被災地に最も近い病院の初動対応

 

2024年の元日、石川県能登半島で発生した震度7の地震は、多くの人々にとって忘れられない出来事となりました。

地震や津波は、決して他人事ではないです。

災害対策については、沖縄県透析医会でも非常時のネットワークを構築し、勉強会を設けたり訓練に参加したりと、日ごろから取り組んでいるところです。

 

今回、10月23日に公開された論文は、震源地に最も近い大学病院として、金沢医科大学病院の経験を広く共有するものでした。

こういった報告は、本当に貴重ですし、今後の参考になります。

 

金沢医科大学病院では、災害後の最初の31日間で、合計421名の患者が搬送され、入院となりました。

この中で特に多くの患者が整形外科(52名、全体の14.4%)や呼吸器内科(48名、13.3%)に入院しており、骨折や呼吸器のトラブルが目立ちました。

また、循環器内科には40名(11.1%)、腎臓内科には38名(10.5%)が入院しており、心臓や腎臓の持病を持つ方々への対応も重要な課題となっていました。

 

地震直後、医療チームは患者を速やかに分類し、タグを用いて「地震関連患者」として記録する方法を取りました。

これにより、誰がどのような支援を必要としているのかを的確に把握できるようになりました。

また、情報共有のために、他の病院とリアルタイムでデータをやり取りできる仕組みも整えられました。

この仕組みは、Starlink衛星を利用してネットワークが途絶えた際にも情報交換ができるように工夫されており、「KiMMAShi(来んまっし、金沢弁で『来てください』の意味)」と名付けられたユニークなシステムです。

 

入院患者の中で特に多かったのは、整形外科と腎臓内科の患者でした。

地震による外傷の治療や、透析が必要な腎臓病患者のケアが急務となりました。

透析患者にとっては、停電や断水が命に直結するため、迅速な搬送と治療が求められたのです。

また、災害時には避難所生活が続く中で、インフルエンザや感染症が広がるリスクもあり、呼吸器や心臓の症状が悪化する人も少なくありませんでした。

 

この地震対応を通じて、金沢医科大学病院ではいくつかの教訓が得られました。

例えば、家族の同意を取ることが難しい状況でも迅速に治療を進めるためのガイドラインが見直され、緊急時の対応がよりスムーズに行えるように改善されました。

 

今回の経験は、今後の災害医療にとって大きな教訓となるでしょう。

特に、災害発生直後の「超急性期」には、いかにして限られた医療リソースを効率的に使うかが問われます。

金沢医科大学病院の取り組みは、その一例として多くの医療機関にとって参考になるものです。

私たちが備えるべきは、単に物資や設備だけでなく、人と人との連携、そして柔軟な対応力なのかもしれません。

 

参考文献:

Uramoto, H., Shimasaki, T., Sasaki, H. et al. Initial response to the 2024 Noto earthquake by the university hospital closest to the disaster area. Sci Rep 14, 25013 (2024). https://doi.org/10.1038/s41598-024-75844-w