通勤手段を工夫してみること

通勤手段を工夫してみること

 

健康に対する意識高い系の人々から、「健康のために歩いて通勤している」とか「自転車通勤を始めた」とかいう話をよく耳にします。

「確かに健康に良さそうな話ではあるけれども、それはホントに健康に良いのか?」

そんな疑問を持ってしまうのが研究者たる所以で、このテーマがマジメに研究されることになりました。

その研究のタイトルは「歩行と自転車による通勤の健康上の利点:スコットランド縦断研究から」です。

 

スコットランドで実施された18年間にわたる大規模な長期研究によると、歩行や自転車で通勤する人々は、車や公共交通機関を利用するいわゆる「非活動的」な通勤者と比較して、いろいろ健康リスクが低いことが明らかになりました。

この研究には82,297人が参加し、全死因死亡率、心血管疾患(CVD)、がん、精神的な健康状態などが精密に調査されました。

 

結果として、自転車で通勤する人は全体の死亡リスクが47%も低く、入院のリスクも10%減少していました。

また、心血管疾患による入院リスクは24%減少し、がんによる死亡リスクは51%減少していたのです。

さらに、精神的な健康に関する薬の処方リスクも20%減少していたという結果が出ています。

これらの数値を見れば、その効果の大きさが伝わりますね。

 

また、歩いて通勤する人々にも健康面でのメリットが見られました。

具体的には、入院リスクが9%減少し、心血管疾患に関連する薬の処方リスクが10%低下しました。

そして、精神的な健康のための薬の処方リスクも7%減少しており、身体的・精神的の両方に良い影響があることが確認されています。

 

ただし、自転車で通勤する場合には注意が必要です。

交通事故による入院のリスクが高まることも報告されています(リスクが約2倍に上昇)。

このため、自転車道の整備や交通ルールの見直しなど、安全なインフラの整備が求められています。

こうした対策が進めば、さらに多くの人々が安心して自転車通勤を選ぶことができるのでしょうね。

 

活動的な通勤には多くの健康上のメリットがあることが明らかになっています。

特に「運動する時間がない」と、普段の生活の中で運動することが難しい人にとって、通勤を工夫するだけで健康への大きな投資になるかも知れません。

 

参考文献:

Catherine Friel, David Walsh, Bruce Whyte, Chris Dibben, Zhiqiang Feng, Graham Baker, Paul Kelly, Evangelia Demou, Ruth Dundas, John Weller – Health benefits of pedestrian and cyclist commuting: evidence from the Scottish Longitudinal Study: BMJ Public Health 2024;2:e001295.