コロナ禍のロックダウンは、多くの人にとって、孤独を感じ、日常の単調さに鬱々としていた辛い時期だったでしょう。
孤立した環境下で、どのように精神的な充実を図るかは、当時の共通の課題でした。
そして今、その課題に対するヒントを与えてくれる研究が登場しました。
それは、意識的に「非日常」体験を取り入れることです。
カナダの研究チームは、60歳から81歳の高齢者18名を対象に、スマートフォンアプリ「HippoCamera」を使用した実験を実施しました。
このアプリは、日常の出来事を記録し、後で再生することで記憶の定着を促すものです。
参加者は8週間にわたり、毎日少なくとも1つの出来事を記録し、それを再生しました。
この実験の結果、ユニークな出来事は日常的な出来事よりも詳細に記憶されやすいことが明らかになりました。
さらに、ユニークな体験をした日は、ポジティブな感情が増加し、退屈感が軽減され、時間の流れが速く感じられる傾向があることもわかりました。
例えば、普段と異なる場所を訪れたり、新しい料理に挑戦したり、久しぶりに友人と交流するなど、「非日常」体験は、日常の単調さを打破し、主観的な幸福感を高める効果を持つことが示唆されています。
研究結果の要約
- ユニークな出来事の記憶定着効果:
- ルーチン的な出来事と比較して、ユニークな出来事はより鮮明に記憶に残ることが確認されました。
- ポジティブな感情の向上:
- ユニークな出来事があった日は、ポジティブな感情が増加しました。
- 退屈感の軽減:
- 新たな体験を取り入れることで、退屈感が顕著に軽減されました。
- 時間の知覚への影響:
- ユニークな出来事を経験した日は、時間が速く過ぎると感じる傾向が強まりました。
日常生活における非日常体験の意義
本研究の示唆は、高齢者だけでなく、孤独を感じるすべての人にとって有用です。
新しい趣味に挑戦したり、行ったことのない場所を訪れたり、普段とは異なる料理を試したりするなど、わずかな「非日常」を日常に取り入れることで、精神的・身体的な健康に良い影響をもたらす可能性があります。
必ずしも大きな冒険である必要はありません。
小さな新しい体験が、日常生活に新たな意味を与え、エピソード記憶の質や幸福感を向上させる可能性を秘めています。
参考文献:
Meade, M.E., Chang, M., Savel, K. et al. Unique events improve episodic richness, enhance mood, and alter the perception of time during isolation. Sci Rep 14, 29439 (2024). https://doi.org/10.1038/s41598-024-80591-z
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