「たくさん狩猟すれば減るはず」……そんなイメージがある野生動物ですが、ある動物に関してはそうではないという、興味深い結果が出ています。
その動物とは、アメリカ各地に生息するコヨーテ。
日本ではあまり馴染みのないコヨーテですが、アメリカでは非常にありふれた存在らしいです。
コヨーテは北アメリカ全域に広く分布し、その適応力の高さから都市部や農村部を問わず生息しています。
そのため、家畜や農作物への被害が報告されることがあり、特に農業地域では害獣として認識されることがあります。
アメリカ合衆国の多くの州では、コヨーテは狩猟対象とされており、年間を通じて狩猟が許可されている場合もあります。
例えば、ワイオミング州ではコヨーテの個体数管理を目的として、狩猟コンテストが開催されることがあります。
これらのコンテストでは、参加者ができるだけ多くのコヨーテを捕獲し、その数に応じて賞金が授与される仕組みとなっています。
ところが、通常、人間による狩猟は個体数を抑制する効果が期待されるものですが、コヨーテの場合はなぜか反対の結果が現れるのだそうです。
この研究では、北米全体で3年間にわたる大規模なカメラ調査を行い、人間の影響や生息地、さらには大型捕食者との関係が、コヨーテの個体数にどう影響するのかを調べました。
その結果、意外にも「狩猟」がコヨーテを減らすどころか、逆に増やすことがあると分かったのです。
研究の概要と結果
調査は、北米大陸にわたる4,587地点で行われ、各地域のコヨーテの出現頻度を追跡するために、100メートルと5キロメートルの2つの距離スケールでデータを収集しました。
研究チームはバイエシアン階層モデルという統計手法を用いて、以下のような興味深い結果を見出しました。
主な結果
– 生息地の影響
– 草地や農地ではコヨーテの数が増加しやすい。
– 都市部では100メートルの近距離でコヨーテの数が減少する一方で、5キロメートルの広い範囲では増加傾向が確認された。
– 自然と都市の境界エリアではコヨーテが特に増えやすいことが判明。
– 捕食者の影響**
– 森林エリアではクマやピューマの存在がコヨーテの数を抑える傾向が見られた。
– 一方、オオカミがいる森林ではコヨーテの数がむしろ増加する傾向があった。これは、オオカミが狩り残した獲物をコヨーテが頂戴するのだと考えられた。
– 狩猟の影響
– 狩猟が許可されている地域では、コヨーテの数がむしろ増加傾向にあり、狩猟がコヨーテの数を減らす効果がないことが確認された。
– この現象は、狩猟による一時的な減少が新たな個体の流入や繁殖の活性化によってすぐに補われる「補償効果」と呼ばれるものによると考えられた。
結論と管理への提言
コヨーテは他の野生生物や人間の生活環境に影響を与えるため、その数を適切に管理することが重要です。
しかし、この研究からわかったことは、単にコヨーテを狩猟で減らそうとするだけでは、かえって逆効果になる場合が多いという点です。
以下が、今回の研究から導き出されたポイントです。
– 狩猟はコヨーテの数を増やす可能性がある:単純な狩猟だけではコヨーテの数を減らせず、より多角的な管理が必要。
– 捕食者の役割:ピューマやクマなどの大型捕食者がコヨーテの数を抑制するため、地域ごとの捕食動物との共存を考えた管理が望ましい。
– 生息地の影響:草地や農地、都市と自然の境界などコヨーテが増えやすい環境特性を考慮した管理策が効果的。
参考文献:
Moll RJ, Green AM, Allen ML, Kays R. People or predators? Comparing habitat-dependent effects of hunting and large carnivores on the abundance of North America’s top mesocarnivore. Ecography. Published online August 25, 2024. doi:10.1111/ecog.07390
