高齢者のフレイル予防に効果的な運動とは?

高齢者のフレイル予防に効果的な運動とは?

 

年齢を重ねると体力が徐々に衰えていくのは避けられないものです。

しかし、適切な運動を継続することで、その進行を遅らせることができるかもしれません。

今回の研究では、日本全国の70,545名の高齢者を対象に、3年間にわたる追跡調査を実施し、グループで行う運動がフレイル予防にどれほど役立つのかが検証されました。

その結果、特定の運動がフレイルの進行を抑える効果があることが示されました。

 

筑波大学 報道発表 Press Release No: 432-24-18より引用:

 

「フレイル」とは、身体的・精神的な健康が低下し、自立した日常生活が難しくなる状態を指します。

適切な対策を取らないと生活の質が大きく低下するリスクがあります。

この研究では「基本チェックリスト(KCL)」を使用してフレイルの進行度を評価し、運動がその進行をどの程度抑制できるかを検証しました。

 

図に示されている通り、男女ともに共通して効果が認められた運動は以下の通りです:

 

ハイキング:男性で -0.36ポイント、女性で -0.29ポイント

ウォーキング:男性で -0.26ポイント、女性で -0.24ポイント

テニス:男性で -0.23ポイント、女性で -0.24ポイント

グラウンドゴルフ:男性で -0.21ポイント、女性で -0.19ポイント

ウェイトトレーニング:男性で -0.19ポイント、女性で -0.16ポイント

 

これらの運動は、フレイルスコアを低下させる効果があり、男女問わずフレイルの進行を抑えることが確認されています。

また、特に屋外で楽しめる運動が身体的・精神的な健康維持に寄与することがわかりました。

 

さらに、図に示すように、男女別に特に効果が認められた運動は次の通りです:

 

男性に有効:ダンス(-0.44ポイント)、自転車(-0.42ポイント)、アクアエクササイズ(-0.37ポイント)、ゴルフ(-0.34ポイント)

女性に有効:フィットネスエクササイズ(-0.19ポイント)、太極拳(-0.19ポイント)、水泳(-0.15ポイント)

 

これらの違いは、男女それぞれの運動の好みや求める運動強度の違いに関連していると考えられます。

 

グループでの運動には、体を動かす以上の効果があります。

仲間と一緒に活動することで、社会的なつながりが生まれ、気持ちが前向きになるというメリットがあります。

また、孤独感の軽減という心理的な効果も非常に大きいのでしょう。

実際、この研究に参加した高齢者の中でグループでの運動を続けた人たちは、3年間でフレイルスコアの増加が平均0.6ポイントにとどまり、運動をしていなかった人たちよりも進行が抑えられていました。

 

年齢とともに避けられない体力の衰えですが、グループでの運動を取り入れることで、その進行を遅らせることができる可能性があります。

 

参考文献:

Tsuji T, Kanamori S, Watanabe R, et al. Do changes in the frailty score differ by the type of group sports and exercises participated in? A 3-year longitudinal study. Eur Rev Aging Phys Act. 2024;21(1):8. Published 2024 Mar 20. doi:10.1186/s11556-024-00342-x