影響しているのかもしれません。
睡眠慣性――起きた後の眠気も問題に
研究ではもう一つ重要な要素として、睡眠慣性が挙げられています。
睡眠慣性とは、起床後にぼんやりとした状態が続く現象で、マラソン前の準備や集中力に影響を及ぼす可能性があります。
この研究では、起床後30分以内の「覚醒度」を評価し、次のことがわかりました:
- 眠気が残るランナーほど完走タイムが遅くなる傾向にあった。
ただし、睡眠慣性については統計的な確証はやや弱かったものの、体がすぐに目覚めないことがパフォーマンスの低下につながる可能性は十分考えられます。
朝型に変わればパフォーマンスが上がる?
夜型ランナーにとっては「朝型に変わればタイムが速くなるかも」と期待したいところです。
実際、体内時計を少しずつシフトする「光療法」や、睡眠慣性を軽減する「目覚め対策」はすでに提案されています。例えば:
- 就寝・起床時間を早めることで体内リズムを調整する。
- 起床直後に明るい光を浴びる、音楽や軽いストレッチで体を目覚めさせる。
こうした工夫を重ねれば、夜型ランナーでも朝のレースに適応しやすくなるかもしれません。
体内時計と賢く付き合おう
マラソンのタイムは日々の練習や努力の賜物ですが、自分の体内時計をうまく活用すれば、さらにパフォーマンスを伸ばせる可能性があります。
- 朝型ランナーは有利:特に早朝スタートのレースでは力を発揮しやすい。
- 夜型ランナーは工夫が必要:睡眠習慣や生活リズムを整えることで改善の余地がある。
- 睡眠慣性の軽減:目覚め後すぐに行動できる工夫が大切。
「自分は夜型だから」と諦める必要はありません。
日常の生活リズムや睡眠習慣を少しずつ見直すことで、パーソナルベストを超えていけるかも知れません。
参考文献:
Gratton MKP, Charest J, Lickel J, et al. Influence of circadian preference, sleep inertia and their interaction on marathon completion time: A retrospective, cross-sectional investigation of a large mass-participation city marathon. J Sleep Res. Published online October 19, 2024. doi:10.1111/jsr.14375