「どのような生き方が老後の幸福に結びつくのだろう?」
誰もが一度は考える問いかも知れません。
誰かと一緒に過ごすこと、一人で自由を楽しむこと、それぞれに良さがあるでしょう。
ところが、それが実際にどのように幸福な老後に影響するのかは意外と知られていません。
今回は、カナダの研究を基に、結婚やパートナーシップが老後の幸福にどのように関連するのかを探ってみたいと思います。
この研究は、カナダの約7600人の高齢者を対象に行われ、「結婚状態の変化」がどのように幸福な老後(健康で満足した老後生活)に関係するのかを調べたものです。
結婚が老後に与える影響、特に男性と女性でどう違うのかが注目されました。
幸福な老後とは?
「幸福な老後」とは、身体的・心理的に健やかで、社会的なつながりや満足感がある状態を指します。
この研究では以下の条件を満たすことが「幸福な老後」と定義しました。
– 日常生活の活動(ADL)に不自由がない。
– 慢性的な痛みがない。
– 認知機能に問題がない。
– 深刻な精神疾患がない。
– 十分な社会的支援がある。
– 良好な自覚的健康状態。
結果:結婚と老後の関係
この研究から明らかになったのは、結婚の状態が男女で異なる影響を与えるということでした。
具体的には以下の通りです:
– 男性:
– 継続的に結婚している場合、幸福な老後の可能性が2倍以上(オッズ比=2.56)。
– 新たに結婚した場合、その可能性はさらに高まり約3.8倍(オッズ比=3.83)。
– 一方で、離婚や別居状態では有意な影響が見られませんでした。
– 女性:
– 結婚状態の変化は全体的に幸福な老後に大きな影響を与えませんでしたが、結婚から未婚状態への変化は幸福度を大きく下げました(オッズ比=0.48)。
– 共通点:
– 若い年齢(55~74歳)や社会的孤立がないこと、定期的な運動習慣が幸福な老後を促進しました。
なぜこんな違いがあるのか?
男性の場合、結婚は生活の安定感や健康習慣を保つ手助けになる可能性があります。
一方で、女性は結婚以外の要因(収入や健康状態)がより大きな影響を持つことが示されています。
これから私たちができること
結婚が直接的な健康の鍵ではないかもしれませんが、社会的つながりを大切にすることが老後の幸福にとって重要です。
また、運動習慣や睡眠の改善など、身近な生活習慣を見直すことも幸福な老後を支える手段となります。
– 男性向けアドバイス:
– 健康的なパートナーシップを築き、生活を安定させる。
– 女性向けアドバイス:
– 経済的自立や健康管理を優先し、自分のペースで安心できる環境を整える。
– 共通のヒント:
– 家族や友人とのつながりを保つ。
– 適度な運動を日常に取り入れる。
老後の生き方について考えるとき、結婚や家族のあり方だけでなく、個人の生活習慣や社会とのつながりをどう育てるかが鍵になりそうです。
参考文献:
Ho, M., Pullenayegum, E., Burnes, D., & Fuller-Thomson, E. (2024). The association between trajectories of marital status and successful aging varies by sex: Findings from the Canadian Longitudinal Study on Aging (CLSA). International Social Work, 0(0). https://doi.org/10.1177/00208728241267791