「ストレッチって、柔軟性を高めるためだけのもの」
きっと多くの方がそう考えるでしょう。
体がコリ固まってしまったと感じた時や、運動前に体をほぐす手段としてストレッチを取り入れている方も少なくないはずです。
けれども、最近の研究によって、静的ストレッチにはさらに意外な効果があることがわかってきました。
実は、筋肉の成長や筋力アップにも役立つ可能性があるのです。
研究では、1,318人を対象に、少なくとも2週間以上続けた静的ストレッチの効果が調べられました。
一般的にストレッチは短時間で行われがちですが、この研究では15分以上の長時間ストレッチや6週間以上の継続が、筋肉にどのような影響を及ぼすかを検証しています。
興味深いことに、適切な条件で行われた静的ストレッチが筋力向上や筋肉の増加に寄与することが確認されました。
以下に、具体的な結果をまとめてみます。
– 筋力向上:15分以上の静的ストレッチで、筋力がわずかに向上(効果量d=0.30、p<0.001)。
– 筋肥大:筋肉サイズも少しずつ増加する傾向が見られました(d=0.20、p=0.003)。特に15分以上の長時間ストレッチで効果が顕著。
– 長期間の実施が有効:6週間以上の期間で、筋力向上と筋肥大の効果が表れました。
– 高頻度での実施が効果的:週5回以上ストレッチを行うことで、筋肉の増加が特に顕著に。
静的ストレッチが筋力と筋肥大に効果をもたらす理由は以下のように考えられています。
– 筋肉への張力の影響:長時間・高頻度のストレッチが筋肉に持続的な張力を与え、その結果、筋力と筋肥大を引き起こします。
– 血流の改善:継続的なストレッチにより筋肉内の血流が改善し、栄養と酸素の供給が増加し、筋肉の修復と成長を促進します。
静的ストレッチだけで筋力アップを狙うことは可能ですが、効果はあくまで小規模です。
筋肉を効率よく鍛えたい場合には、従来の筋力トレーニングと併用することで、より効果的な結果が期待できるでしょう。
ストレッチは、トレーニング後のリカバリーや柔軟性向上にも役立つため、筋力トレーニングの補助的な役割も果たします。
もし静的ストレッチを日常に取り入れるなら、以下のポイントを参考にしてみてください。
– 1回のストレッチ時間:15分以上を目安に。
– 実施期間:少なくとも6週間は継続。
– 頻度:週5回以上が効果的。
これまで「柔軟性向上のためだけ」と思われがちだったストレッチですが、その効果は意外と広範囲に及ぶことが分かってきました。
習慣的に取り入れることで、体が柔らかくなるだけでなく、筋力や筋肉の成長にも良い影響を与えるかもしれません。
参考文献:
Warneke K, Lohmann LH, Behm DG, et al. Effects of Chronic Static Stretching on Maximal Strength and Muscle Hypertrophy: A Systematic Review and Meta-Analysis with Meta-Regression. Sports Med Open. 2024;10(1):45. Published 2024 Apr 19. doi:10.1186/s40798-024-00706-8