「社会的時差ボケ」という言葉があるのだそうです。
これは、平日の社会的スケジュール(例: 仕事や学校)と週末や休日の自由な睡眠スケジュールのズレによって生じる体内時計の乱れを言います。
これは、現代社会における複雑な生活リズムを理解する上で重要です。
最近の研究では、この社会的時差ボケがダイエットの効果に直接的な影響を与える可能性があることが報告されています。
研究の背景と目的
2015年から2018年にかけて、東京医科大学の研究チームが日本の民間パーソナルトレーニングジムに通う11,829人の成人を対象に観察研究を行いました。
この研究では、週2回の筋力トレーニングと個別の栄養指導を受ける参加者の睡眠スケジュールと、体重および体脂肪の変化との関連を調査しました。
研究の目的は、睡眠リズムの乱れ、特に社会的時差ボケ(SJL)が体重管理にどのように影響を与えるかを明らかにすることでした。
主な結果
この研究では、SJLの大きさによって以下の3つのグループに分けました。
- SJLが1時間未満: 体重減少率は平均8.8%、体脂肪減少率は19.5%
- SJLが1–2時間未満: 体重減少率は平均7.4%、体脂肪減少率は15.9%
- SJLが2時間以上: 体重減少率は平均5.9%、体脂肪減少率は12.8%
これらの結果は、SJLが大きいほど体重や体脂肪の減少が抑制される傾向があることを示しています。
また、年齢や性別、初期の体重や体脂肪率、さらには食事の内容などを統計的に調整した場合でも、この傾向は一貫して観察されました。
考察と結論
社会的時差ボケがダイエットに与える影響は、睡眠の不規則性が体内時計を乱し、これが代謝やホルモン分泌のバランスに悪影響を及ぼすためと考えられます。
例えば、週末に遅く起床し、睡眠時間が変動することによってエネルギーバランスの乱れに繋がる可能性があります。
この研究は、規則正しい睡眠リズムを維持することが健康的な体重管理において重要であることを示唆しています。
特に、平日と休日の睡眠スケジュールのズレを1時間以内に抑えることが推奨されます。
今後の課題
ただし、この研究にはいくつかの限界が存在します。
例えば、SJLが具体的に代謝やホルモンにどのように影響するかといったメカニズムの詳細は依然として不明です。
また、この影響が人種や文化によって異なるのかは不明です。
さらには、生活習慣や食事内容の詳細な記録が不足している点も課題として挙げられます。
さらに、社会的時差ボケの評価には自己申告データが用いられたため、客観的なデータとの比較が求められます。
参考文献:
Minabe K, Shimura A, Sugiura K, et al. Association between social jetlag and weight and fat reduction in dieting. Sleep Biol Rhythms. 2024;22(4):513-521. Published 2024 Jun 24. doi:10.1007/s41105-024-00539-8