現代社会において、睡眠不足は深刻な問題となっています。
厚生労働省の調査によると、日本人の約3割が睡眠に不満を感じており、睡眠不足による経済損失は年間3兆円にものぼると言われています。
徹夜明けの仕事や試験勉強、長距離運転など、睡眠不足が避けられない状況に追い込まれることも少なくありません。
そんな時、頼りになるのはコーヒーやエナジードリンクだけではありません。
最新の研究では、クレアチンという物質が、睡眠不足による集中力低下や疲労感を軽減する効果を持つ可能性が示唆されています。
クレアチンとは?
クレアチンは、筋肉や脳のエネルギー供給を支える重要な物質です。
スポーツ界では、運動能力向上や疲労回復の効果で広く知られていますが、近年の研究で、脳の機能向上にも効果が期待されています。
ドイツの研究チームによる実験
ドイツの研究チームは、15名の成人被験者を対象に、クレアチンの睡眠不足に対する効果を検証する実験を行いました。
被験者は21時間の睡眠不足状態に置かれた後、体重1kgあたり0.35gのクレアチンまたはプラセボ(偽薬)を摂取。二重盲検法を用い、公平な条件下で実験が行われました。
その結果、クレアチンを摂取した被験者では以下のような効果が確認されました。
- 認知機能の向上: 記憶タスクや情報処理速度が明らかに改善。
- 言語タスク(例:単語の記憶、文章の読解)で5.6%向上。
- 論理的思考タスク(例:パズル、推理問題)で13.7%向上。
- 数字タスク(例:暗算、計算問題)で24.5%向上。
- 疲労感の軽減: 主観的な疲労感が8%減少。
- 脳内代謝の改善: 脳内のエネルギー代謝を支えるリン酸クレアチン(PCr)が増加し、pHの低下を防ぐことで脳環境の安定化が確認されました。
クレアチンの活用シーン
この研究では、クレアチン摂取後4時間で効果がピークに達し、9時間程度持続することが分かっています。
徹夜明けの仕事や試験前の準備、夜勤、さらには長時間運転など、睡眠不足が避けられない状況において、クレアチンは心強い味方となってくれる可能性があります。
注意点と今後の展望
ただし、クレアチンの摂取量やタイミングについてはさらなる研究が必要です。
また、睡眠不足そのものを補うものではないため、十分な睡眠を取る努力が重要であることは言うまでもありません。
クレアチンは、睡眠不足が引き起こす集中力低下や疲労感を緩和し、認知機能を維持する新たな可能性を示しています。
将来的には、睡眠不足対策の切り札として、より効果的な活用法が確立されることが期待されます。
忙しい日々の中で、必要に応じてクレアチンの力を活用しながら、健康的な生活を送るヒントにしてみてはいかがでしょうか?
参考文献:
Gordji-Nejad, A., Matusch, A., Kleedörfer, S. et al. Single dose creatine improves cognitive performance and induces changes in cerebral high energy phosphates during sleep deprivation. Sci Rep 14, 4937 (2024). https://doi.org/10.1038/s41598-024-54249-9