日々の生活で、エレベーターと階段のどちらを使うか迷うことはありませんか?
実は、このちょっとした選択が、私たちの脳や気分にかなりの影響を及ぼす可能性があります。
今回紹介するのは、若年成人を対象にした研究で、階段昇降が認知機能と気分に与える効果を検証したものです。
その結果は、日常生活に階段昇降を取り入れることの有益性を示唆する、非常にポジティブなものでした。
研究方法
この研究には18〜24歳の健康な若年成人52名(男女比50%)が参加しました。
研究デザインはランダム化対照クロスオーバー試験で、参加者全員が「階段昇降セッション」と「コントロールセッション(運動なし)」の両方を経験しました。
この方法により、各条件下での個々の違いを排除し、運動効果をより正確に測定することが可能となります。
階段昇降セッションでは、次の手順を行いました:
- 2分間のウォームアップ後、1分間の階段昇降を6回行い、各インターバルで1分間の休憩を挟みました。
- すべての運動が終わった後、3分間のクールダウンを実施しました。
一方、コントロールセッションでは、同じ時間を椅子に座って過ごし、その後、同じ認知テストを受けました。
研究結果
この研究から、階段昇降は認知機能および気分に大きな効果をもたらすことが分かりました。
特に、以下の2つの効果が確認されました:
- 認知機能の向上
- 階段昇降後、参加者は認知切り替えタスク(「Pro/Antiタスク」)において反応時間が短縮され、タスクをより迅速にこなせるようになりました。これにより、脳の切り替え能力が向上したことが示唆されます。
- 気分の向上
- 気分の自己評価において、「エネルギッシュである」と感じるスコアが44.92から56.39に上昇し、「幸せ」と感じるスコアも58.79から64.37に増加しました。
なぜ階段昇降が効果的なのか?
この研究が示すように、階段昇降は日常生活に簡単に取り入れられる運動でありながら、認知機能の向上や気分の改善といった即時の心理的効果をもたらします。
運動と聞くと、ジムでのトレーニングや長時間のランニングなどをイメージするかもしれませんが、階段昇降のような、日常生活に簡単に取り入れられるものでも、十分な効果を得られることが示唆されています。
「エネルギッシュになりたい」「頭をすっきりさせたい」と感じるときには、ほんの数分間の階段昇降が効果的かもしれません。
さらに、階段昇降の効果は性別や運動習慣に関係なく、誰でも得られることが分かっています。
まとめ
- 階段昇降は認知切り替え能力を向上させる効果がある。
- 階段昇降は「エネルギッシュさ」や「幸せ感」を向上させる。
- これらの効果は性別や日常的な運動習慣に関係なく得られる。
日々の生活の中で、例えば職場や学校でエレベーターの代わりに階段を使うという、ほんの少しの心がけが、気分転換や集中力向上に繋がるかも知れません。
次にエレベーターを使うか階段を使うか迷ったとき、どちらを選びますか?笑
参考文献:
Stenling, A., Quensell, J., Kaur, N. et al. Stair Climbing Improves Cognitive Switching Performance and Mood in Healthy Young Adults: A Randomized Controlled Crossover Trial. J Cogn Enhanc 8, 191–205 (2024). https://doi.org/10.1007/s41465-024-00294-1