病院での診察や入院時に、患者が着用する患者服。
この患者服が患者の精神状態に与える影響について、オークランド大学の研究チームが興味深い調査を行いました。
この研究では、患者服が患者の「非人間化」の感情を高める可能性が示されました。
非人間化とは?
非人間化とは、簡単に言えば「人間らしさを失わせる」感覚、または「自分が人間以下の存在に扱われている」と感じる状態を指します。
病院という特殊な環境で、患者が非人間化を感じることは、心理的なストレスを増幅させるだけでなく、治療意欲の低下や回復の妨げにもなり得ます。
研究の概要
この研究では、74名の成人参加者を「患者服着用グループ」と「普段着着用グループ」の2つにランダムに分け、模擬入院面接を実施しました。
参加者は標準的な医療インタビューを受け、その後、非人間化感情を測定する質問紙に回答しました。
結果として、以下の点が明らかになりました。
- 非人間化スコア
- 患者服着用グループの平均スコア:23.47点(95%信頼区間:20.58-26.37)
- 普段着着用グループの平均スコア:18.03点(95%信頼区間:16.36-19.69)
- この差は統計的に有意(P = 0.001)
- 病衣(患者衣)に関するフィードバック
- 患者服を着用した参加者のうち9名が、その不快感について具体的なコメントを寄せました。
- 例: “病衣(患者衣)を着ると、不安で弱々しい気持ちになり、堂々と発言する自信を失いました”(男性、26歳)。
考察と提言
この研究は、患者服が患者の心理的負担を増幅させる可能性を初めて実験的に示しました。
患者服は感染予防や診察の効率化に寄与する一方で、その使用が必ずしも必要でない場合には、患者が普段着で診察を受けられる選択肢を提供することが重要です。
また、研究では話し言葉や血圧に有意な差は見られませんでしたが、患者が自分の着衣について否定的な意見を持つことが確認されました。
これらの結果は、患者の心理的な側面への配慮が医療現場でのケアの質を高める鍵となることを示唆しています。
まとめ
- 患者服は患者の非人間化感情を増幅させる可能性がある。
- 必要に応じて普段着の選択肢を提供することが推奨される。
- 心理的ケアを重視することで、患者の満足度や治療効果が向上する可能性がある。
医療現場での患者ケアには、身体的な治療だけでなく、患者の尊厳や心理的な安心感を守るための工夫が求められる時代となっています。この研究は、その重要性を再認識させるものでした。
参考文献:
Punchihewa GC, Broadbent E. Patient Gowns and Dehumanization During Hospital Admission: A Randomized Clinical Trial. JAMA Netw Open. 2024;7(12):e2449936. doi:10.1001/jamanetworkopen.2024.49936
