血圧が高いと認知症のリスクがあがる

 

「血圧が高いと認知症のリスクが上がる」という話があがってきました。

血圧管理を啓蒙する医療者が、またまた大げさなことを言いだしてきたなと思う方もいるかも知れませんが、極めてマジメなお話です。

最近の研究で、血圧と認知症のリスクに密接な関係があることが示されました。

 

この研究は、14か国から31,250人の高齢者を対象にした国際共同研究によって実施されました。

平均年齢72歳の参加者の血圧データと降圧薬の使用状況に焦点を当て、アルツハイマー型認知症(AD)およびその他の認知症との関連性を調べました。

その結果、高血圧を治療しないままでいると、特にアルツハイマー型認知症や他の認知症のリスクが増加することがわかりました。

 

高血圧と認知症リスクの関係

この研究によると、血圧が高いにもかかわらず治療を受けていない人は、アルツハイマー型認知症のリスクが36%増加することがわかりました。

また、他の種類の認知症についても42%リスクが増加するという結果が得られています。

一方、降圧薬を使用している人では、これらのリスクが大幅に低減することが確認されました。

 

さらに、拡張期血圧(心臓が拡張しているときの血圧)と認知症リスクの間にも興味深い発見がありました。

拡張期血圧が高すぎても低すぎても、非アルツハイマー型認知症のリスクが増加するという「U字型の関係」が見られたのです。

このことから、血圧を適切に管理することの重要性が再確認されます。

 

 

図は、年齢による収縮期血圧(SBP)および拡張期血圧(DBP)とアルツハイマー型認知症(AD)やその他の認知症リスクとの関連性を示しています。

図Aでは、収縮期血圧と認知症リスクの関係が描かれており、異なる年齢グループ(60、70、80、90歳)ごとのリスクの変化を示しています。

年齢が若いほど、SBPが高くなるとリスクが急激に上昇することがわかります。

 

一方、図Bでは拡張期血圧と認知症リスクの関係が示されており、特に高齢のグループにおいて、DBPの変動に対するリスクがU字型の傾向を示しています。

これにより、拡張期血圧が適切な範囲内に保たれることが、非アルツハイマー型認知症のリスク低減に重要であることが示唆されています。

 

研究結果のまとめ

高血圧を治療しない場合:アルツハイマー型認知症のリスクが36%増加します。

– 降圧薬を使用している場合:アルツハイマー型認知症のリスクを大幅に低減できます。

– 拡張期血圧の関係:非常に高い、または低い拡張期血圧は、非アルツハイマー型認知症のリスクを増加させます。

 

この研究から示されるのは、高齢期においても血圧管理が非常に重要であるということです。

高血圧が認知症リスクにどのように影響するかを理解することは、自身の健康管理に対する意識を高めることにつながります。

 

血圧管理は、将来の健康を守るための重要な要素です。

早期に血圧をチェックし、必要であれば適切な治療を受けることで、認知症リスクを減少させることが期待できます。

将来の健康を守るために、今できることを始めましょう。

 

参考文献:

Lennon MJ, Lipnicki DM, Lam BCP, et al. Blood Pressure, Antihypertensive Use, and Late-Life Alzheimer and Non-Alzheimer Dementia Risk: An Individual Participant Data Meta-Analysis. Neurology. 2024;103(5):e209715. doi:10.1212/WNL.0000000000209715