水分を摂ることは健康のためになる

 

クリニックで診察をしていると、水分不足で脱水症状になっている患者さんが意外と多く、驚かされます。

「水分をこまめに取りましょう」とよく言われますが、これは熱中症予防のためだけではありません。

毎日の水分補給は、健康全体に大きく関わっています。

日頃からしっかり水分を摂ることは、健康にとても良い影響を与えます。

多くの研究で、その効果が証明されています。

 

例えば、最近の研究では、実際に水をたくさん飲むことで、健康にどんな良い影響があるのかを調べる実験が行われました。

この研究では、体重管理や尿路結石の予防など、様々な健康効果における水分摂取の役割を調べています。

その結果、こまめな水分補給が、私たちの体に様々な良い効果をもたらすことがわかりました。

 

水分補給で期待できる効果

 

体重管理への効果

食事の前に1,500 mLの水を飲むと、体重が減りやすくなるという研究結果があります。この方法を試した人は、そうでない人に比べて、約44%から100%も多く体重を減らすことができたそうです。食事前に水を飲むことでお腹がふくれ、食べる量が自然と減るため、体重管理がしやすくなるのですね。

 

尿路結石予防への効果

尿路結石の再発を防ぐには、1日に2,000 mL以上の尿量を維持することが重要です。そのためには、水分を十分に摂る必要があります。水をあまり飲まなかったグループでは27%の人が尿路結石を再発したのに対し、水をたくさん飲んだグループでは、その割合が12%にまで減りました。このように、シンプルな水の摂取量の増加が、結石の再発を大幅に減少させることがわかっています。

 

片頭痛予防への効果

また、日常的に頭痛に悩まされている方も、水分をたくさん摂ることで症状が和らぐ可能性があります。片頭痛に関する研究では、毎日1,500 mLの水を余分に飲むことで、生活の質が向上したという結果が出ています。まだはっきりとした証拠があるわけではありませんが、水分補給が頭痛予防に役立つ可能性も示されています。

 

尿路感染症予防への効果

尿路感染症の予防にも、水分補給は効果的です。特に、普段から水分をあまり摂らない女性は、水をたくさん飲むことで尿路感染症にかかりにくくなることがわかっています。水をたくさん飲むと、尿が薄くなって細菌が体の外に出やすくなるため、感染症のリスクが減ると考えられています。

 

まとめ

以下は、水分摂取の増加による主な健康効果のまとめです。

  • 体重減少:
    • 食事前に1,500 mLの水を飲むことで、体重減少が44%から100%増加。
  • 尿路結石の予防:
    • 尿量を1日2,000 mL以上に保つことで、再発率が27%から12%に減少。
  • 片頭痛の予防:
    • 1,500 mLの水を追加することで、生活の質の改善が見られる可能性あり。
  • 尿路感染症の予防:
    • 水を多く飲むことで、尿路感染症の頻度が減少。

 

水をたくさん飲むことは、お金もかからず簡単にできます。

そして、私たちの健康に多くの良い効果をもたらす可能性があります。

健康のために、ぜひこまめな水分補給を心がけてみてはいかがでしょうか。

 

水分補給に関する追加情報

  • 1日に必要な水分量:
    • 一般的に、成人では1日あたり約2リットルの水分摂取が推奨されています。ただし、活動量や気候などによって必要な量は変化します。
  • 水分補給に適した飲み物:
    • 水だけでなく、お茶やコーヒーなども水分補給に役立ちます。ただし、糖分の多いジュースやスポーツドリンクは、摂り過ぎに注意が必要です。
  • 脱水症状の見分け方:
    • 口の渇き、尿量の減少、疲労感、頭痛などは、脱水症状のサインです。これらの症状が現れたら、すぐに水分補給を行いましょう。

  

参考文献:

Hakam N, Guzman Fuentes JL, Nabavizadeh B, et al. Outcomes in Randomized Clinical Trials Testing Changes in Daily Water Intake: A Systematic Review. JAMA Netw Open. 2024;7(11):e2447621. doi:10.1001/jamanetworkopen.2024.47621